39 リッチィさん、マンティコアとバトる
いいサブタイトルが思いつかないです……
「ふぅ」
固有スキルの土魔法、 錬 金 を発動して地面から顔を出す。炎竜のブレスの瞬間、オリハルコン性の檻を完全な箱状に変え、念のためにと地面を 錬 金 して潜り込んだ。
いくらオリハルコン性の檻とはいえ、流石に炎竜のブレスに耐えられるのかが不安だったからだ。
「うわぁ、これは酷い……」
確か災厄の森と呼ばれていた場所で夜営していた筈なのだが……
「辺り一面の焼け野原とはこういう事なのか……」
ほぼ見渡す限りが地平線。
災厄と森と呼ばれた森の殆どが焼失している。
地面に潜ったのは体感的に30分くらいだった筈だが……どうやったらこうなるんだ。
「本当、リッチじゃなかったら死んでましたね」
息継ぎ無しで地面に潜れるのはアンデッドの特権だ。だってアンデッドは死んでいるのだから呼吸の必要はない。
「兄貴さん達はどうなりましたかね……」
出来る限りのフォローはしたつもりだが、果たして生きているのか。この惨状を見る限りではかなり危ういだろう。
クリエイトアンデッドで炎竜の注意を反らしはしたが、逆にヘイトが貯まったように見えたのは気のせいだと思いたい。私は悪くない、悪いのは私を拐った賊の皆さんだと思う。成仏してね、死体が残ってたら最悪はクリエイトアンデッドで蘇らせてあげるから。あ、でも私には絶対服従で。
「南無南無」
◇◇◇
空はすっかり明けてきたようで、お日様が既に顔を出し初めている。
地平線になった森をひたすらと進む。正直、私が魔王城都からどのような道程で連れ出されたのかは分からないが、帰り道に迷う事はない。
「いい目印ですね……」
天空に聳える魔王城。
これを目指して行けば何時かは辿り着く……辿り着くのだが……
「しんどい……」
歩けど歩けど目標に近付かない。
馬車で結構な速さで長時間進んでいたのは知っていたが、そろそろ限界だ。リッチなのに、アンデッドなのに疲労を感じるのは何故なのか。呼吸は問題ないのに疲労は問題あるって、余りにも中途半端だと思いませんか? 閻魔大王様。
いっそ、もうこのまま別の場所に行った方が早いのではないのか。そう思う程に私は歩き続けている。本当に恨むぞ、兄貴さん達。
「ふぅ、生き返る。アンデッドですけど……」
チラシのスキルを展開してお茶を飲む。正直、アンデットなので飲み食いは必要ではないのだが、餓えや睡眠は感じるので辛いものは辛い。この体は死なないと言うよりは死ねないんだろうね。
「こういう時は凄く便利なスキルですね、本当」
お茶を一気に飲み干し、二本目のお茶を取り出す。
チラシの残りの残金は心配いらない。
「オリハルコンって結構な値段するんですねぇ……」
残金5011700ゴールド。
なんとオリハルコンが500万ゴールドで入金出来たのだ!!
檻のままだと入金は不可能だったのだが、インゴットの形に《錬金》で戻すと500万ゴールドで入金する事が出来た。めちゃくちゃ疲れたけど。
「くふふ」
冒険者達との宴会で100万ゴールドが消えたのは過去の昔、今の私はちょっとしたお金持ちである!!
そんなホクホク顔で進んでいると、
「……? 地面に影が……」
複数の影が地面を這い回っているのに気付いた。
ドスゥゥンと羽根が生えた何かが落ちてくる。
「「「グワ!!」」」
「グワ?」
はい、モンスターですね、分かります。
「グワァァァ!!」
「《クリエイトアンデッド》!!」
すかさずスキルを発動。
行け、ゾンビ!!
