今日はついてない
懐かしい千嶺の街。
たしか俺の家もこの辺だったかな?
だがここにはもう何もない。あるのは瓦礫と…獣の残骸。撃破された戦闘車両。
それと先に逝った戦友の亡骸。
そんな瓦礫の街を車列が走っていく。
陸の基地で忌々しい『再調整』を終えた俺は、我が家に帰るため都市間の定期便に便乗していた。
物資を満載した10台のトラック、先頭はマルダー歩兵戦闘車。
補充兵を載せたトラックもいる。
急造のガントラックも2台。それぞれ車列の前後に別れて周囲を警戒。
割れたアスファルト。荒れ果てた道。着弾跡を避けながら進んでいく。相変わらずよく揺れる。
俺は前方のガントラックに、荷物…そして護衛として乗っていた。弾薬箱が座席だ。
昨日は『再調整』で地獄を見たというのに…支給された朝食には人工肉すら入ってなかった。
なにが菜食者向けメニューだ。
歯ごたえの無い人工肉。肉と呼べるか怪しい代物だがそれでも食えないよりマシだ。
「…今日は…ついてねぇな…。」
「軍曹?なにか?」
ガントラックの砲座に座り、あたりを警戒していた一等兵が語り掛けてきた。
簡易型の強化外骨格を身に着けた擲弾兵。帝国陸軍のもっとも基本の兵科。
「あ。もしかして今朝の配食の話ですか?」
「味気ないですよね。あのメニュー。」
「しっかり仕事してんだからせめて美味い物食いたいですよね。」
くだけた様子でそう続けた。
「確かにな。美味いもんは一日の元気の元だ!」
「朝くらいはしっかりしてほしいよな!」
…俺は最近…味さえ感じない時も増えてきたが。
ん。嫌な予感がする。
「一等兵、おしゃべりは終わりだ。周囲を警戒しろ。」
「鴉がいる。」
あたりを見回し、腑に落ちない顔で一等兵が続ける。
「軍曹?確認できませんがどこに?」
俺は車列の前方の空を指さした。
戦闘フレームに搭載されたセンサーが肉眼では見えないそれをしっかりと認識していた。
獣共の偵察ドローン。カラスを模した機械。
あれがいるなら近くにまとまった戦闘部隊もいる。
参ったなぁ…もう気づかれてる。そのうちここに殺到するだろう。
先頭のマルダーが偵察ドローンを射出した。向こうのセンサーでも鴉を見つけたらしい。
やっぱりここでやるのかぁ
「一等兵。始まるぞ。」
「了解しました。」
銃座の擲弾兵が重機関銃のレバーを操作し初弾を送り込み戦闘準備を整える。
それに合わせて同乗している4名の擲弾兵たちもそれぞれの銃の準備を整える。
さて。何人が生き残れるかな?
「あの…月城軍曹!」
外骨格こそ傷だらけだが真新しい戦闘服を着た擲弾兵が話しかけてきた。
澄んだ高い声だ。
二等兵…こいつ補充兵か。
「軍曹の活躍は聞いております!私と変わらない歳なのに獣を何百体も倒したとか。」
「同期の間でも有名です!あなたとご一緒できることを誇りに思います!」
憧れの有名人に会えた喜びだろう。バイザーの奥の純粋な瞳がそれを雄弁に物語っていた。
たまにいるんだよな。俺のファン。
「それはどうも。だがな新兵。そろそろ戦闘だ。浮かれるな。」
「…失礼しました。」
二等兵は姿勢を正して言った。
「そうかしこまるな。リラックスしろ。」
「生き残れたら握手でもサインでもなんでもしてやる。」
「励みになります!その時は是非!」
一時的に…だが、俺の部下なんだから帰してやりたいな。
物資を載せた車列が迎撃の為に路肩で止まる。左右を瓦礫に囲まれた一本道。
場所としては最悪だがバレてる以上ここで戦うしかない。
どのみち足の遅い車列では逃げ切れないだろう。
補充兵たちのお守りであろう曹長が指揮を執って防御陣地の構築を始めていた。
やはり補充兵達の手際が悪い。
あの曹長には同情するよ。
マルダーの射出したドローンによれば…前方以外に敵は居なさそうだ。
何とかなると信じたいな。
マルダーと俺の乗ったガントラックは少し先行した場所で止まる。
さて…そろそろか。
弾薬箱から立ち上がろうとした。
しかし右足が動かなかった。
…またか…昨日『再調整』したばかりだというのに。
うなじから生えてる機械でできた『触手』に意識を向ける。
右足の代わりに体を支えてなんとか立ち上がる。
最近はこいつに頼ってばかりだ。
――戦闘モード起動。
視界端にそんなメッセージが表示される。
手足が昔のように自由に動き出す。
マルダーの砲身と砲塔がわずかに動いた。一拍置いて射撃を開始する。
重低音が連続してあたりにこだます。
近接信管を備えた砲弾は鴉の群れを難なく叩き落した。
――敵接近
メッセージが表示される。
ワイプ画面でドローンからの視覚情報も送られてくる。
前方から…狼約20体。
獣共の中でも遭遇率の高い狼のような殺戮機械だ。
一糸乱れぬ隊列を組んでこちらに向かっている。
ん?
