46 リッチィさん、種まきを始める
連続投稿が途切れてしまった……
私達は今現在、3人で作業をしている。
「田中君、この取り終わった種は洗ったらいいのですか?」
『アアァァァ』
「田中、これは?」
『アアァァァ』
私とソラの質問にジェスチャーで返すエルダーゾンビこと田中君。命名は私、日本名なのは文字通り覚えやすいから。ラノベみたいに横文字の名前なんて覚えにくくて面倒だ。だから田中、覚えやすいでしょ? 次のエルダーゾンビさんの名前候補は佐藤君だ。覚えやすいからね。
そして悲しいお知らせがある。
新種のゾンビこと、フローラルゾンビさんが余りにもぶきっちょ過ぎるので作業から外れてもらった。
いや私もね、これでも前の仕事で新人君を教えていたりしてたので、フローラルゾンビさんに関しては援護したんですよ?
だけどね、野菜の種を取り出しては次々にブチブチと潰していくフローラルゾンビさんに、ソラと田中君がブチ切れてあと少しで土に返す事になりそう一歩手前だったの。もうね、仕方なく外れてもらって本来の仕事であるダンジョン警備とちょっとしたお願いを聞いてもらって外回りにまわってもらった。
フローラルゾンビさんも少しホッとしていたから決して仲間外れにしたわけではないと思う。
「田中君、種は日影に干した方がいいのですか?」
『アアァァァ』
成る程、出来れば日影の方がいいと。だんだんジェスチャー無しでも分かってきました。
だけど、何で種は洗ったり干したりするんだろうか。そう思って田中君に聞いてみると、地面に文字を書き出した。
《カビ》
成る程、カビが発生しにくくするためでしたか。てっきりひび割れ防止とか何かだと思いました。
答えに納得し次の作業に移ろうと、種を運びだし──
「って、おい、ちょっと待って。田中君、今あなた地面に何て書きましたか? 日本語で書き──あ、こら、消しても駄目ですよ!?」
『アアァァァ?』
「ああぁぁぁ? じゃあありませんよ、貴方もしかして日ほ──あ、こら、逃げないで話を聞いて下さい!!」
『アアァァァ』
「……分かりました。今は何も見なかった事にします。そうですね、今は野菜が実るように頑張りましょう田中君」
『アアァァァ!!』
「はい、頑張りましょう。お互い元日本人として」
『……アアァァァ?』
「ちっ、引っ掛かりませんでしたか」
◇◇◇
種を干して1日が経った。
私はソラと田中君の3人で種まきをしていた。
「ふう、これであらかた終わりですかね」
全ての種類の種を巻き終え、3人共に腰を下ろした。
元日本人疑惑のある田中君からしてみれば、種まきにはまだ少し早いとした感じで止められたのだが、ソラがどうしても植えたいとしたので実験を兼ねて撒いてみたのである。
田中君からすると後少し、もうちょっと乾燥させたかったみたいな感じではあったけどね。
それとトウモロコシに関しては田中君も自信はないらしく、極めて難しいとした顔をしていた。
よく分からなかったので地面に書いて説明してほしいと言うと、『はて?』とすっとぼけられた。
「♪」
ソラに関して言えば、よく黙々と地道な作業に文句も言わず続けられたものだと感心した。
本当にこの子があの《魔王軍一のサイコパス》と恐れられる賞金首なのだろうか。今の姿、種を取り出し終え余った野菜を手に喜んでいる姿からは想像が出来ない。顔は無表情だけど。
『アアァァァ』
少し休んでいると、背後から複数体のゾンビを引き連れたフローラルゾンビさんがやって来た。
「あぁ、もう集め終わりましたか。ありがとうございます、後は私の仕事なので好きにしてもらっていいですよ」
そう言うと散り散り去っていくゾンビ達。
実はフローラルゾンビさんに外回りに行ってもらう際に、あるちょっとしたお願いをしていたのだ。それは、
「結構集まりましたね、墓石」
ダンジョンに延々と並ぶ墓標、墓石を出来るだけ沢山集めて来てほしいと。
理由は簡単、このダンジョンルームと認識している場所に唯一の寝床、
「これだけあれば作れますかね、私のお家」
自分のお家を建てる為にである。
……あの、罰当たりとかそんなんじゃないですよ。ちゃんと墓石の下に死体は眠ってなかったので大丈夫です。恐らくはダンジョン化した際のただのオブジェクトとして複製された墓石に似たただの石なのですから。ダンジョンマスターが言うんだから間違いない。
私の背の数倍はあろうかと思われるまで積み上げられた墓石に手を触れ、土魔法である錬金を発動させる。
若干、畑を耕した時よりも疲れるが、オリハルコンをコネコネするよりはかなりマシってレベルだ。
グネグネとゆっくりと動き出す墓石。
まずは1つ1つバラバラの単体の墓石を完全な1つの墓石に変化させ、そこから一気にイメージを固めながらコネコネしていく。
イメージは普通の一軒家、1階建ての35坪程の3LDK、夢のマイホーム!
