9 リッチィさんと閻魔大王様再び
「お腹がはち切れそう……」
重たいお腹を押さえ、貸して貰った二階の部屋のベットに横になる。
最初は出された夕飯の料理の量に何かの冗談かと疑ったが、おじさん含めてミラさんまでもが完食した。
もしかして魔族とは皆が大食いなのかと思うも、アンデッドになった私が違うのだから間違いだと信じたい。
「久々に昔の事を思い出しましたね……」
高校を卒業と同時に田舎から飛び出し都会に来た身としては十年以上味わってない久々の家庭料理、おふくろの味だった。思わず少し涙が溢れそうになったくらいで、ここまでおふくろの味に飢えていたのかと自分に驚いたくらいだ。
急に泣き出した私に三人共驚いていたので『昔の……お母さんの事を思い出しました』と、涙ながらに正直に話してしまった私はどうなのか。恥ずかしい。
アリアさんが何を勘違いしたのか『寂しいならお母さんと呼んでもいいのよ?』と言ってくれたが、私のお母さんは日本で元気に生きています。去年電話で話した限りでは、実家で兄弟夫婦と子供達、二十人以上で暮らしているらしく、毎日が騒がしいそうです。
懐かしい騒がしい家族を思い出した私は思わず『皆で、大勢で食べるご飯は久しぶりです』と言ってしまった過去の自分を殴りたい。羞恥心で精神が辛いです。
特にアリアさんが『明日の朝ごはんも期待しててね』と嬉しそうにしていたのが辛い。主にお腹が。
「眠くなって……きました……」
そうこうしてるうちに、私は自然に眠りについていた。
◇◇◇
「……ここは?」
ふと気付けば暗闇の中に立っていた。
確か、部屋のベットで横になっていたような気がするのだが……この空間は覚えがある。
「久しいなぁ、人間……いや、リッチィよぉ」
出ましたか、閻魔大王様。
「昨日ぶりですね。閻魔大王様」
今日もイタリィの真っ赤なスーツがお似合いです。
「今日のわぁれのスーツは、アッメェリカンだぁ」
ぶるじょわああああああ!!
「所で、携帯はどうでしたか。無事に修理に出せましたか?」
昨日は話の途中で時間切れになったので、少し気にはなっていた。
「ふぅむ。実はあの後に携帯ショォォップに行ったのだがぁ、どうも運悪くデェータが全て飛んでしまったようだぁ」
要するに、代替えの携帯を借りて電話帳や画像のデータを移動しょうと試みるも、運悪く失敗して全データ消失してしまったのか。
それはお気の毒に。
私もそういった故障の携帯を扱い、修理に出す際に代替え機の携帯へとデータを逃がす時、一度データを全て消失した事がある。
本来ならデータを消されたとお客さんが激怒する場面だが、私の場合はちゃんとそういった事が起こりうるから覚悟していて下さいと事前に注意を促している。まぁ、その時に受けた故障の携帯が元々原形を留めていないこともあり、お客さんも一か八かの賭けだったので問題はなかったが。
「どぉにかならんかぁ?」
「そうですね、前の携帯はどうしたんですか? もしまだお持ちであればそれから移し変えたらどうですか?」
「それは下取りなるもので消えたぁ」
下取りプログラムですか。
新しい携帯は安くなるけど、こういった時の事があるから怖いんだよね。
「御愁傷様です」
「……ふんっ!」
「――あんぎゃっ!」
高速で閻魔大王の拳骨が落ちてきた。なにこれ、超痛いんですけど……。
「なにするんですか!?」
「ぶぁぁかっもん!! ショォォップ店員なぁるもの諦めるではないわぁぁ!!」
「私はもうリッチーなんですけど……」
「同じ事だぁ」
「同じじゃないよ!? 意味わかんないです!?」
理不尽だ。
「でも、ショップ店員さんはちゃんと閻魔大王のデータが消える可能性は説明していたのですよね? なら仕方ないんじゃないですか?」
「……うぐっ」
気の毒だけど。
と言うか欠陥品の携帯を掴まされた挙げ句にデータまで失うとか本当に気の毒すぎる。
新しい携帯の機種代金も分割で払ってるだけに他の機種にも簡単に変更出来ない。てか閻魔大王なら一括で払って下さいよ。
「でも、閻魔大王の携帯の状態からして問題はないと思ったんですけど……閻魔大王自身が事前になにかされましたか?」
昨日見た限りでは、何とか電源はついた。操作は不能ではあったが、あれならギリギリなんとかなる筈なのだが。
「ショォォップ店員なる者がぁ、エスでィなる物に保存を試みたのだがなぁ……失敗したようだぁ」
「そうですか、なら仕方な……ん?」
あれ?