後方に巨大な何かが見えた。
熊だ。
中型に分類される獣共の中でもその性能は厄介極まりない。
主力戦車並みの火力と装甲。
しかしそれより脅威なのがその巨体を使った突進。
少々厳しいが…前方からならば火力を集中させれば十分撃退できる。
マルダーが破砕射撃を開始する。
肉眼では見えないが、センサーは効果的に狼を撃破していることを教えてくれる。
車体からマルダーの砲塔側面にあるレールに沿って、ミラン対戦車ミサイルの発射機がせり上がってくる。
所定の場所にセットされると中心を軸に前方を指向。
いつでも撃てる。
軽い音。そして白煙が発射機を包む。
発射された飛翔体は目標へ一直線に…飛んでいかなかった。
ミサイルの飛翔ルートの先に青白い弾幕が形成される。ミサイルはそこで爆発した。
蜘蛛か!
両側の瓦礫の壁面、その高い場所に吸い付くように光学迷彩で偽装し、息を殺して待ち伏せしていた蜘蛛が居た。
左右合わせて4体。
「銃手!上だ!撃て!」
銃手に命令を出す。
銃座に座った一等兵が重機関銃を指向しようとする。
だが。
「ダメです!射角が足りません!狙えません!」
言い終わると同時に青白い弾幕…パルスガンの銃弾が一等兵に降り注ぐ。
また助けられなかった。
後ろに居た擲弾兵達がバトルライフルで蜘蛛に弾幕を浴びせる。
蜘蛛は機動性と隠ぺい能力こそ高いが、その分装甲は薄い。奇襲さえ凌げば…擲弾兵でも十分撃退できる。
弾幕を浴びせられた蜘蛛の攻撃が少し落ち着く。
よし…戦友借りるぞ。
一等兵の亡骸を触手で丁寧に銃座から降ろす。
彼の体はまだ暖かかった。
それと同時に本来の腕で重機関銃を銃座からもぎ取る。
そのまま腰だめで構えて蜘蛛に射撃を開始する。
瓦礫の裏側に回って隠れた個体もいたが、関係ない。重機関銃は壁を容易く貫通し蜘蛛を撃破していく。
だが…見落としていた。もう一体いた。
他と違う長大な砲身を背負った蜘蛛。超電磁砲だ。
すでにチャージを終えている。
特徴的な発射音と共に撃ちだされた射出体は応戦していたマルダーの砲塔に吸い込まれる。
それまで砲弾を吐き出し続けていた砲塔が沈黙。
やられた…!
