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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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65 リッチィさん、地獄に舞い戻る

 

「たらまー」


 親不孝なニートな少年を無事に地獄へ案内した私は、閻魔宮殿へと帰って来ていた。


「遅かったなぁ」

「あ、神様」

「わぁれがかぁみだとぉ? よかろぉ、教えてやろぅ! わぁれこそは、影なる地獄ぅの支配者ぁ! 閻魔大王なるぞぉ!!」


 あ、間違えました。

 そうでしたね。

 この人は閻魔大王様でした。

 命の恩人でもあり、異世界に召還されてからも色々と助けて頂いているので神様かと思ってました。神様とはなんだろうなぁ……


「かぁみは、いつも遠くからお前の事をいつまでも見守っているそぉだぞぉ」

「ブチコロスゾ」


 くるしゅうない近う寄れ、ぶん殴ってやる。


 大量の書類に埋もれながら声を掛けてくる閻魔大王様。

 今日も真っ赤なイタリィの高級スーツが似合っている。


「今日はアッメェリィカァンなスーツだぁ」


 ぶるじょわああああああ!!


 と、まぁいつもの会話をしながら私は獄卒の鬼さんが用意してくれたお茶を一口飲む。うむ、旨い。やっぱり私はこの味が一番落ち着く。


「お嬢、お代わりはいかがですか?」

「おい、お嬢呼びは何度も止めろといいましたよね? リッカと呼んで下さい。それとお茶のお代わりお願いします」


 地獄に来てから何度も何度も注意しているのだが、獄卒の鬼さん達は何故かいつも私をお嬢と呼ぶ。

 まぁ、分かりますけどね。

 私の変な称号の一つである《わぁれの娘だぁ》のせいである。

 誰がお前の娘だよ。

 あ、すみません、ちなみに今日の夕食はなんですか? お魚料理? じゃあ良かったらこれどうぞ。異世界のお魚とクラーケンの足です。沢山ありますので獄卒の皆さんでどうぞ。


「リッカァよ」

「おい、その呼び方も止めろと何度もいいましたよね? 閻魔大王様」


 それは本当にアカンやつだ。

 某アンデッドの舌長さんを連想させる。

 相も変わらず語尾を伸ばしまくる閻魔大王様に、私は激しく注意を促す。

 だって、この人が言ったら本当に洒落にならないから。この体を造った張本人なのだから、その言葉や呼び方一つでどんな影響がこの体に出るか分かったもんじゃない。

 もし舌長さんになったら私は本当に死ぬ。冗談でもなく自殺する。あ、私はリッチ、不死なので死ねないのでしたね。アハハハハハ、人生詰んだ。チクショウがッ!!


「娘よぉ」

「もうそれでいいです……」


 舌長さんよりはマシなので我慢する。

 最近はこの貧弱美少女ボディにも慣れて来たのだ。慣れって凄いなぁ。息子だけでも返して下さいお願いします。


「ところでぇ、仕事にはもう慣れたかぁ」

「えぇ、まぁ一応は」

「そぉうかぁ」


 地獄に舞い戻ってそろそろ一週間が経つ。

 何故に私が今現在進行形で地獄にいるかと言えば、それはモンスターの襲撃事件まで遡る。


 モンスターの襲撃と炎竜を無事撃退した私。

 油断しまくりでいたら憎っくきマンティコアに首をちょんぱされ、地獄に舞い戻って来ました。以上。


 おい、死なねぇんじゃなかったのか。


 地獄に死に戻りした私は、甲斐甲斐しくお世話をしてくれる獄卒の鬼さんから書類を受け取り、閻魔大王様の秘書の立場に戻る。


「終わらねぇです」


 どんどんと積み重なっていく大量の書類。

 処理しても処理しても本当に終わりが見えない地獄の作業だ。地獄とはここにあったと言える。


「帰りたい。てか何で私はここにいるのですか?」


 ガチで問い詰めたい。

 何故に私はここにいる?

 不死なのに何で地獄に舞い戻って来たのですかね。


「わぁれの娘ならば、当然であるからしてぇ」


 哲学かな。

 答えになってませんよ。

 てか誰の娘ですか。


「前にも言ったであろぉにぃ。今現世ではお盆なるもので忙しいのだぁ」

「そうでした」


 どうやら今の日付は現世(日本)ではお盆の日にあたるらしく、死者の里帰りとお迎えで地獄はてんやわんやな状態らしい。

 そこで、丁度マンティコアに首ちょんぱされた私を覗いていた閻魔大王様は好都合だと私を地獄に呼び込んだ。そして手伝えと。バイト代だすからと。


「あの、これ申請書と人数が一致しないですけど」


 手にしていた亡者の帰省申請書と出国書を閻魔大王様に手渡す。

 明らかに亡者から申請された書類と出国した人数が合わない。

 またかと顔をしかめる閻魔大王様は、獄卒の鬼さんに『連れ戻せ』と命令し作業に戻る。


「いっそ一度人類滅ぼしませんか?」

「……お前はまた唐突に、なぁにを言っているのだぁ」


 頭がおかしくなったのかと閻魔大王様が聞いてくる。


「いえ、これどうみてもキャパ超えてますよね?」


 この一週間、閻魔大王様の秘書をやっていて分かった事がある。

 どうみても人類の数が地獄のキャパを超えているのだ。

 お盆関係なく、地獄で働く獄卒の鬼さん達の数が圧倒的に足りない。鬼不足だ。


「魔界の方にもう少し振れないのですか?」

「うぅむ、それはあちらさんも同じだぁ。ここと一緒でパンク状態であるらしいぃ」

「そうですか……」


 魔界とは悪魔、サタン様が治めるもう一つの地獄。

 文化や宗教の違いもあり、大昔は亡者の魂を取り合っていたりとお互い仲が悪かった。だが、現世の文明が進むにつれて人類が爆発的に増えた事により、ここ最近は亡者の魂をお互いに譲り合って――もうこれ以上は魂いらねぇ――と仲良く押し付け合っている。


