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08話:アリシアをお姫様抱っこをしていく

 それからしばらくして。


「はぁ、はぁ……」

「そうそう。その意気です!」

「は、はい。はぁ、はぁ……」


 屋敷の中庭にやって来た俺はアリシアの両手を掴みながらゆっくりと一緒に歩く練習をしていった。


「よし、庭先を一周歩けましたし、今日のリハビリはこれで終わりにしましょう。お疲れ様でした、アリシアさん」

「はぁ、はぁ、これで終わりですか? まだ30分くらいしか経ってませんけど……」

「それだけ歩けば十分ですよ。それに最初から沢山動き過ぎたら逆に身体を壊してしまうかもしれないですからね。だからリハビリは少しずつやっていくようにしましょう。という事でこの後はノンビリと休憩にしましょうか」

「はぁ、はぁ……はい、わかりました。それではこのまま地面に座りたいので……私の事を支えて貰えますか……?」

「はい、もちろんです。それじゃあ……よっと」


 俺はアリシアの手を掴んだまま庭先の草の上にゆっくりと座らせていった。


「ありがとうございます。それにしてもたったこれだけの事でこんなにも息が上がってしまうなんて……」

「そんな悲観しなくて大丈夫ですよ。むしろ今までずっと身体を動かしてなかったのに、ここまで歩けるなんて凄い事ですよ。だからこれからもリハビリをちゃんと続けていけば、きっと近い内にアリシアさんは元気良く歩き回る事が出来るようになりますよ」

「え、ほ、本当ですか? それなら良かったです」

「はい。でもそのためにはしっかりとリハビリを重ねていくだけじゃなくて、ちゃんと身体にも栄養を沢山あげていってくださいね。あ、そういえば沢山眠れたという話は聞いたんですけど、ご飯に関してはどうですか? 食欲はありますか?」

「はい、食欲も回復してきています。でもいきなり固形物を食べたら身体がビックリしちゃうだろうからという事で、これからもしばらくの間はおかゆなどの食事になりそうですが。それでも今までよりも沢山ご飯が食べられそうで嬉しい限りです」

「おぉ、それなら良かったです。でもせっかく病気が治ったのに、しばらくはおかゆ生活なのはちょっと寂しいですね……あ、そうだ。それじゃあアリシアさん。唐突ですけどアリシアさんって甘い物とかお好きですか?」

「甘い物ですか? はい。もちろん大好きですよ?」

「そうですか。はは、それなら良かったです」

「え? どういう事でしょうか?」

「いえ、何でもありません。まぁ近い内にわかると思うので、その時を楽しみにしておいてください!」

「?」


 アリシアから甘い物が大好きだという話を聞かせて貰った。それじゃあ今度アリシアのためにアレを作ってあげる事にしよう。


「? よくわかりませんが……はい、わかりました。それではその時が来るのを楽しみにしていますね。それと今日のリハビリはこれで終わりなんですよね? それでしたらせっかくですし……良かったらこの後セツナ様にお時間があるようでしたら、私とノンビリとお話をしませんか?」

「お話ですか?」

「はい。せっかくこうしてセツナ様とはご縁が出来た訳ですし、セツナ様の話とか色々と聞かせて貰いたいなと思いまして。だ、駄目ですかね……?」

「いえいえ。全然良いですよ。どうせ俺はこの後も暇なんで、それじゃあ良かったらこの後は楽しく話をしていきましょうか?」

「ありがとうございます。ふふ、そう言って貰えて嬉しいです……くしゅっ」

「ん? あ、す、すいません。もしかして庭は寒かったですか? 春先だから暖かいかなと思ったんですけど……」

「あ、い、いえ。今日は暖かい気候だとは思います。でも今までずっと室内で生活してたので、久々に外の風を受けてちょっとだけ身体が冷えてしまったのかもしれません……」

「あ、あぁ、なるほど。確かに今日はアリシアさんにとって久々の外出でしたもんね……またアリシアさんが病気になったら大変だし、それじゃあ急いで部屋に戻りましょう。そしてアリシアさんの部屋の中で暖まりながらノンビリと話していきましょうよ」

「ふふ、そうですね。そうしましょうか。それではまたセツナ様の手をお借りしても良いですか?」

「はい、わかりま……って、あぁ、いや。それだったらアリシアさん。ちょっと俺の肩に手を回していってくれますか?」

「え? セツナ様の肩に手を回す……? え、えっと、こ、こうですか?」

「はい、そうです。それじゃあいきますね。よいしょっと!」

「え……って、わわっ!」


 俺はそう言ってアリシアの腰と太ももに手を添えていき持ち上げていった。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。


「大丈夫ですか? 怖くありませんか?」

「あ、い、いえ、全然大丈夫です。怖くなんて決してありませんよ。で、でもその……私を持ち上げるなんて……お、重くないですか?」

「はは、アリシアさんが重いなんてありえないですよ。全然余裕です。綿毛のように軽いですよ」

「そ、そうですか……ほっ。それなら良かったです。あ、でもその……わ、私、さっきまで頑張って歩いていたので、その……身体から汗が出てしまっているのですが……そ、その……変な匂いとかしてませんか?」

「変な匂いですか? いや全然感じませんよ。というかむしろ良い匂いがしてますよ。これってもしかして香水ですか?」

「あ、はい。そうです。バラの香水ですよ」

「へぇ、やっぱりそうなんですか。なるほどー、これが香水の匂いなんですね!」

「は、はい、そうですけど……どうされたんですか? 香水が珍しいんですかね?」

「はい、そうなんです! 俺、今まで香水みたいなオシャレで大人っぽい文化とは無縁の生活を送ってたので何だか新鮮な気持ちになります。中学の時も香水を付けてる女子なんていなかったし……って、あ、す、すいません! 普通に考えて女性の身体の匂いをかぐってマナー違反ですよね! ほ、本当にすいません……何だか凄く良い匂いがしたからつい嗅いじゃいました……」

「……ふふ、大丈夫ですよ。良い匂いだと言って貰えて私も凄く安心しましたから。ですからそんな事は気になさらないで下さい」

「そ、そうですか。そ、そう言って貰えると助かります。こ、こほん。それじゃあ気を取り直して……それじゃあ今からアリシアさんの部屋に戻ります。しっかりと肩に手を回しといてくださいね」

「はい、わかりました。それではよろしくお願いしますね。セツナ様」

「はい、任せてください!」


 という事で俺はアリシアの事をお姫様抱っこしていきながらアリシアの部屋に戻っていった。


 そしてアリシアの部屋に戻ってきた俺達は、それからノンビリと他愛無い話をしながらゆっくりと楽しい時間を過ごしていった。

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