「グワァァァ!!」
あぁ、一瞬で肉片に変わった。
それもそうか、ゾンビは弱いしね。
というかこのモンスターが強すぎる。何だ、このモンスターは。顔は人で体はライオン。鳥みたいな羽に蟷螂の鎌、口からは鋭い牙が覗いて尻尾は蛇がニョロニョロしている。
「キマイラかマンティコアなのかはっきりしてほしいところです!! ──《錬金》!!」
ゾンビはスキルを発動させる為のだだの時間稼ぎだ。
元々展開していたチラシのスキルの返品機能を使い、オリハルコンのインゴットを取り出す。そしてすかさず檻に錬金。
「「「グワァァァ!!」」」
突然現れた檻に一瞬警戒し怯むも、間を置かずとして攻撃してくる。
「グワ、グワ、グワァァ!!」
鋭い牙で檻をカジカジするモンスター、恐らくはごちゃ混ぜなのでキマイラだろう。
「ふぅ、流石に焦りました……」
錬金が後少しでも遅れていたら私も肉片にされる所だった。
「……諦めてくれるまで籠城しますか」
流石はオリハルコンといったところか、咄嗟の事で簡易的な檻の形状にしか錬金出来なかったとはいえ、いくらキマイラにカジカジされてもビクともしない。
「ふふふ、無駄ですよ」
マンティコアが檻を爪で掴み上げ、上空に飛び立ちお持ち帰りしょうにも持ち上がりはしない。
兄貴さん達との件でそれは学習済みである。オリハルコンの一部を地面に杭のように打ち込み、しっかりと固定……あ、これはまずい!! 複数体で持ち上げるのはルール違反じゃないでしょうか!?
「待って、ちょっと待って!? ──《錬金》!!」
地中に打ち込んだ杭をアンカー状に形状を変化させる。
「ふぅ、これなら流石に大丈夫……ですよね?」
杭を大きくし、螺旋を描くようなアンカー状に変えたのが項を成したようだ。マンティコアが複数でお持ち帰りしょうにも微動だにしない。……多少、杭の形状を変えた事で檻の厚みが削られたが、ギリギリ大丈夫みたいだ。
「後はキマイラ達が諦めて帰るまで待ちましょうか」
私にはチラシのスキルがある。
籠城戦にはもってこいだ。
それにしても、どうしてこの辺りにモンスターが? 兄貴さん達の話ではここらは炎竜の縄張りでモンスターは近付いて来ないって……あぁ、炎竜が暴れまくってて逃げて来たのか。
◇◇◇
「「「グワァァ!!」」」
マンティコアの襲撃を受けて何時間、いや何日経っただろうか。
「いい加減にしてくれませかね? いくらなんでもしつこ過ぎますよ!」
籠城戦をするにしても限度あると思う。
「「「グワァァ!!」」」
くっ、このままではじり貧だ。
このマンティコアのモンスター、絶対に私を諦める様子が見られない。
何故だ、私が何をしたって言うんだ。何でそこまで私を狙うんだ!
「「「グワァアアア!!!!」」」
あ、はい、ごめんなさい。怒ってますよね。
スキルの実験と称して、調子に乗ってクリエイトアンデッドでゾンビをけしかけ続けたのが悪かったですよね。マンティコアの皆さんの体に付着しているゾンビの腐った肉片が物語っています。ごめんなさい、もうしませんから許して!!
「分かりました。お水でその体に付着した肉片を流してあげますので私がした事も洗い流して下さいお願いします」
チラシスキルを発動させて2リットルのペットボトルのお水を取り出す。チラシはこの数日何回か変わり、現在は某薬屋さんのチラシである。てかこの数日間、ナズミヤのスーパーのチラシから始まり、眼鏡→家具→薬屋といった順番で全く食べ物関連が出てこない。
アンデッドだから食べ物は要らないといってもお腹は空くんです。本当に勘弁して下さい。
「グワワワ?」
目の前でお水を垂らしてあげると物欲しそうな顔で此方を見詰め出したマンティコア。
もしかして飲みたいのかな?
「グワワワ!!」
相も変わらず諦めず檻をカジカジしている口元にお水を流し込む。すると美味しそうに飲み出した。
「そう言えば、このマンティコア達も数日何も食べてないのでしたよね……」
ずっと私に付きっきりで檻をカジカジしてましたからね。諦めて帰ってくれればよかったのに。
「グワァァ!!」
お水が空になると再び暴れ出すマンティコア。その人のような顔は『もっと水をくれ』『だがお前は殺す』と言ってる。
「ここはまず落ち着いて話し会いませんか?」
「グワァァッ──ペッ!!」
「よろしい、戦争だ」
この野郎、人の顔をしてるからと言って穏便に話してみれば顔に唾を吐き掛けるなんて……もう許さん!
