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04話:全身包帯だらけの貴族令嬢と出会う

 それからすぐ。


 ギルバートの案内によって俺たちはギルバートの娘さんであるアリシアの部屋の前にやって来た。


―― コンコン……


『……こほこほ……はい、どなたでしょうか……?』

「アリシア。私だ。部屋の中に入っても良いかい?」

『……あぁ、お父様。はい、大丈夫です。どうぞ……』

「わかった。それでは……」


―― ガチャッ……


「アリシア。おはよう。今日の調子はどうだい?」

「こほこほ……はい、おはようございます。今日はいつもよりも調子は良いですよ……こほこほ……それと、お父様の隣に立っていらっしゃる方は……?」

「初めまして。俺はグランデ領から来ました、冒険者のセツナと言います」


 俺はベッドに横たわっているギルバートの娘さんのアリシアに挨拶をしていった。そしてすぐに俺はアリシアの姿をじっと見ていった。


 アリシアの全身には包帯がキツく巻かれている。顔も目と口と鼻以外全てを包帯に覆われている。まるでミイラ人間と言っても差し支えない風貌だ。


 そしてその包帯を外したらアリシアの身体はかなり痛々しい姿になっているというのは容易に想像が付く。本当に痛ましい光景だと思った。


「こほこほ……ご丁寧にありがとうございます。私はエルフェミナ家の長女、アリシア・エルフェミナと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

「はい、よろしくお願いします。アリシア様」

「アリシア。この御方は冒険者であり回復士(ヒーラー)でもあるそうだ。だから今からセツナ殿の診察を受けて貰えるかい?」

「こほこほ……えっ……? こんなにも若いのにセツナ様はヒーラー様がいらっしゃるのですか? こほこほ……」

「はい、そうです。まぁ確かに他のヒーラーと比べたら年齢はかなり若いと思いますけど、それでも今まで沢山の怪我人を治してきた実績はちゃんとあるので安心してください。という事で是非ともアリシア様の診察をさせてください」


 俺はペコリと頭を下げながらアリシアの診察をさせてくれと伝えていった。しかしアリシアは……。


「……いえ。申し訳ありませんが……今回の診察は遠慮させてください……こほこほ……」

「……え?」


 しかしアリシアは俺の診察をさせてくれという言葉に対して、ピシャリと断りの言葉を送ってきた。


 まさか俺は断られるとは全く思わなかったので、ちょっとだけビックリとした気持ちになりつつも冷静に理由を尋ねていった。


「アリシア様。診察を遠慮される理由を教えてくれませんか? アリシア様のお身体はとても辛い事になってると思います。ですから一旦診察を受けた方がアリシア様のためにも良いと思うのですが?」

「……駄目です。私の病気は原因不明の謎の病だと言われております。そして私の病気は“伝染病”の可能性もあるそうなんです……こんなにも辛い病気をこんな若い子に移させる訳には絶対にいきませんから……こほこほ……」

「ア、アリシア……そんな事を言わずに……診察を受けてくれ……頼む……」

「……なるほどね。ふふ、アリシア様、大丈夫ですよ」

「こほこほ……ですから診察は遠慮させてください……って、えっ?」


―― スタスタッ


 俺は診察をやんわりと拒否しているアリシアに『大丈夫』だと言いながら、ゆっくりと近づいていった。


「あ……セ、セツナ様……だ、駄目です……! そ、そんな近づいてしまったら……もしかしたら私の病気がアナタ様に移ってしまうかもしれませんから……! こほこほ……!」

「いえ。絶対に大丈夫です。少し恥ずかしい話ですけど俺は冒険者としてはまだまだひよっ子です。今でもスライムを倒すのに一苦労する事が多いし、勝てなくて逃げる事も多々あります。でも怪我や病気が相手なら俺は絶対に負けません。俺は今まで一度たりとも怪我や病気に負けた事のない凄腕の回復士(ヒーラー)なんです。だからそんな俺のヒーラーとしての腕を信じて貰えませんか? 俺はどんな事があっても絶対に大丈夫なんで……だから俺にアリシア様の身体の診察をさせてください、お願いします!」

「セ、セツナ様……」

「アリシア、私からも頼む。知人から聞いた話では、セツナ殿は類稀なるヒーラーの才能の持ち主なのだそうだ。だからアリシアにはセツナ殿の診察だけでも受けて欲しいんだよ。それに私はもうこれ以上アリシアが傷付く姿を見たくないんだ……だから頼む……アリシアの身体が良くなると信じて……どうか彼に診察を任せて貰えないだろうか……」

「お父様……」


 父親のギルバートは娘のアリシアに向かって深々と頭を下げながらそう懇願をしていった。心の底から娘を心配しているからこその行動だと思った。


 そしてそんな父親の熱意を感じ取ったアリシアは……決心が固まった表情をしながら、俺の方に顔を向けてこう言ってきた。


「そうですよね……お父様は私のために毎日尽力してヒーラー様を探してくれてたんですよね……それなのに診察を断ろうとするなんて……そんなの親不孝者過ぎますよね……わかりました。私、セツナ様の事を信じます。ですからその……今から私の身体を……診察をお願いできますか……?」

「はい、わかりました。信じてくれてありがとうございます、アリシア様。それではすぐに身体の診察をさせて貰いますね。まずはアリシア様の身体に巻き付けている包帯を外して欲しいのですが、俺の方でアリシア様の包帯を外していっても大丈夫ですかね?」

