61 リッチィさん、奮闘する
副作用は無かったです。
腕は痛かったですが、一安心です。
「はぁはぁ、疲れた……」
なんとかゴブリンの第一陣の攻撃を退けた。
「新人、オマエ、中々やるな。流石は噂通りだな」
ゴブリンさんことゴブブブさんが驚いたと褒めてくれる。
第一陣のモンスターはゴブリンやウルフが中心で襲ってきた。
冒険者の私達は城門前に位置取り、真正面からモンスターを迎え撃つ。
正直、城門があるんだから何で籠城戦しないんだと言いたかったが、いざ戦闘が始まると魔族の人達の無双ぶりには驚いた。
「ゴブブブさんって凄い強かったんですね……」
特に驚いたのが、ゴブブブさんだ。
武器はナイフを両手に持ち、戦場を風のように駆け抜けてはゴブリンを切り刻んでいた。
「オマエに言われたくはないんだが。なんだアレは、オレはあんな魔法見たことないぞ」
呆れたように私をじっと見詰めるゴブブブさん。
アレとは勿論、私の土魔法で《錬金》したオリハルコンのコネコネのうねうねである。
しかも先日取得した、オリハルコンタコ足イカ足バージョン。
クラーケンの動きを参考に動かし、ゴブリンやウルフをひたすら吹き飛ばしていたのだ。
「あまり期待はしてなかったが、やるなオマエ。魔法は気持ち悪かったけどな」
確かに、うねうねと動くアレは気持ち悪かった。
周りの冒険者達も驚いてしばらく私を見てたし。
だけど、そんなこと言われても私に出来る戦い方はアレしかないので仕方ない。
だって、私のステータスは魔力極振りの貧弱エセ魔法使いだ。
スキルは無し、固有スキルは《チラシ》と《土魔法》のみ。
「ちょっといいかしら?」
地面に寝転んで休んでいると、魔女のお姉さんが話をしたそうに此方に来た。
「あなたの使ってたアレはなに? どんなスキルなのかしら」
どうやら私の土魔法、コネコネならぬうねうねを見てやって来たみたいだ。
「ただの土魔法ですが……」
「それはないわ」
なんか否定された。
お姉さんは見てなさいと何やら呪文を唱え、土の槍を造り出した。
あなたもやってみなさいと言うので、私も即座に土の槍を造り出した。
「あり得ないわ!!」
「……?」
「あなた、詠唱はどうしたの?」
「詠唱? いるんですか?」
「いるわよ!! なによこれ、魔法発動までのラグが全然ないじゃないッ!!」
詠唱と言われても、私は《土魔法》の詠唱なんて知らない。《錬金》も《土魔法》の詠唱が思いつかないから適当に《錬金》と叫んでいるだけだし。
このスキルを使おうとすると、何故か頭にイメージでコネコネしなさいと出て来るのだと魔女のお姉さんに説明すると、『もういいわ』と呆れ果てた様子で離れていった。
「おい、ちょっといいか」
またですか……。
声がする方を向くと、毛むくじゃらの小さいおじさん、ドワーフが立っていた。
「お前さんの使ってたアレはなんだ。鍛冶スキルでもないし、一体なんのスキルだ」
魔女のお姉さんと同じ質問をされた。
多分、土魔法のことをいってると思うんだけど……魔女のお姉さんと一緒に来てくれたらまとめて説明出来たのに。
「ただの土魔法ですけど」
「あり得ん」
と言われてもなぁ。
ドワーフのおじさんは懐から鉄の塊を取り出し私に渡してくる。
なんだこれ、どうしたらいいの? コネコネしたらいいの?
とりあえずコネコネする。
おおう、凄いコネコネしやすい。
鉄だからかな?
