53 リッチィさん、のんびり過ごす
ブクマが400を突破しました!
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その後、再びギルドマスターからお説教をくらった私はぐったりしながらダンジョンへと足を進めていた。
「……はぁ」
ダンジョンで野菜を栽培していた事実は私が思っていたよりも想像以上に面倒くさかった。
この世界では月に一度、大陸を津波が襲う。
過去の勇者のせいなのだが、その影響で色々と食料事情というのが由々しき事態になっているそうだ。
「塩害ですかぁ」
津波で運ばれる海水のせいで作物が育たない。
これは地球の方でも未だ問題とされている被害だ。
人間領と魔族領でも塩害の被害は甚大らしく、各都市の限られた場所、土地を物理的に隔離するか、魔法を使った結界で常時守護している土地でしか作物の栽培は出来ていないらしい。
そのお陰で作物は物凄い希少な高級品扱いらしく、一部の大商会やら権力者が長年独占している状態らしい。
「色々と面倒ですね、この世界も……」
そこへ一個人、私がダンジョンで大量生産した野菜を持って市場へ乱入するとどうなるか……確実に色々と厄介事が起こる。利権争いなど。
「まぁ、ギルドマスターが全て調整してくれるなら別にいいですが」
ギルドマスターとの話し合いの結果、ダンジョンで栽培している野菜は全て言い値で買い取ってくれる事になり、まずは少量ずつ市場へと流し、そこから徐々に量を増やして市場へ流していくそうな。
要は色々な所にケンカを売ることになるから準備が必要。整ったら全部ぶち殺してやるクマだそうだ。
どうやら商業ギルドは幾度となく、作物を独占している大物商会に苦汁を飲まされているらしい。
ちなみにその大商会の名はメリー商会というらしく、私との因縁がどうとか言われた。
メリー商会。
あぁ、あのタヌキの商会ですね。
もう運命としか言いようがないくらい波乱万丈な日々が確定です。
ギルドマスターは『お前、一緒にタヌキ潰すクマよ。逃がさんクマ』と、逃走したらぶち殺すクマねと念を押された。
「面倒な事にならなけばいいですけど……」
と、まぁそんなこんなやり取りがあって、私は面倒くさいので全て商業ギルドのギルドマスターに全部任せる事にした。
◇◇◇
ダンジョンの入口、相変わらず要塞にしか見えない堅牢な門をくぐり抜けようと、顔馴染みになりつつある門番さんに挨拶をしてダンジョンに入る。途中、門番さんから明日は津波の日なのでお外に出るのは絶対に止めて下さいねと言われたので『はい、勿論ですよ』と、微笑みながらもドヤ顔で知ってますよと返した。
門番さんはどうもおじさん、ミラさんのお父さんから私に念のために注意をしておくようにと言伝てを頼まれていたようだ。もしかしたら私が忘れてるんじゃないかと……。
ふぅ、商業ギルドのギルドマスター―――面倒くさいのでクマさんで――に教えてもらっていて良かったです。先程までの私だったら、ちんぷんかんぷんだったでしょうね。恥をさらすところだった。最近、何故かおじさんが過保護だからなぁ。
ダンジョンで暮らすと言ってからか、心配してうちの宿屋で暮らさないかと何度かおじさんからお誘いを貰った。
私は流石に悪いので断ったのだが、おじさんは心配してかそれからも声を掛けてくる。『アリアが怖いんだ……頼む』『一泊だけでも……』と、ちょっと怖いくらい必死なのでちょっと引いた。
そんなおじさんの姿は同僚の門番さん達からはどんな風に見られていたのかは分かる。
私はフォローを忘れず『おじさんは悪くないんです、全部私が悪いんです』と言ったら、通報されたおじさんは兵士さんに連れて行かれた。
悪いことをした……反省。
ちゃんと誤解だと何度も説明したが、わかってもらえたと思う。
そう言えば、おじさんの奥さん――アリアさんには宿で一泊お世話になってから一度も会ってないこと気付いた。近いうちに顔を出しといた方が良い気がする。なんか嫌な予感がするけれども……。
「《クリエイトアンデッド》」
とりあえず会いにいくのは次にするとして、固有スキルでゾンビ、フローラルゾンビさんを造り出す。
「アアァァァ」
「では、よろしくお願いします」
地中から這い上がって来たフローラルゾンビさんにおんぶしてもらい、私は意気揚々とお家に帰ることにした。らくちんらくちん。
◇◇◇
翌日になった。
時刻はお昼である。
少し寝過ごした感はあるが、まぁ大丈夫だろう。
「今日は津波の日と言ってましたが……」
今日は商業ギルドのマスターであるクマさんに教えてもらった津波の日。
「特に変わったことはありませんね」
今日も我がダンジョンは何時も通りだ。
空はどんよりしてるし、周りはゾンビと墓石だらけ。
「やはりお外からじゃないと分かりませんかね」
ダンジョンは外界からの影響は受けない。
何故かは分からないが、そうなっているらしい。
その影響か、ダンジョンで栽培している野菜畑はとてもよく育っている。コワイくらいに。
「………見なかったことにしましょう」
どうしたらたった1日で発芽し、更に翌日には緑がフサフサになっているのか。
恐らくはピーマンだとは思うが、田中君が刺したであろう棒に絡みついた葉っぱが30cmくらい伸びている。お隣はトマトなのか、黄色い花が咲いている。
……えぇぇ、早すぎない?
「《クリエイトアンデッド》」
まぁ、とりあえずは畑は全て田中君とソラに任せるとして、私はクリエイトアンデッドを唱えフローラルゾンビさんを造り出す。
「アアァァァ」
「では、今日もよろしくお願いします」
いつものようにフローラルゾンビさんにおんぶしてもらい、ダンジョン入口を目指す。
「大丈夫、ちょっと入口から見るだけです」
津波が物凄く危険だということは分かる。
だけど、いや、うん、だが、しかし、
「私、気になります」
好奇心には勝てなかったです、はい。
一瞬、商業ギルドマスターのクマさんの『お前、おとなしくしてろいったクマな?』と言う言葉が浮かんだが……ごめんなさいクマ。
少し罪悪感を感じながらも、私はフローラルゾンビさんの背中に揺られながら進んでいく。
やはり便利ですね、ゾンビさん。
いや、フローラルゾンビさん。
普通のゾンビは少しばっちいけど、フローラルゾンビさんは改良型の為にお花の匂いがして、移動にはとても心地好い。
とは言っても、フローラルゾンビさんが運んでくれるのはダンジョン内だけ。
城都では絶対に使用禁止と兵士さんから言われている。便利なのになぁ。
どうして皆は分かってくれないのだろうか、こんなにも素晴らしいのに……。
ちなみに、ダンジョン入口は門で固く閉じられていて開きませんでした。
土魔法――錬金で無理矢理開けてみようかなとは思ったが、物凄く嫌な予感――ミシミシと水の音がしてたので止めときました。
諦めて帰り、さて寝直すかと意気揚々とする私はソラと田中君に捕まり、嫌々畑仕事を手伝わされました。ちくしょう。
ワクチンはかかっても射たないといけないんだなぁ……。
24日にワクチン接種です。




