82 リッチィさん、差し入れをする
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本当にありがとうございます!
お風呂から上がった私はとある場所へと出向いていた。
「こんにちは、忙しいところすみません。オガちゃんはいますか?」
忙しなく働く人達の部屋を覗き込み、申し訳ないと声を掛ける。一瞬、こんな忙しい時になんだよとする迷惑そうな顔が多数此方を向くが、訪ねて来たのが私だと分かると凄く好意的な顔に変わった。
「どうしたんだ、リッカ様。主任なら今は席を外しているが……」
すみませんと謝ってくるのはゴブリン族の魔族、経理課で働いている数少ない職員さん。
どうやら経理担当のトップであるオーク、オガちゃんに会いに来たのだが……今は留守のようだ。
「いえ、少しばかり差し入れをと思って来たんです。良ければ経理の皆さんで召し上がって下さい」
チラシのスキルで購入した、宰相様や魔王様にも食して貰った和菓子・洋菓子を取り出し皆に配る。
「おうおう、流石はリッカ様だ! ありがたく受け取るぜ!」
「はい、どうぞ。疲れた時には甘い食べ物が一番ですからね。遠慮なく食べちゃって下さい」
「おい皆、リッカ様からの差し入れだ。好きな物を選んで食べろ。早い者勝ちだぞ」
沢山のお菓子を取り出し並べると、初めて見る目を引くようなお菓子に皆が感嘆し嬉しそうに食べ始めた。
「旨っ!?」
「なんだこれ、マジでうめぇぞ!!」
「嘘、こんな美味しい物、食べた事ないわ……」
「脳がとろけそうなくらい旨いんだが?」
「こんな甘味は初めて食べたな……」
ふふふ、どうやら経理担当の皆さんにも好評なようだ。特にゴブリンさんは『流石は俺達の救世主様だぜ!』と叫び、皆がそれに頷き私にお礼を言っている隙に我先にとシュークリームを食べている。どうもとても気にいった様子だ。
ちなみに何故、ぽっと出の新人の私がこんなにも経理の皆さんに好意的に歓迎されているのかと言うと、それは悲惨なまでの魔王城の実態にあった。
悲報:魔王様と宰相様を除いて、魔王城の大半は脳みそ筋肉しか実在しない。ちな魔王様は逃亡癖有り。
これが理由で、文官として有能な秘書官のスキルを持つ私は諸手を挙げて歓迎されたのだ。特に3日前までの魔王城の悲惨な状況、魔王様が半年もの長い家出で貯めた執務を片付けたのも大きい。文官や役人からは『救世主様』と崇められた程である。いや、本当にあの3日間は地獄だった。冗談でも何でもなく本当に。
そんな感じで経理課の皆とお喋りをしていると、私が訪ねて来た目的の人が帰って来た。
「あ、オガちゃん、お帰りなさい。お邪魔してますね」
「リッカ様、ここにおらしていたのですね」
オガちゃんである。
「はい、ちょっと差し入れをと思いまして……もしかして私を探してましたか?」
はて? 急ぎの経理課に回す書類は全部片付けたと思ったんだけど……もしかして何か問題でもあったのかな?
「もしかして、またあの人達、軍部の人達から何か問題を押し付けられましたか?」
この魔王城に来て、私の一番の悩みの種であるのが軍部の人達である。コイツら全員が全員アホなのである。脳みそ筋肉なのだ。
軍部に回す予算を決める為に予備武器、雑貨や消耗品、必要な医療用品数を訪ねているのに……コイツらの返ってきた返答が『いっぱい欲しい』、この一言だけである。
詳しい用途と数、金額を纏めて出せと言ってるのに、『そういうのは分からんから経理課に聞け』と言われた時は唖然としましたよ。その時は私も初めて経理課に訪れ、馬鹿正直に聞きに言ったら死んだような目で『またか』とした疲れた顔で対応された。あんまりにも人手不足でブラックな経理課の内情をこの時初めて知り、可哀想なので私が変わりに軍部に行って書類を纏めて経理課に提出したら凄い感謝された。
「その節は本当にありがとうございます。リッカ様を探していたのは特に用があったわけではありませんよ」
「そうなんですか? もし困った事があるのなら言ってくださいね。常識の範囲内なら手伝いますから」
魔王様の執務はもう手伝いたくないけど、オガちゃん――経理課の人達の為なら少しくらいは手伝ってもいい。だって悲惨なくらいに可哀想だからね。本当に人手不足でブラックだよ。経理課の皆から聞いた苦労話に、他人事とは思えずに涙が出た。
私の同情からくる気遣いに感無量とした皆さんはさておき、オガちゃんは『お気遣いありがとうございます』と苦笑いで続きを話しくれた。
「宰相様から先ほどお聞きしたのですが、魔王城から降りるとは本当なのでしょうか」
「はい、本当ですよ」
何処か悲観的な様子なオガちゃんの問いに、私はハッキリと答えた。
突然の事実、私が魔王城から去るという事実に周りが『嘘だろ!?』『行かないでくれ!』と、酷く騒がしくなるが、オガちゃんは一人冷静に頷いている。
恐らくは、宰相様から詳しい情報を聞いたのだろう。
「すみません、いつまでも 家 を開けておくことは出来ませんから」
そうなのだ。
これは極秘なのだが、これでも私は一応はダンジョンマスターであり、冒険者ギルドから墓場のダンジョンの管理を お願い されている立場なのだ。
宰相様も忘れていたようだけど、その事実を私が思い出して告げると凄く口惜しそうに残念としてた。
流石の宰相様も、過去に魔王様と相討ったエルダーゾンビ、一匹で都市を壊滅させると知られているスペクターが複数確認されているダンジョンを野放しには出来ないみたいだ。
私も流石にこれには非常に残念で、『あー、辛いわー、残念だわー』痛恨の極みですと宰相様に告げたら渋い顔をされた。
私の内情を詳しく知ったオガちゃんも仕方なさそうに、『そうですか』と呟いている。
「まぁ、たまに魔王様のお手伝いに魔王城に上がることもあるので、その時はよろしくお願いしますね」
本当は嫌だけど、既に魔王城の内情を詳しく知ってしまっている私は完全には宰相様から逃げられない。
何でこんな事になったのか、私のステータスにもしっかりと、《魔王様の秘書官》という称号が新しく生えていたのだ。これには宰相様もニッコリで、『これからも兼任でお願いしますぞ』と喜色満面の笑みで告げられた。チクショウ。
それからは、私の内情を詳しく知らない(極秘の為)経理課の皆さんから色々と何故だと問い詰められたけど、オガちゃんが紳士的に説明したこともあり、何とか騒動は治まった。
「ところで、リッカ様」
「なんですか?」
一段落した事もあり、オガちゃんと差し入れのお菓子を二人で食していると、神妙そうな顔でオガちゃんが聞いてきた。
「前に経理課の人手不足の事でご相談、アドバイスを頂いた件なのですが……お願いしてもよろしいでしょうか」
アドバイス?
はて、そんな事しただろうか。
経理課の人手不足の件で相談はされたけど、アドバイスした覚えは………あ、
「はい、人間族の奴隷の件です」
やっべ、忘れてた。
更新が遅くてすみません。
ちょっと今はかなり時間が出来たので、めちゃくちゃ書き貯めしてます。2月頃にまとめて一気に更新するつもりです。
第二章の終わりまで予定してるので、30~40話くらいを予定です。