なにかが引っ掛かる。
「どぉしたぁ。なにか名案でも思いついたのかぁ?」
「いえ、少し引っ掛かるような……っ!!」
そうか、思い出した!
確か昨日地獄に来る前に確認していた緊急会議の内容メールに『希にMicroSDを入れたら再起動からの強制初期化される事がある』と読んだ覚えがある。
「なにか思い出したかぁ」
「えっと、その……」
言ってもいいのだろうか。
これは確実に店員のミスだ。
何処のお店でもちゃんと仕事前に必ずこういう注意事項は事前にスタッフに伝える筈だ。
「どぉしたぁ」
事前に聞いてなく知らなくて消したのか、それともうっかり間違って消したのか……どっちにしろ問題だ。
知らなくて消したのも問題だが、ウッカリならもっとヤバい。そいつ消した後に思い出して絶対しらばっくれている!
「えっと、閻魔大王は何処のショップに行かれたんですか?」
「○○の○○○店だが、それがどぉしたぁ」
うちの店じゃないですか!
ヤダー、もー、誰だ、そんなミスしたのは、地獄を見ることになるぞ、主に私が……ふざけんな!
「ご迷惑を御掛けして申し訳ございませんでした!」
元ショップ店員としてここは素直に謝るしかない。
自分の上司の西さんなら確実に事前にスタッフ全員に注意事項を伝えている筈。と言うか朝の確認メールが届いてたしね。もう確実に確信犯だよ。
と言う訳で閻魔大王に説明。
うちのスタッフがしらばっくれてるのは伝えずに、手順ミスだと説明。
すると意外とすんなり納得してくれた。
どうやらそのスタッフが後から物凄く挙動不審だったらしい。
その時に何かつっこんだらよかったのではないですかと尋ねるも『クレーマァーなるものになるきはなぁい』と、意味不明な事を口にしていて、代替え機に関しても受け取らずに帰ったそうだ。
『もしかして内弁慶なのですか? 閻魔大王なのに』と、思わずつっこみを入れてみれば、私の頭につっこみが返ってきた。
図星か!
もう一度返って来た。
「うぅっ、痛いよぉ……」
なんなのこれ、超痛いんですけど。
「でぇは、また改めて後日、仕事が片付いてから五日後に携帯シォォョップに訪ねるとしょぉかぁ」
「ぐすっ、それがいいと思います……」
「お前と一緒になぁ」
「なんでですか!? なんで私まで!?」
て言うか私、日本帰れるんですか?
「お前はもう闇の住人リッチィ、地獄の閻魔大王の眷属……いや、わぁれの娘みたいなものだぁ」
「あの、娘はちょっと……」
「かぁらぁのぉ!」
「勝手に進めないでくれませんか?」
もうやだ、この人。
人じゃないけど。
「娘よぉ」
「リッカと呼んで下さい。と言うか閻魔大王様、私の本来の名前は六花をリッカと読まずにユキと読むんですよ?」
「リッカァよぉ」
「あの、語尾を伸ばすのは止めて下さい。それじゃ別のアンデッドになってしまいます」
子供の頃の私にトラウマを植え付けた、ある昔の有名ゾンビゲームの舌長さんに。
「娘よぉ」
「もういいです、それで……」
あのアンデッドよりはマシだ。
「わぁれは、五日後まで携帯を無しでどぉしたら良いだろうかぁ」
「……まぁ、私の以前使っていた携帯で良ければ、代替え機の代わりとして使用したらいいのではないですか? SIMカードは閻魔大王自身でお持ちなんですよね?」
以前働いていたお店の事だけに無下には出来ない。
「ふぅむ。検討しょぉ……」
「あの、検討すると言ってSIMカードを直ぐに私の携帯のSIMカードと入れ替えるのはどうなのでしょうか?」
別にいいですけど。
「娘よぉ、チラシィは見たかぁ?」
「え、チラシですか? そう言えば召喚される前に閻魔大王から受け取りましたが……私、持ってないですよ?」
召喚された時は何も身に付けて無かった筈。裸だったし。
「チラシがどうかしたんですか?」
「どぉやら時間切れのようだぁ」
「ちょっと待って下さい、またですか? まだ色々と聞きたい事が……」
「でぇは、さらばだぁ娘よぉぉ!!」
「ちょっとぉおお!! チラシってなんですか!!」
気付いたらポイントが200を超えてました!
総合評価が200もいったのは初めての事だったので感無量です。ありがとうございます!
よかったら感想、ブクマ、評価を頂ければ嬉しいです!