「人間って長生きしても罪が増えるだけなんですね」


 亡者の罪状が記録されている分厚い書類をペラペラと捲る。大昔は人類の寿命は割りと短かったので、悪い人間でもここまで罪状記録が分厚くなることはなかったそうな。


「文明が進むことはいいのだがぁ、それによって人類の罪の意識は退化しておるからなぁ」


 ネットやSNSの浸透により、色々と馬鹿な事を考える奴等も増えた。

 SNSでの誹謗中傷やバカッター等、人の迷惑を考えなしで起こす奴等が多くなったのだ。

 例えば、私がさっき地獄へと案内した親不孝者のニートのような奴が。


「閻魔大王様、大変です!!」


 緊急ですと息を切らし現れた獄卒の鬼さん。

 一瞬、凄く面倒くさそうな顔をした閻魔大王様だったけど、諦めたように続きを促した。


「賽の河原で、子供達が反乱を起こしました!」


 賽の河原。

 それは親に先だって亡くなった子供が苦を受ける場所。先程、私が親不孝者のニートを案内した場所でもある。

 ちなみに獄卒の鬼さん達からは一番不人気な仕事場であり、ちょくちょく私が心を鬼にして赴き、子供達が積み上げた石ころの塔を崩しては『ざけんなぁ』と子供達に石ころをぶつけられる場所。心と体が痛いです。


 閻魔大王様は子供相手に何をやってるんだとしたが、獄卒の鬼さんが報告した内容に眉を吊り上げた。


「巨大な要塞に立て籠ってるだとぉ」

「はい、我々が近付こうにも石を投げつけれられて……」


 私の体がピクんと反応した。


「そんなモノぉ、壊せばよいだけだろうがぁ」

「い、いえ、我々も何度か破壊を試みたのですが、ビクともしなくて……」


 私の体がピクピクと反応する。

 獄卒の鬼さんは言いづらそうに「それに……」と私を見る。


「要塞の一部に 地蔵菩薩様(じぞうぼさつさま) が取り込まれているようで、安易に壊す事が出来ません」


 私は逃げ出した。

 閻魔宮殿から外へと走るが――閻魔大王からは逃げられない。

 頭に物凄い衝撃、拳骨が落ちた。


「このぶぁかぁ者がぁあああああ!!」

「――あんぎゃっ!?」


 なにこれ、超痛いんですけど。


「お前は一体何をやっているんだぁああ!!」

「待って、待って下さい。誤解です。何で私が原因だと決めつけるのですか。あなたは閻魔大王様でしょ? ならここは公平にちゃんと言い分をきい――あんぎゃっ!?」


 再度、拳骨が落ちてきた。

 マジでなにこれ、超痛いんですけど……!!


「あうぅ、痛い、痛いです。これは親から娘への虐待ですか?」

「愛のムチだぁ」


 そうですか、超痛いんですけど。

 てか本当に止めて。

 何で私が全て悪いと決めつけるんですか!?


「お前の顔がぁ全てを物語っているのだぁ」

「チクショウ」

「――ふんっ!」

「――あんぎゃっ!?」


 ごめんなさい、本当にごめんなさい。

 私が全て悪かったです。

 だからその振り上げた拳を下ろして!!


 私は大人しく事情を説明した。

 親不孝者のニートを賽の河原に案内した後、いつもの如くクソ生意気なガキ共に石ころやドロップキックを頂き散々な目にあった。

 そこで私は考えた。

 何でここまでの仕打ちを私が受けねばならぬと。地獄かと。

 子供達と和解するために、何が不満だと尋ねると『石を積むのつまんなぁい』『飽きた』『ゲーム機寄越せや』『児童相談所に訴えるぞ』と、中々に現代ッ子らしい答えが返ってきた。

 そこでまた私は考えた。

 ならば石を積んで崩されるのがゲームだと思えばいいと。

 子供達に『ならお前もやってみろや』と石ころを投げつけられた。

 そこでまたまた私は考えた。

 お手本を見せてあげると発動したのは土魔法のスキル。

 キラキラと輝く子供達の目を向けられながら私はコネコネと塔を造った。

 もっかいもっかいとせがむ子供達が塔の素材となる石をどんどん集めて来たので、私も期待に答えてコネコネした。

 それで出来上がったのが立派な要塞です。

 そして、まさかのまさか、子供達が集めて来た素材の石の中に地蔵様――地蔵菩薩様(じぞうぼさつさま)が混ざっていたとか私は知らなかった。

 私は夢中でコネコネしてたので気付きませんでした。

 おのれクソガキ共、分かっていてコネコネさせたな。お前達は鬼か。


「であって、私はただただ子供達に石を積む楽しさを教えていただけなのです。私は悪くない――はい、本当にすみませんでしたごめんなさい。私が全て悪いと思ってます。だからその拳を振り下ろすのだけは止めて!!」


 無言で拳を握る閻魔大王様に心から謝罪する。

 このクソ忙しい時に何をしてるんだと説教をされた私は、ズキズキと痛む頭を押さえて要塞を崩しに向かい、子供達に『裏切り者』とドロップキックや石ころをぶつけられながら 地蔵菩薩様(じぞうぼさつさま) を元に戻した。


 お地蔵様からも有難いお説教を半日ほど頂きました。


読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
世間知らずだけじゃなく基本アホだな
[一言] 砂利の上で正座させられて、地蔵に足の上に乗っかられ説教。 拷問かな?
[一言] 閻魔大王?破壊大帝に聞こえるんだがw
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