63 リッチィさん、炎竜と再び
ごめんなさい、ギリギリまで書いてたら遅くなりました。
それにしても相変わらず炎竜の鳴き声をどう書いたらいいのか分からんのでアルファベットで誤魔化してます。
『GyaoOOOOOOOOOO!!』
炎竜の咆哮が響く。
体の心臓処か、魂の奥底までビリビリと震えるような感覚。
ヤバい、こいつはヤバい。ガチでヤバい。
何でこいつがここに!?
真っ赤な燃えるようなその赤い体と深紅の瞳。
鋭い爪には妖しく光る宝玉を握り締めており、体長は優に100メートルは超える立派な体格。
どちらかと言えば炎竜というよりも、東洋の炎龍といった感じの竜。
「えぇぇ、ないわー」
炎竜再び。
私が静かに呟く中、城門の見張り台に立つ冒険者が大きく叫んだ。
「え、炎竜だーーーー!!」
刹那、戦場が真っ赤な炎で染まった。
『GyaoOOOOOOOOOO!!』
炎竜の凄まじいまでのブレスが戦場を焼き付くす。
敵味方関係なく放たれたブレスは、モンスターもゾンビも一瞬で灰と化していく。
「おいおいおいおい、冗談じゃねぇぞ!! 何で炎竜がここにいるんだ!?」
一方的に蹂躙される戦場。
兵士さんが驚き叫ぶ間にモンスターが灰へと変わっていき、戦場のほぼ全てのモンスターとゾンビがあっという間に焼失した。
あまりにも一方的な光景に誰もが呆然とし、次の瞬間には逃げ出した。
冒険者や兵士さん関係なく、全員がマニュアル通りなのかと言いたいくらいに素早く逃走を始めた。
「ギ、ギルド長?」
「なんだ」
こんな状況にも関わらず、呑気にせんべいを食べているギルド長に話しかける。
「あれ、どうにかなりますか?」
「ならんだろ」
「ですよねー」
予想通りの答えに気抜けする。
あんな自然災害みたいな化け物に一体何が出来るのか。
空を飛んでるし、馬鹿でかいし、凄い怒ってる。
「……怒ってる?」
あれ、何で怒ってるんだ?
気のせい?
いやいやいやいや、あれはめちゃくちゃ怒ってる。
何でだと悩んでいると、ギルド長から問い掛けられた。
「リッカ、お前まだゾンビは出せるか?」
「はい? まぁ、一応は大丈夫ですけども」
魔力の残量はまだまだ余力がある。
その気になれば、あと1万はいける。
そう答えると、
「よし、なら出せ」
「別に構いませんが、アレ相手に意味がないと思うんですけど……」
「注意を引くだけでいい。とりあえず城都の住民の避難が終わるまでだ」
「なるほど、分かりました――《クリエイトアンデッド》!!」
とりあえずとゾンビを1000体ほど生み出し、城門から炎竜が遠ざかるようにして誘導する。
どうやらさっき逃げた冒険者や兵士さん達は、住民の避難誘導に行ったらしい。
これまでにあった炎竜の襲撃被害で、手を出すのは無駄、触るな危険とマニュアル化しているようだ。
それならこれまではどうやって炎竜を撃退していたのかと聞くと『魔王』と返ってきた。
納得、魔王様すげー。今はお菓子買いに行っていないけどな。
『GyaoOOOOOOOOOO!!』
炎竜の咆哮と共にブレスが吐き出され、生み出したゾンビ1000体が一瞬で焼きつくされた。
「《クリエイトアンデッド》!!」
すかさず私はお代わりのゾンビを生み出し、炎竜を出来るだけ城門から遠ざけるように誘導していく。
「…………」
なんだろう、この変な感じ。
私は何か大切な事を忘れている気がする。
予想以上に何故か炎竜がゾンビ達を追いかけまわすので、注意を引くには十分と言いたいくらいには上手くいっている。上手くいっている……筈なんだけど。
『GyaoOOOOOOOOOO!!』
気のせいかな。
炎竜の怒りが更に増してる気がする。
まるで、一番憎い敵が何度も何度も蘇るさまに腹わたが煮えくりかえるとばかしに。
「……あ、やべ」
思い出した。
私は何で忘れてたのか、あの災厄の森での出来事を。そして《炎竜を煽る者》という称号を手にした時の事を。
「どうした、魔力切れか?」
スキルの発動を止めた私にギルド長が聞いてくる。
「あ、いえ、そのぉ……」
「どうした、早く続けろ」
私がまだ魔力に余力があるのは見れば分かるので、ギルド長が急かすように続けろと指示をする。
私の額から冷や汗が流れる。
確かに、私のゾンビ達は何故か炎竜の注意を引き付けるには最適な働きをしている――のだが、それはゾンビが炎竜のヘイトを一番稼いでいたからだ。
私は試しにと戦場のゾンビにある指示を出す。
炎竜の攻撃、ブレスではなく爪での攻撃の際に『自爆せよ』『爆ぜろ』と命令。
ピチュンと盛大に自爆したゾンビの肉片が爆ぜる。
それは炎竜の真っ赤な体に飛び散り、腐った肉片の塊がへばり付いている。
『――GyaoOOOOOOOOOO!!!!!』
怒髪天を突いたと怒れる炎竜。
今までの比じゃないくらいにお怒りだ。またかと。
隣でギルド長が『何をしたんだお前』と見てる。
よし、確認終了。
理解しました。
炎竜が襲ってきたのは恐らくもなにもかもゾンビのせいだ。
災厄の森で炎竜のヘイトを稼ぎ過ぎたばっかりに、ゾンビの大大大大群勢を発見し怒り狂って襲ってきたと。
はい、私のせいですね。
モンスターの襲撃から炎竜の襲撃まで何もかもが私のせいです。
本当にすみませんでしたぁあああ!!!!
