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ラララ回収

 午後エチゴヤ邸にラララを迎えに来た。(コユキが師範もしたけど)


「一週間、大変お世話になりました」

「ラララ、まだ始まったばかりですよ。気を抜くと覚えたことも忘れてしまうので気を引き締めなさい」

「はい」


 エチゴヤ邸を後にするラララと侍女頭の会話。別れの挨拶というより釘を刺されたような感じにしか見えない。

 会話するとき、ラララが喋る前に一端溜めが入るのはまだ頭のなかで翻訳作業があるからだろう。

 そしてエチゴヤ邸を後にした。


 ラララの衣類が変わっていた。今着ているのはエチゴヤ邸の女中(メイド)服で、次来る時はこれを着てきなさいと言われている。

 そして、村の服は手持ち袋に入っている。とりあえず、靴は制服の靴からスポーツシューズに履き替えた。



「ラララ、大丈夫だった?病気しなかった?苛められなかった?」

 と、コユキがラララをぎゅうぎゅう抱き締めながら尋ねたら、

「実は2日目に倒れました」

 と、答えるラララ。


「おのれ、あのばばあ!」

 と、怒って刀に手を掛けるコユキの頭にチョップ!

「静かにしろ!」



 ラララの話だと、環境の違いと緊張で2日目にとんでもない腹痛で倒れたと。それを侍女頭が看病してくれたという。恨むなんてとんでもないとラララは言った。

 まあ、研修のほうは本当に基本的な事ばかりで自分の見せ方整え方、日常生活と都会の家事のしかたの段階で接客はまださせてもらってないと。

 まあ、この間まで山で芋掘ってただけの小娘だしなあ、焦ってはいけない。


 そして帰りの車(俺の車)は三人乗車で少々狭い。俺が運転してコユキが助手席でラララが後ろ。ラララを前に座らせたかったが、コユキも背が高いので、自然とラララが後部座席になる。

 そしてラララとコユキがエチゴヤ邸での生活を話している。

 コユキ嬉しそうだ。




 そして、奉行所の話に移る。当然、話題は村の番屋に来る男のこと。


「コユキ、()()()はどうだった?」


「普通。番屋ならあれで充分だわ」

「つまりは弱いと」

「まあ」


「なんの事ですか?」

 なにも知らないラララに、俺達が悲しい三角関係を作ってしまった事を説明する。三角関係といっても、タカは諦めているけど。


 そして近日、村の隣地で番屋の工事が始まり、その間に新しい番屋職員としての研修をさせるのだそうだ。番屋の建設は奉行所が手配する。

 そして彼は公務員資格三種まで受けさせられるという。


 公務員資格は一種から五種まであり、岡っ引きは二種以上。奉行所職員は三種以上。当然奉行は五種である。


 はっきりいってこれは辛い。実は若い頃にコユキも三種まで取得したが、その後抹消されている。理由は反社会的組織(ギルド)に在籍した為である。因みにコユキは合格率二割以下の三種を一発合格した。


「三種合格は時間が掛かるかも。でも地方支所兼番屋勤務なら三種は必須条件だし。でも、愛しい幼馴染妻の為なら諦めるということはないわね」


「そうなんだよなあ。永久に不合格なら村で顔を合わせながら過ごすということはないんだけどなあ」


 タカを見捨てることは出来ない。

 かといって、辛い思い出の詰まった町を出て田舎勤務を選んだ夫婦を追い返すのは酷だ。


「いい方法はないのよねえ」

 行き詰まってるコユキ。



「その方。ええと・・タカさんに泥を被って頂きましょう」

 突然のラララの発言。


「「え?」」


「侍女頭の言葉ですが、泥を被る者は必要です。自分に非はなくとも、しなければならないこともある。それも仕事の一部だと」


「とはいえなあ」


「ユキオ様。タカさんに覚悟を決めて貰いましょう。ユキオ様に命を救われたのですから当然です」

 なんかラララが恐ろしいこと言い始めた。





 ーーーーーーーーー




 村に戻ってきた。

 タカに宛がわれた愛の部屋で二人だけで密談をする。最終面接。そして、俺に忠誠を違うかどうかを問う。



「タカさんは、この村に骨を埋める気はありますか?」


「はい」


 なんの躊躇もなく返答が来る。実質迷う理由は無いだろう。今は生きることさえ精一杯なのだから。だが、求めるのはもっとキツイこと。


「かつてタカさんは私に命を救われたが、私に忠誠を誓うことは出来ますか?私の元に来るなら誓って頂きます」

 うあ、罪悪感半端ねえ!

 なに下僕化のごり押ししてんだ俺!


「そ、それは・・・・誓え・・ます・・・・」

 弱いな。


「自分の過去を捨て、自分の価値観を捨て、私が認めた者を味方として、私が敵とした者と敵対する事は出来ますか?」

 うう、悪役だわ俺。


「・・・・」

 混乱している。

 そして疑問を持ちはじめて居る。


「それが出来るならば右腕を治して差し上げましょう。解るでしょう、その腕は完全に破壊されていると。今のままでは料理の皿すら運べません。そんな者は使い物にはなりません。それを私なら治せます。それこそ再び剣を持てるほどに。だがその剣は私の為に振っていただく」

 自分の腕を見た。

 動揺している。

 腕を治す、いや、直すと言ったら腕切り落としてヒールで生やすしか無いんだがな。しかし、あれを見せるなら完全に()()()()に来て貰わねば。

 うわあ。

 この後コユキの事とか説明しなきゃならんのか。辛い!


「私の仲間は皆訳ありです。仇同士も居るが皆過去を捨て生きています。同じことが出来ますか?」


「それ、それは一体?」


「それは仲間にしか教えられない。今は駄目だ」

 言えねえ。


 よしここで態度軟化だ。


「少なくとも私はタカさんに居て欲しいと思っています。あなたも今の身体では仕事にも就けないだろうし、私も見捨てたくはないんだ。()()()()()待っているが、仲間になるなら生きる場所を与えましょう」

 どうだ?


「考えさせてくれませんか」


「三分だ」


 やっぱ俺、冷たい!

 しかも偉そう!

 物凄い決断を求めてるのに与えた情報すくなっ!

 俺、何様? あ、俺様だ。

 この後地獄が待ってるのに残って欲しいと言ってる俺、マジ鬼畜!



「三分たった」


「ユキオ様。ここで働かせて下さい。なんでも致します」


「いいのかい?」


「はい。妻・・いえ、フミも私に死なれたら迷惑でしょう。正直、ここで仕事を貰えなかったらもう全てを諦めるしかないと思ってました」


 あっぶねえ!

 自殺かよ!

 それとも野垂れ死に?



「タカ、君を歓迎しよう」

『さん』を外す。


「有難う御座います」

「辛いけど頼むよ」

「覚悟を決めました。所でどのように辛いのでしょう?」



「うちは、今まで俺に忠誠誓ったのはラララとガガガとコユキ。今日からタカもだけど。ああ、まずコユキな。あいつ元ギルド職員だ」


「ぎ!ギルドおおおおお!」

 そうなるよな。


「あー、でもコユキはギルド裏切って俺に協力してギルド潰したうちの一人だ。これ極秘ね。それよりも重要な事がある」


「ギルドより?」


「いや、ギルドの話は()()()()()だ。一番重要な話はタカの元妻の夫婦がこの村に引っ越してくる」



「フミがああああああああっ!」

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