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第33話 『最深部 出発』

 療養のために棟方が欠けてから、戦況はますます厳しくなった。敵の数もさらに増えた。まともに戦っても仕留めるどころか生傷が増えるだけ。


 久々の休みの日。


 一琉は夕日と共に起床し、すぐにラジオの電源を入れた。ダイヤルを回して周波数を夕方のニュースに合わせる。ラジオの音声を流し聞きながら、身支度を整えていく。


 世界の行く末を偉い人たちがあれこれ議論する声が聞こえてくる。


(本当にこのまま、この世界はどうなるんだ? そのうち昼生まれにも徴兵令でも下るのか。じゃないとまた人類は――)


 しかしよく聞けば、アナウンサーやご意見番は、「今、百年に一度の好景気が訪れている」などと嬉しそうに報告している。最近まで不況だ不況だと嘆いていた気がするが、いつの間に好景気に入ったのだろう? その合間に流れている様々なコマーシャルは、どれも技術革新を謳っていた。車はまもなく全自動化の時代が来るらしいし、電源の入らなかった宇宙通信機は、本機自体の複製に成功したというニュースも流れた。医療の現場では超小型コンピューターがほとんどの手術を不要にして、寿命が延びると期待されているらしい。


 新製品の開発で、昼の世界だって大忙しということだ。一琉は、くらくらするのを感じた。夜が今これだけ大変なことになっているというのに、楽しそうなことで。


 それから新聞に目を通した。夜日新聞と、寝ている間に届いていた昼日新聞両方。まひるの言っていた研究施設の情報は、ない。一琉はため息をついてそれを雑に畳み、壁の時計を見た。


「そろそろか」


 まだ起きたばかりなのだが、昼の生活リズムに合わせたらこうなる。念のため黒衣を羽織り、一琉は昼の街へと向かった。

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