オリハルコンと比べたら柔らかい粘土みたいなモノだ。
「出来ました」
興が乗ったのでドワーフのおじさんをイメージして見ました。
5分の1スケールのフィギュアの完成です。
「あ、あり得ん……」
ドワーフのおじさんが驚愕したようにフィギュアを手に取る。
ふっふっふっ、自分で言うのも何ですが、お金が取れるレベルの出来栄えに驚いている。
日本に帰れるならこれだけでも食べていけるくらいの完成度です。
試しに、今度はオリハルコンを使ってコネコネしてみる……うぐぐっ、細部が難しい。
出来上がってみれば棒人間になった。
やっぱりオリハルコンは扱いが難しいですね。
「お、おい、ちょっとそれを見せてくれ」
「いいですよ」
棒人間のなにが気にいったのか、緊張した手付きで受け取った。
「ば、馬鹿な、これはまさか、オリハルコン……なのか」
「はい、そうですね」
やっぱりドワーフさんなら気付くのか。
直ぐにオリハルコンだと看破された。
「た、頼む!! 儂にこれを売ってくれ!!」
「え、嫌ですけど」
「頼む、金は出す!!」
「嫌です」
必死に頼み込んでくるドワーフのおじさん。
もしかしなくても、思った通りオリハルコンは稀少な鉱石らしい。
金を出しても手に入らないくらいに。
「なんでもするぞ!!」
「えぇぇ……やだぁ……」
土下座で頼み込んでくるドワーフのおじさん。
止めてください、周りの冒険者達の目が痛いです。
面倒くさいので、今は非常事だからと帰ってもらい、また後日来るとしたドワーフのおじさんを追い返した。もう来ないで下さい。
「モンスターの第二陣が来たぞーー!!」
城門の高台で見張りをしていた冒険者が叫ぶ。
あの、私全然休んでないんだけど……
「大変だったな……」
ゴブブブさんが私の肩に手を置いて励ましてくれる。
しかし、モンスターは待ってはくれないようだ。
「うわぁ、今度はオークかぁ」
目視できるモンスターはオークの大群。
先程のゴブリンとウルフの群れとは比較にならないくらいの肉壁と数だ。
所々に昆虫型のモンスター、カマキリや蟻も混じっているのが確認できる。
「……これ、流石にまずいでしょう」
圧倒的なまでの肉壁と数に、私は一歩下がる。
出来るだけことなら今すぐにでも逃げ出したい。
しかし、他の冒険者達は嬉しそうに前へ出る。
流石は魔族、待ってましたとばかりに突撃していく。
「えぇぇ、ここは引こうよ」
後方でドン引きする私の隣では、魔女のお姉さんや魔法使いが派手な魔法をぶっぱなしている。
ときたまに、前線で戦う冒険者にも被弾はしているが、お構い無しと嬉々と魔法を使っている。
こっちにもドン引きです。
後方に下がりながらも、前線を抜けて襲いかかるオークや蟻等をうねうねとぶっ飛ばす。
レベルが22になったお陰か、魔力がアホみたいにあるので安定して土魔法が使える。
初期の頃は、ミニチュアゴーレムと爪楊枝の槍を出すだけで疲労困憊だったのを考えると、たいした進歩だ。
しかも今現在進行形でレベルが上がってるからか、魔力の底が全く見えない。
流石は魔力特化のステータスだ。
しばらくすると、流石の冒険者達も圧倒的な数に徐々に押されて来ている。
ゴブブブさんも私の直ぐ後ろで休憩をしてるし、他の魔法使いや魔女のお姉さんも私の後ろに避難して魔法を放っている。
おかげで私もオリハルコンを限界まで伸ばし、うねうねと皆を守るように援護する。
「……あの、流石にこれは無理なんですけど」
気付けば殆ど冒険者が撤退し、私の後ろで休憩をはさんでいる。
馬鹿なの?
これは流石に守りきれないですよ。
「退却ーー!! 全冒険者、いったん城門の中へ退却しろーー!!」
後方から退却の声が聞こえる。
助かった、出来ればもう少し早くお願いしたかったです。
そうして、私達冒険者はいったん城門へと下がることにしたのだった。
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