二次面接・・・・タカ視点
「フミがああああああああっ!」
驚いた!
にっくき元ギルド関係者が居ると言われた事に驚いて居るどころではなかった。
ユキオが、いや、ユキオ様がフミとフミの今の亭主がこの村に引っ越してくると言ったのだ。
フミはほんの少し前まで愛妻だったのだ。離婚したとはいえ、愛している。愛しているからこそ辛かったのだ。私と居たからギルドに目をつけられ、ナオトの慰み者になり、ナオトが逮捕された後でも体の不自由な私の介護で辛い目に合わせた。この女を幸せにしてみせると祝言の日に誓ったのに、終わってみればこの上ない不幸にしている。
『辛くはないわ』幸せというわけではない。
『焦らないでいいから』その分お前は無理をするだろう。
『愛しているわ』だからこそ辛い。
私が
「実家に戻りなさい」
そういうと、フミは声を上げずに泣いた。
こんな俺に絶望したか?
「私はもういらないの?」
泣きながらも話すフミ。
「ああ感謝している。フミはやり直すんだ。人生をやり直すんだ。俺のことは忘れて欲しい」
そう、フミはまだ若い。だれか良い人と結婚して子を産んで今年のことが小さくなるまで長生きして欲しい。
「でも、アナタは・・・」
「心配するな。女房を食わせることはできないが、ひとりで細々となら生きていける。心配しないでいい、自殺なんてしない。フミ、有難う。今まで本当に有難う。看病のことだけじゃない。俺と結婚してくれたこと幸せをくれたこと本当に有難う。最高の女房だったよ」
ぐすぐすと泣くフミ。
「本当に死なない?」
「ああ」
本当は判らない。
全て終わりにしたい気持ちはある。
だが、死ぬとフミが悲しむ。
もし死ぬとしても知られてはならない。
フミには感謝している。
こんな俺と一緒にいてくれて有難う。
幸せになって欲しい。もっと普通の幸せを・・・
この恩は必ずと言えないのが辛い。もうこれっきり会う気はないのだから。
そしてフミは両親に引かれながら去って行った。
それが最後だ。
それからはなるべくフミに会いそうな場所を避けて生きて来た。
家も町に返した。もう接点は無い。
そして風の便りにフミが結婚したと聞いた。
あの両親は強引だが、そこまで無理は言わない。
フミにしても悪く無い相手だったのだろう。
これでお互い静かに別の道を歩める。
なのにどうしてこうなった?
フミが来る?
ユキオ様!
後出しで言うなんて酷いじゃないか!
今一番顔を合わせづらい相手だぞ!
「いやあ。今日明日に来るわけじゃ無いし、落ち着いてよ」
落ち着いて居られるか!
「旦那さんがこの村に新たに設置させる番屋に住み込みで務めるんだけどさ。どうせ公務員資格試験何度か落ちるだろうし。まだだって」
おいおいおいおい、そう言う時に限って一発合格したりするんだぞ!
「ちょ、やっぱり!」
「駄目。もう決定だから」
しまった!やめとけばよかった!
「いやあ。こんな田舎で住み込みで働いてくれる人中々居ないしさ。村人だけじゃ店の営業無理があるしさ」
ユキオ様は晴れ晴れとしてるけど、私は今どん底気分だ!
ガチャ。
「おーい!コユキー!オッケー貰ったぞお!」
「りょうかーい」
「コユキー例のやつ頼むー!」
「オッケー!」
お前らなに企んでる!
「い、一体何を!」
「ああ、腕直すんだよ」
「腕を?」
「動かなかったら剣も振れないし、料理もできないし、皿も運べないじゃないか」
「そ、そうでしたな」
どうやって?