チラシのスキルを展開。
「これとそれとあれもですね」
購入していくのは『トイレ用洗剤』『重曹』『クエン酸』『バスクリーナー』『台所洗剤』『漂白剤』、混ぜるな危険の種類である。多量に購入していく。お値段? 知らんな、これは戦争だ。
全てタップして購入すると、空になった2リットルのペットボトルに混ぜ合わせていく。(絶対に真似してはいけません)
なにやら黄色い煙が出てきたが(絶対に真似してはいけません)私はアンデッドなので問題ない。蓋を閉めシャカシャカとシェイクすれば出来上がり。
「はい、お水ですよー」
全て混ぜ終わると、ペットボトルの蓋を開けて檻をカジカジしていたマンティコアの口に一気に流し込む。
「たーんとお飲みー」
お水と勘違いした馬鹿なマンティコアの口にベコッとペットボトルの縁を潰して流し込む。
「グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ペットボトルの半分を流し終えると、突然悶え苦しむような喚き声を上げたマンティコア。
「駄目ですよ逃げちゃ。まだ半分も残ってますからねー」
逃げ出そうとするマンティコアの体を《錬金》でオリハルコン性の檻で絡み止める。
「グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ガッツリと檻と同化させたマンティコアの口に全て流し込む。
流し込み終わると、ピクピクとし出したマンティコアの目が白眼に変わり、泡を吹き出して倒れた。ツンツンとつついてみるも反応がない、どうやらだだの屍のようだ。
「ふふふ、さてお次は……ん、何ですかこれ?」
急激に体の中から力が湧いてくる感覚が押し寄せてきた。
「あ、これってもしかして……」
レベルアップ?
試しに左手の冒険者の証を操作してステータスを表示してみる。
名 前:リッカ・エンマ
年 齢:16
種 族:リッチィ
レベル:8
スキル:
固有スキル:チラシ(改) 土魔法 クリエイトアンデッド
加 護:▲◆◇★
称 号:わぁれの娘だぁ ダンジョンマスター ダンジョン撃破者
「レベルが一気に8も上がった」
どうやらマンティコアはかなりの高ランクのモンスターのようだ。いきなりレベルが飛んで上がった。
「……これはもしかして」
楽にレベルを上げられるのでは?
思いもよらないチャンスに残っている別のマンティコアを見てみれば、
「グワァァァ!!」
恐怖を浮かべながらも激怒した人型の顔で檻を攻撃し始めた。
仲間の一体がヤられた事で警戒されて逃げられるのではと思ったが、モンスターはやはりモンスターだったか。
「今の内に二本目いっときますか」
購入した洗剤等を再びペットボトルに詰め直す。モクモクと体に悪そうな煙を無視し混ぜ合わせていく。
「ふふふ、もう少しで……って、あれ?」
後は蓋を閉めシェイクするだけだというところで、気が付けばいつの間にかあれだけマンティコアの雄叫びでうるさかった周囲が静まり返っていた。
「逃げた?」
そんな馬鹿な。
あれだけ執念深かったマンティコアが逃げるわけがない。
周囲を見渡してみるも、見える範囲にマンティコアは見当たらない。
やはり観念して諦めたのかと思っていると、自分の真下の地面が突然盛り上がり出した。
「「グワァ」」
「グワ?」
ドゴッと突き抜けて現れたマンティコア。
「……こんにちは」
「「グワァァァ!!」」
ブッ殺すとばかりに飛び掛かるマンティコア。
どうやら私は地面下の檻の装甲までは錬金していなかったようである。てか、簡易的な檻と余分に地面に打ち込んだ巨大なアンカーのお蔭でオリハルコンの量が圧倒的に足りなかったのである。
「いやぁあああああ!!」
誰か助けてー!!
読んでくれてありがとうございます。
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