手にしていた重機関銃の残弾を対戦車仕様の蜘蛛に叩きこみ撃破する。
――接近警報。
マルダーが撃破しきれなかった熊だ。
よりによって一番面倒なのが残っていた。
…今日はついてない…。
「おい!二等兵!それとお前ら!」
もたつきながら自分の小銃の弾倉を交換していた二等兵。
それに生き残ってた擲弾兵たちがこちらに顔を向ける。
「…はいっ!月城軍曹!」
持っていた重機関銃をトラックのルーフに置く。
「撃ち方はわかるな?あの熊を撃て。援護しろ」
「弾薬箱一つ分で良い。終わったら次を装填して待て」
「下で話を付けてくる。そのまま乗っていろ。」
「後ろの車列まで運んでくれる。合流して副隊長に指示を仰げ。」
「復唱は要らん!」
「頼んだぞ!お前らが頼りだ!」
それまで戦闘の恐怖が滲んでいた二等兵と擲弾兵達の表情が、少し明るくなる。
「了解しました!月城軍曹もご武運を!」
荷台から飛び降りて運転手席を見る。助手席に座っていた車長は流れ弾が当たったのだろう。何も言わなくなっていた。
運転手席には震えてるドライバー。どうやら無事なようだ。
こいつ…漏らしてる…。
センサーがアンモニア臭を捉えて増幅、脳内にその情報を送ってくる。
そういうのはいらないのだが。
民間企業というものがことごとく消滅した今の時代。
元民間人が食い扶持を求めて軍の業務を手伝うことは珍しくない。
この男もそういった類だろう。
以前勤めていた会社の制服だろうか。肩にはハスキー犬を模したパッチが縫い付けられていた。
その上から支給されたボディアーマーとヘルメットを着用していた。
「おいおっさん。」
だがその男は震えているだけだ。
「おい!」
トラックのドアを叩く。少しへこむ。
「ひいぃ…なっ…なんですか…もう帰らせて…」
完全に青ざめた顔。
「仕事をしろ!仕事を!」
「いまから屋根の上で重機ぶっ放すから音が止んだらバックだ!」
「後ろの車列まで行け!わかったな!」
「ひぃ…そんな…でも…隣に居た人死んでるんですよ…。」
まだまだ震えが止まらない声で言葉を紡ぐ。
「ゴチャゴチャ言うな!音が止んだら後ろに下がる!」
「やれ!やらないとお前も死ぬぞ!」
「わかったな!」
埒が明かない。返事を聞かずにその場を後にしてマルダーの方へ走る。
車体後部にある車内通話用の受話器を持ち上げ通話を始める。
『無事か?』
『…月城…軍曹…ですか?』
『自分は…操縦手のスタイナー伍長であります…』
『車長と砲手は…戦死しました…私も怪我を…』
『そこから出られるか?』
『すみません…腹部に大きな破片が刺さって…操縦席から出られません。』
咳き込んだ後に口から何かが逆流したような水音が聞こえてきた。
『武装は…使えませんが…車体は動きます…』
『そうか…それなら後退して…』
車内に警告音が響く。
同時に俺の脳内にも同じ音が響く。
熊が背中のプラズマキャノンの充填を始めていた。
『…軍曹…私はもう…長くありません…我々が…隙を作ります。』
『おい!待てよ!何考えてるんだ!』
『すいません…コイツに最後の仕事を…させてやりたいんです。』
『後を…頼みます…。』
『待てよ!下がれよ!助かるかもしれないだろ!』
言い終わる前にマルダーのエンジンが唸りを上げる。
最初はゆっくりとした加速だったが次第に速度を上げてゆく。
向かう先には充填を続ける熊。
あと500m、300m、100m。
そこでプラズマキャノンが放たれた。
プラズマ火球はマルダーを直撃し、車体前面で大爆発を起こす。
火球の形にそって車体の半分が溶解。
っバカがよ…死んだら意味がねぇだろうが!
分隊用チャンネルで二等兵に通信を送る。
『撃て!撃ち始めろ!』
『ホ…ホントに良いんですか?その位置では軍曹に当たるかも…』
『いいから撃て!それくらい避けられる!』
重機関銃の射撃が始まる。
熊のプラズマキャノンはとてつもない破壊力だが、発射後にエネルギー回路の切り替えに時間がかかるのでしばらく移動できない。
しかし正面から重機関銃で倒せる相手ではない。
俺は走った。戦闘フレームのアシストを受けて。
1歩1歩の間隔が広く開いている。走るというより連続した跳躍と言ったほうが良いかもしれない。
こちらに気付いた熊が頭部をこちらに向ける。搭載された2門のパルスガンが弾を吐き出す。
回避するために斜め左へ走る。
目の前には壁が迫る。
ブースターのアシストを受けて壁へ跳躍。
着地と同時に足裏の鉤爪で壁面を掴む。
そのまま熊の方へ向かって壁面を走る。
弾幕が追従。しかし走っている少し後方に着弾する。獣の射撃管制プログラムからすれば予想外の動きなのだろう。
この不具合はずっと直ってない。有難い話だ。もしかしたらMATERが手を回しているのかもしれない。
そのうちにパルスガンも弾が切れて射撃が止む。
重機関銃の射撃も終わっていた。
あの二等兵共とドライバー…ちゃんと逃げただろうな?
とりあえずここまでは良い状況だ。
もう一度ブースターを吹かし地面に飛び降りる。あとは熊まで一直線。
その時何かが左右の瓦礫の陰から飛び出してきた。
狼だ。
邪魔だ!そう考えた。
そう考えただけで2本の触手は先端の高周波ブレードを起動し狼の首を切り落とす。
さてと…そろそろかな?