背後から聞こえる『ん、キモい』とした声を無視して集中してコネコネしていく。
簡単に全体の形を整えると、今度は内側をコネコネして空洞化していく作業。リビングにキッチンに寝室、玄関の間取りを決めれば後はひたすらコネコネするだけ……
コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、コネコネ、へ、コネコネ、コネコネ、コネコネ…………×10
「うぅぅ……」
ガクンと膝が落ちる。
もう限界、魔力はすっかり空っぽだ。
目眩でふらつく状態を何とか踏ん張り顔を上げて前を向く。
「少し中途半端ですが、初めてにしてはまぁまぁじゃないですかね」
目の前にドンと佇む立派な一軒家。
外装が少し歪なのは魔力が足りなく、中途半端で終わってしまったせいだ。
「外装はちょっとあれですが、内装はちゃんとイメージ通りの筈です。内側から始めに造り上げましたから」
コネコネしている途中、魔力的にこれはキツイと感じた私は先に内側を重点に造っていったのだ。外装はまた後日、魔力が回復してからでも手を入れる事はできる。
プルプルと生まれたての小鹿のような震える足に力を入れ、何とか立ち上がり造り上げた玄関へと進む。
玄関ドアは和風モダン式の引き戸を参考にした造り。
本当は開閉式の普通の片開きドアでも良かっのだが、私は学習したのだ。何しろ全てが墓石で出来たお家、ぶっちゃけドアが重すぎて開けないと思う。
初めてダンジョン偵察に出たときのように、帰宅時ドアを開けられなくて待ちぼうけをくらうのはもうこりごりだ。
「お、重い……」
ズシリと重い感触が腕に伝わる。
くっ、引き戸でも駄目なのか。
押しても引いても駄目ならばスライドで! と思ったのに……こんなんもうどないしたらええねん!!
あ、いや、待てよ。滑り扉にすれば……そうだ、滑車をつければいける筈!! ……魔力が足りない。そう言えば今は魔力がすっからかんだった。
「ん」
自分の無力感に黄昏ていると、ソラが普通にドアを全開に開いた。
「……ありがとう」
哀れみを含んだ目で見詰めるソラにお礼を言い、頭を撫でる。エルダーゾンビこと、田中君は何も見なかったと背後で畑を耕していた。
「凄い」
新築のお家にソラと2人足を踏み入れると、イメージ通りに創られている内装にソラが驚きの声を漏らした。
玄関から始まり、広いリビングにキッチン、部屋は2つで和室と洋室に分けている。
石造りの部屋に和式洋式もないと思うが、和室の部屋は外を一望できるように広い縁側をセットで造り上げていて、後に庭を作る予定だ。
洋式はそのまんまで、広いスペースに横長の窓、硝子は今はないので形だけを造ってある。
洋室は後々手を加えていき、客室用にしていくつもりだ。
勿論、和室は自分の部屋です。
テーブルや椅子も全て墓石で形だけは作り上げてはいるが、こっちも後々に家具などと一緒に買い揃える予定だ。
固有スキルのチラシで何度か家具屋さんが出てきた事があったのでその時に購入しょうと思う。
「……眠い」
マイホームが出来た事で安心していると、どっと疲れが押し寄せてきた。
魔力が空っぽのせいもあると思うが、ここ最近は野営やら野宿ばかりで気が抜けない日々が続いていたのだ。
今日くらいはゆっくりと屋根付の部屋でぐっすりと眠ってもいいと思う。てかソラは既に体をリスのように丸めて就寝している。
「……寝よ」
畑は取り敢えず田中君に任せ、私は丸く縮こまるソラの隣で眠る事にした。おやすみ。すゃあ……
土曜日から目眩と吐き気が少しツラいので、ちょっと今日、病院行ってきます。
無いとは思うのですが、念のために検査をしてこいと言われたのでしてくる事になりました。
念のため2日分(2話分)くらいは予約投稿してあります。




