第1話
家に帰ると、異臭が鼻に突いた。
「父さん、母さん? 霧夜…………?」
彼は囁くように言う。
が、返答はない。皆、居るはずなのに……。
そう、思いながら彼はリビングへ行く。
リビングに行くにつれ、異臭が強くなり、吐き気を催した。
だけど、リビングのドアに人影を見た彼は嬉々としてリビングのドアを開け――――呆然とした。
彼の目の前には――――――。
紅く染まってピクリとも動かない両親、双子の弟。
そして、黒い服を纏った男。
「何だ、まだ餓鬼が居たのか」
男がそう呟いた瞬間、彼の右目と背中に激痛が走った。
「ぐあっ!!」
彼は倒れた。
自身も両親、弟と同じように自分の血で紅く染まりつつ……。
「助けが来れば、御前は助かる」
男は笑ってそう言うと、空気の様に姿を消した。
痛みで意識が朦朧としている中、彼は唇をかみ締め心に灼き付けた。
今日と言う日を――――。
そして、自分の幸せを壊していったあの男に復讐をする事を――――。
「リ? ――――きりほ? 霧火!!」
ハッと我に返ると、流衣の心配そうな表情。
霧火は眼帯で隠されていない方の左目だけで笑うと言う。
「あ……悪い。ちょっと、ボーッとしてたわ」
「本当? 顔色、悪いよ?」
「顔色が悪いのは御前の目が可笑しいからだ」
霧火が何時も通りの口調に戻った事に安心したのか、何時もなら馬鹿にされた事に対し怒るのに、流衣は笑った。
しかし、霧火は流衣の笑みとは対照的に眉をひそめる。
――――なんで……? なんで、あの日の事を思い出すんだ?
十年前のあの日の事なんか……。
「ねぇ、霧火」
「ん?」
今度はすぐに返答できた。
が、流衣は深刻そうな表情。
「な、何だよ?」
「何時まで此処に居る気?」
「あ……」
そう呟いて霧火は下を見る。
下には、二人の男子と一人の女子が居た。
皆、呆れたような怒ったような表情をしている。
そう、霧火と流衣は生徒会役員。そのため任された文化祭準備が面倒でサボるため、学校の庭にある巨木の幹で辺りが暗くなるまで隠れていたが、この様子じゃ……。
見つかったらしい、それしか考えられない。