「……はい、大丈夫です……それではその……お願いします、セツナ様……」

「はい、わかりました。それじゃあ包帯を外していきますね」


―― シュルシュル……シュルシュル……


 俺はアリシアに許可を貰ってから包帯をゆっくりと外していった。すると……。


「……えっ? こ、これはっ……!?」

「……っ……」


 アリシアの包帯を外してすぐに絶句した。アリシアの肌は全身が赤黒く変色をしていた。それに皮膚も全身爛れてしまっている。まるで大火傷を負ったかのような酷い状態だ。顔も大火傷を負ったかのように全て爛れてしまっている。


 これがもしも大火傷を負った状態と同じなら全身にかなりの激痛が常に走っているというのが容易に想像が付いてしまう。こ、こんな大病を長い期間患っていただなんて……こんなの辛すぎるよ……。


「……こんな醜い姿を見てビックリとされましたよね……こんな気持ち悪い姿を見せてしまって……本当にごめんなさい……」

「……えっ? ど、どうしたんですか、アリシア様?」

「……いえ、気を遣わなくて大丈夫です……私は身体が今どのような状態になっているのかは自分でちゃんと理解しています……ですから私の醜い姿のせいでセツナ様を不快な気持ちにさせてしまって本当にごめんなさい……こほこほ……」

「アリシア様……」


 アリシアは俺に向かって申し訳なさそうな表情をしながらそんな事を言ってきた。どうやらアリシアは俺が絶句した態度を見て“気持ち悪い”と思われたと思ってしまったようだ。


 でも俺はそんな事は一切思ってない。むしろ今俺が思ったのはそんなのと真逆の事だ。だから俺はそんな酷い誤解を解くためにもすぐに……。


―― ギュッ……


「え? って、わわっ……セ、セツナ様……?」


 俺はアリシアのボロボロになっている手を優しくぎゅっと握りしめていった。するとアリシアはちょっとだけビックリとした声を出してきた。


「あ、ごめんなさい。もしかして痛かったですか?」

「あ、い、いえ、全然大丈夫です。痛くはありません……で、でも、こんな醜くて気持ち悪いボロボロの手を急に触るなんて……一体どうしたのですか……?」

「アリシア様は醜くなんてありませんよ。むしろ逆です。アリシア様はとても綺麗な方ですよ」

「……えっ? セ、セツナ様……? そ、そんなお世辞を言わなくて大丈夫ですよ……私の身体は誰がどう見ても酷く醜い姿をしていますから……ですからセツナ様もそんなお世辞を言わなくて大丈夫ですよ……」

「いえ。俺は本心からそう言っています。アリシア様は醜くなんてないです。誰よりも心が綺麗でとても優しい素敵な方ですよ」

「こ、心が……綺麗……ですか……?」

「はい、そうです。だってさっき俺のために病気が移るかもしれないからと言って診察を遠慮されたり、俺と近づけさせないようにしたじゃないですか。それこそアリシア様がとても優しくて綺麗な心を持っているという証拠ですよ。だから俺はアリシア様の事を醜いだとか気持ち悪いなんて決して思いません。誰がなんと言おうとアリシア様は誰よりも心が綺麗でとても美しい方ですよ」


―― ギュッ……


「セ、セツナ様……」


 俺はそう言いながらもまたアリシアの手をぎゅっと優しく握りしめていった。するとその瞬間……。


「……って、あ、あれ……? あ……」


―― ツゥ……


 その瞬間、アリシアの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちてきた。


「あ、すいません、アリシア様。もしかして痛かったですか?」

「あ、い、いえ、違います。セツナ様にそう言って貰えたのが……何だかとても嬉しくて……それでつい涙が……ぐすっ。ありがとうございます……そんな優しい言葉を言って貰えると……何だか私の心が救われたような気持ちになります……」

「そうですか。そういう事なら良かったです。でも救われたような気持ちになるのはまだ早いですよ。これからアリシア様の事を救うんですからね。という事でアリシア様……このまま俺の手をギュッと握り返して貰えますか?」

「え? あ、は、はい、こうですか……?」


―― ギュゥッ……


「はい、それで大丈夫です。それじゃあいきます。超越回復魔法リミット・オーバー・ヒール

「え……って、わわっ……!?」

「えっ!? ア、アリシアッ……!?」


―― ポワァッ……!


 俺がそう唱えていくと、アリシアの全身からは眩い光が灯っていき、アリシアの身体の傷がどんどんと治り始めていった。そしてそれからすぐに……。


「……ふぅ。はい、これで無事に治りましたよ! どうですか、アリシア様? 一旦自分の身体の確認をして貰えますか?」

「え……えっ!? う、うそ……!? ほ、本当に……本当に私の傷が……本当に治ってる……! ほ、本当に全部治ってますよ……! う……あ、あぁ……ぐすっ……あ、ありがとう……ありがとうございます……セツナ様っ……!」

「はい。無事に治って良かった……って、えっ……!?」


 それからすぐにアリシアの身体の傷は全て完治した。先ほどまでの大火傷を負ったような全身の酷い怪我は全て無くなっている。そしてそこにいたのは……。


(え……わ、わわっ!? も、物凄い美人な女性じゃないか!?)


 そこにいたのは紛れもなく物凄く美人な女性だった。


 “絶世の美女”という言葉を使ってしまうとチープに聞こえるかもしれないけど……でもまさにそのベッドに佇んでいる女性は今まで見た事もないレベルの“絶世の美女”がそこには居た。

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