熊がその四肢を使いこちらに走り出す。だんだんと速度が上がる。
お得意の突進だ。5mを越える巨体がこちらを圧殺せんとしている。
これまで何度も…何度も見て来た動きだ。
あと20mの所で一度溜め動作が入る。
低いジャンプからの前足を使った横薙ぎ。
タイミングを合わせた跳躍で熊の頭上へ舞う。
そのまま熊の頭上へ着地することを考える。
それだけで触手は熊の装甲を穿ち、絡みつき、主人を頭上に着地させる。
あとは足裏の鉤爪で熊の装甲を掴み体を固定する。
左腕のガントレットに装備されたライフルで背中のプラズマキャノンに射撃を加えて破壊する。
右腕には熱線銃が装備されている。
採掘用の装備を改良したものだ。
射程は短く、一点に照射し続けなければならない。
だが、おおよそすべての装甲を穿つことができる。
それを熊の演算コアのある首元へ向けて照射する。
なんとかして振り落とそうともがくが無駄だ。
空気中の水分を蒸発させる特徴的な音を響かせながら少しずつ装甲に穴を穿つ。
あと少しで貫徹するところで気の抜けるようなポンっという音が間を置かず6回聞こえた。
熊の背中から6つの球体が上空に撃ちだされる。
反跳地雷《Sマイン》!
触手の反応は早かった。先ほど破壊したプラズマキャノンの付け根をバターを切るように切断するとそのまま頭上へ掲げる。
花火のような軽い炸裂音のあとベアリング球が降り注ぐ。
非装甲部分の大半を残骸で防御。それ以外は装甲で防ぐ。
ようやく演算コアが見える。手刀の一突き。
制御をうしなった巨体はゆっくりと地面に倒れ始める。
飛びのいて着地すると同時に重量物が倒れる音が背後からした。
熊の巨体は大地に伏せて動かなくなった。
何でもない。いつものこと。
さて。車列はどうなったかな?
来た方向へ歩き出す。
途中、撃破されたマルダーの残骸に立ち寄り、車長と砲手の認識票を回収する。
スタイナー伍長は操縦席ごと消滅していた。
ここで戦った3人と一台に短い黙祷をささげてから歩き出す。
しばらく歩くと車列が見えてきた。
…様子がおかしい。
黒煙が上がっている。
胸騒ぎを抱えつつブースターも併用して急行する。
戦闘は終わっていた。
蜘蛛と熊に気を取られている間に、後方も襲撃を受けていたようだ。
物資を積んだトラックの半数が破壊され、後方の警護に着いていたガントラックは路肩で炎に包まれていた。
…俺が乗ってたガントラックもそこにあった。
何体もの黒い狼の残骸が目に入る。潜伏に特化したモデルだ。
蜘蛛もこいつも歩兵戦闘車が搭載している標準ドローンでは検知できない。
上級モデルが要る。
道端にキレイに並べられた擲弾兵と元民間人のドライバー達。上半身にシートがかぶせられている。五体満足な者は居ない。腕、足、胴体の一部、首が無い者も居た。
そういえばあの二等兵たちとドライバーは?
目の前に並べられたシートをめくって確認する勇気は無かった。
もう…疲れた…。
「月城軍曹…?」
背後からあの高くて澄んだ声が聞こえて来た。
まさか…?
そちらを振り向くとあの時一緒に乗っていた擲弾兵達が居た。
皆ヘルメットを腰から下げてレーション付属の不味いチョコレートバーやコーヒーを楽しんでいる。
生き残った者の特権。
あの情けないドライバーも遠くでへたり込んでいるが無事なようだ。
「お前ら…無事だったのか!」
…頑張った甲斐があったかな…?
「しかしよく生きてたなぁ!」
「ドライバーさんが途中で怖くなって…私たちを乗せたまま瓦礫の隙間に隠れてたんです。」
あの野郎…命令違反か。
…まあこいつらが無事だったから大目に見てやるか。
「今日は少しでも軍曹のお役に立てたので同期に自慢できます!」
歳のわりに幼く見える…少女と言っても差し支えないような金髪碧眼の二等兵が自慢げにそう告げる。
「そうか…良かったよ…。」
脳内でアラームが鳴り、大きくメッセージが表示される。
――戦闘モード稼働限界まで 00:30
カウントダウンが始まる。
嫌なんだよなこれ。
死刑を待つ囚人の気分だ。
そして数字が0になった。
――戦闘モード終了。通常モードへ移行します。
視界が白く染まる。
激痛。
頭蓋骨の内側から脳を押し潰されるような痛みが襲ってきた。
「……っ!!」
声が出ない。喉が収縮してヒューヒューと肺の空気が漏れ出るような音しかしない。
声が出せた所で意味のある言葉は出てこなかっただろう。
熱い。
溶鉱炉に放り込まれたような感覚。
全身が焼けて溶けていくような激痛
それなのに歯が鳴っている
寒い。
全身を刺すような鋭い痛み。
骨の髄まで凍るような悪寒。
それらが同時に感覚として襲ってくる。
暑いのか寒いのかわからない。
「――――――」
爆音が響いた。鼓膜を破るほどの。
脳を揺らすような暴力的な音。
ぼやけた視界の向こうで二等兵が何か叫んでいる。
何を言ってるのかわからない。
地面が傾く。背景が歪む
…いまどうなってる?どちらに傾いてるんだ?