「タカ、腕はどこから駄目なの? 肘?」
「ああ、肘が完全に駄目で感触すら無いのだ」
「う〜ん」
そのあとユキオ様は私の右手をべたべた触って居たが、
「めんどくさいから肩からいっちまおう」
「いいの?」
「ああ、判らないときは丸ごとだ」
「おっけー」
そういうと元ギルド員の女は長い刀を鞘から抜いた。
見ただけで判る。その刀は前回研いでから使うのは初めてだろう!
あれは絶対に切れる!
何をする気だ?
汗が止まらない。
「ユキオ様、一体何を!」
「ああ、絶対服従だから言うこと聞いてね。手を水平に・・・っても無理か。よおおし」
ユキオ様は動かない私の右手を紐で縛り、その紐の反対側を木に縛り付けた。
そしてユキオ様は俺の体を横に引き、右腕が水平に持ち上がる。
「ちくっと痛いかもだけど我慢してね。あ、ラララ血が飛ぶから離れててね」
見れば女の子も見ている。
そして元ギルド員の女が剣を両手で構える。私の真正面だ。
「おい、まさか・・・」
「動かないでね。まあ、動いても外さないけど」
「コユキやれ!」
ヒュッ!
「ぎやあああああああああ!うでがああああ!」
この女、まさかと思ってたことをしやがった!
何がちくっと痛いだ! 激痛だ!
人生痛みは色々味わったが、腕を切り落とされたことは無かった! 痛みも凄いし、なにより手を失った!
吹き出る血しぶき!
確かにそこに見える切り落とされた腕!
ぐああ、気持ち悪い・・・血を失いすぎた。意識を失いそうなのに収まらない激痛!
痛くて苦しくて地面を転がる!
「ヒール! 選択」
何か言ってるがそれどころじゃ無い!
ああ、死ぬのか・・・
ここに残ったのは失敗だった。
俺は騙されたのか?
それともここは狂人の住処だったのか?
失血の気持ち悪さと激痛とで気が狂いそうだ・・・・
青い・・・
景色が青い・・・・
ああ、痛みが消えた。
遂に何も感じなくなったのか。
さよならフミ・・・・・・
「タカ終わったぞ。おい起きろ!」
「いきてる・・・」
「当たり前だろ。折角の従業員殺すわけないだろ。腕直すって言っただろ」
?
地面から起き上がろうと手をついたらヌルッとした。
確かに俺が流した血だ。
血だ。
右手に血がついてる。
?
泥と血の混じったものが右手に付いている。
左手はこっちにあるから、これは右手だ。
じゃあ、あそこに転がってる紐付きの手は?
手が3本?
「ユキオ様。これはどういう・・・あの右手とこの右手はどっちが本物?あれ?こっちが偽物?」
いかん、訳が判らん。
「あっちが古いので、こっちが新品」
「は、はあ」
「治ったでしょ」
「え、ええ」
右手を開いたり閉じたり。左手も開いたり閉じたり。
肘も動く。切られた肩も普通に動く。
こんな不思議なことが。
「治った・・・」
「そりゃ治したんだから。いや正確には生やした」
「なんという・・・」
「これは俺の秘密ね。村人知ってるけどみんな秘密を守ってくれてるし、言っちゃ駄目だよ」
「え、あ、ああ」
ユキオ様は一体?
そして恐ろしいことに、何事もなかったように冷静な人々。
元ギルド員はザクザクと薮の中の地面を掘り、俺の腕を埋めた。
少女は俺の血で汚れた地面に別の土を撒いて均している。
皆、この超常現象を見てもなんとも思ってない?
そしてユキオ様は言った。
「さ、仕事の話をしよう」
そういうと、俺は屋外テーブルの方に連れて行かれて座らせられる。
「ほら食え」
そう言って村長が見たことのない食べ物を持って来た。
村長は次から次へと人数分のその料理を持って来る。
その食べ物はたった一つの器に盛りいれられた熱々の汁物。
「これがラーメン。俺たちの店で売り出す商品だ」
その不思議で熱い食べ物は今日2度目の衝撃だった。
このラーメンに俺の心は囚われ、村を逃げる意思を失った。