その場で土下座して謝りたいが、それをするとまた賠償金やら損害賠償とかで借金が増えそうなので黙る事にする。沈黙は金なり、いい言葉ですね。
私は誤魔化すように顔をギルド長から反らし、ある提案をしてみる。
「ソラを呼んできたらどうにかなりますか?」
炎竜といわれればソラだ。
初代《炎竜を煽りし者》の称号の持ち主であり、炎竜をさんざんな目にあわせてきた鬼畜マッドサイエンティストサイコパス。
思い出したとばかりにギルド長に提案してみるが、
「止めとけ。更に最悪な事態になる」
なんでも過去にあった炎竜の襲撃事件。
ソラが実験のためにと炎竜を罠にかけ鱗を全て取り剥がし、爪と牙も抜いて10年後にまた来ると言い残し放置し怒り狂った炎竜が魔王城都に突撃した時のこと。
当時の冒険者ギルド長が、炎竜襲撃の責任を取ってソラに撃退しろと命令したが、逆にソラはそれを利用して魔王城都を火の海にし、倒れた者から――元から興味があった個体の魔族の素材をどさくさ紛れに採取していったそうな。
ちなみに当時の冒険者ギルド長も対象だったのか、未だに行方が分からないらしい。
うーん、頭がおかしい。
詳しく聞くと本当に頭がおかしいな。
それと平然と同居する私は更に頭がおかしいとギルド長に言われた。
「ん?」
ギルド長と話し込んでいると、何故か戦場が静まり返っていた。
『…………』
炎竜が静止しキョロキョロしている。
どうやらゾンビさん達を全て刈り尽くしたようだ。おかわりかな?
私は嫌な予感がしながらも《クリエイトアンデッド》と唱える。
地面から這い出るゾンビさん達。
よし、行け!
炎竜の怒りが鎮まるまで頑張って!!
だがしかし、どうやらそれは悪手だったようだ。
流石に何かおかしいといい加減察したのか、キョロキョロとしていた炎竜の深紅の瞳が此方をジット捉えた。そして、ゾンビさん達と私の魔力の繋がりを見抜いたのか、『お・ま・え・か!』と視線が貫いた。
まずいバレたかと思うと同時に、凄い速さで炎竜が此方に向かって牙を剥き口を開けて迫って来る。
こいつ、食べる気だ!?
迫りくる炎竜に対し、何も出来ない私は隣でせんべいを呑気に食べるギルド長にしがみついた。
助けてギルド長ーー!!
その時――
『――GyaoOOOOOOOOOO!?!?』
炎竜の体を謎のドでかい魔法の光が貫いた。
「やっと帰ってきたのか、あいつ」
ギルド長が面倒くさそうに上空、魔王城を見上げた。
『GyaoOOOOOOOOOO!!!!!』
頭が割れるような雄叫びを上げ、一瞬動きが怯む炎竜。
しかし、なおも諦めないと、炎竜のヘイトを一番稼ぎ捲った私を狙い襲いかかる――が、
「アアァァァ!!」
真下からちょいワルおやじこと、エルダーゾンビさんの山田が現れ、炎竜の頭を激しくかちあげる。生きてたんですか、山田!?
『――GyaoOOOOOOOOOO!!!!!』
更に追い討ちをかけるかの如く、炎竜のブレスから生き残っていたエルダーゾンビさん達が地面から這い出し攻撃を仕掛ける。
田中君が炎竜の背中にまたがり、畑を耕すように抉る。
一本角の少女、お母さんは炎竜の顔を『お仕置きだよ』と往復ビンタではたき殴る。
その他のゾンビも噛み付く殴る蹴るなどしてフルボッコに。
そして、オマケとばかりにオーバーキルと思う程のドでかい魔法の光が上空の魔王城から連続で炎竜を貫いた。
『―――ッッ!?!?』
声に鳴らないと足掻く炎竜。
一瞬、此方を『覚えたからな!』と深紅の瞳で睨んだ炎竜は、慌ただしく逃げていった。
「終わったんですか?」
「終わりだな」
呆気に取られた私に呑気に答えるギルド長。
せんべいを全部食べ終え、『腹減った』と私を残して去っていく。
「……はぁ」
気が抜けたように座り込む。
先程まで張り詰めて緊張が解けた。
もうしばらくは動きたくない。
そんな油断しまくりの私に後ろから『アアァァァ!!』と声が掛かる。
「グワァ」
「……え?」
ゴロリと視界がコロコロと反転する。
まるで理解できないとする私の視界には、どこかで見た顔の、
「グワァァァ!!」
人間の顔をしたマンティコアが『ざまぁみろ!』と佇んでいる。
そして、その隣には、首のない少女の体が座り込んでいた。
やったー!!
とりあえず第一章が終わりました!!
ここまで書き続けた自分を褒めたいです。偉いぞ、私。
あ、ブクマと評価をしてくれたらとても嬉しいです。