脚も…動いてるのか?
いま立ってるのか?いやもう倒れてる?
心臓が激しく脈打つ。
鼓動がうるさい。
かと思うと急に静かになる。
突然、鼓動が遠くなった。
……止まった?
……止まってる?
……ここまでか?
いや、まだ動いている。
だが、次の鼓動がいつ来るのか分からない。
肺が痙攣して動かない
息が吸えない。
視界が暗くなりかけた時、触手が地面に触れた感覚がした。
ああ、前のめりに倒れてたのか。
全身の感覚がおかしくなってるなかで…こいつだけは鮮明にはっきり動いてくれる。
何も考えなくても俺を支えてくれる。
「……ぁ……っ……」
何か言おうとした。
だが、喉から漏れたのは意味のない音だけだった。
急に視界がクリアになり感覚が戻ってくる。
自動投薬システムが働いたか。
目の前には先ほどの二等兵が困惑して涙を浮かべている。
どうやら彼女に抱きかかえられていたようだ。
「カッコ悪い所見せちまったな。」
ホントに…こればっかりはどうしようもない。
あ…そうだ…握手。
左腕を動かそうとする。動かない
…やっぱりそうだよな。
だがその意思を汲み取った触手が彼女の前に差し出される。
「月城軍曹…?これは…?」
「あー、握手だよ。約束してただろ?」
「見ての通り腕は動かねぇからな。」
「まあ動いたとしても義手だからありがたみなんてねぇだろ。」
触手が彼女の涙をぬぐう。
「そんな顔すんなよ。俺にとってはいつものことだ。」
「それより生き延びたんだからもっとうれしそうな顔しろよ。」
困惑しながら彼女は触手を握った。
グローブのごつごつした感触の奥にわずかに体温が感じられた。
「いつも…こうなんですか?」
「今日はちょっと酷かったかな?」
「幻滅したろ?噂ほど俺はかっこよくないよ。」
「だって…あんなに苦しそうに…。」
「だーかーらー。もう慣れてんだよ。いつものこと。」
「なんで…なんで…そこまでして戦うんですか?」
「あー守りたいものがあるから?」
少し照れくさいな。
遠くから重強襲輸送機ワルキューレのエンジン音が聞こえてくる。
「やっと迎えに来たか。あれだよ。あのVTOLが答え。」
ランディングギアを展開して着陸態勢に入ったワルキューレ。
側面のスライドドアを開けて叫んでいる大男と小柄な少女。
おーおーナギまで乗せてきちゃってまぁ。…ローランド…それ軍規違反じゃない?
まあいいや。
今日はやっぱりいい日だ…あいつらの所に帰れるんだから。
ここまでご覧いただきありがとうございます。
コチラの物語は友人の家で触ったChatGPTとの会話の中で生まれたアイデアを、どうしても他の人にも見てほしい一心で書いてみました。
こういった事は初めてでして私自身社会経験もあまりありませんし語彙もそこまで豊富ではありませんのでGPTだけが頼りです。
細かい修正やアイディア出し、特に劇中の単語などの生成に大いに助けられてます。
本文の大半は私自ら筆を執っております。
さて内容ですが、戦闘機械との戦争が続く世界を舞台にしたSFです。
主人公は、ごく普通の少年。
決して特別に勇敢なわけでも、最初から英雄になりたいわけでもありません。
それでも、大切な誰かを助けたいという気持ちから、自分の身体すら代償にするような選択をしてしまう。
そんな彼が何を得て、何を失い、最後にどこへ辿り着くのか。
格好いい戦闘や強化外骨格などのSF要素ももちろん好きなのですが、それ以上に、人間が怖がったり、後悔したり、それでも誰かのために前へ進もうとしたりするところを書いていきたいと思っています。
まだまだ手探りですが、最後まで彼らの人生を見届けられる物語にしたいです。
これからよろしくお願いします。




