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34話:アリシアを全力で助けていく

 とある日の午後。


 王都にあるシフォンケーキ屋さんの店内にて。


「お待たせしました。ご注文頂いたお持ち帰り用のシフォンケーキです」

「ありがとうございます。わわ、まだ温かいですね!」

「はい、丁度ケーキが焼きあがったタイミングでしたので。温かい状態でも美味しいですから、帰宅されたら是非とも早めに食べてみてくださいね」

「わかりました、ありがとうございます! それじゃあ失礼します」


―― カランコロン♪


 俺は店員さんに向かって挨拶をしてから店を出ていった。今日は以前アリシアに教えて貰ったシフォンケーキのお店を訪れていた。


 理由は単純にアリシアに食べて貰おうと思ったからだ。今日も沢山歩く練習を頑張っていたし、頑張ってるご褒美という事でアリシアに渡してあげようと思って持ち帰り用のシフォンケーキを購入したんだ。


「よし、それじゃあさっさとエルフェミナ家に戻ってアリシアさんにケーキを渡してあげよう……って、あれ?」


 俺はケーキ屋さんから出てすぐに妙な違和感を覚えた。今ケーキ屋さんの向こう側にある裏路地の方にアリシアらしき人物が入っていった気がしたからだ。


 その人物の顔は見えなかったけど、でも後ろ姿はアリシアのように見えた。それに手元には俺がプレゼントした片手杖を持っていたようにも見えた。


「だけどアリシアさんが一人でこんな街中に居るなんて事あるのか? しかもあの裏路地の中に入っていっても最終的に行き止まりになってるだけだぞ?」


 この数週間、王都の街中を沢山散策してきた事で、俺の頭の中には王都の地図が出来上がっている。


 だからあの裏路地の事も当然知っている。あの裏路地は入っても最終的には行き止まりになっている。だから理由もなくあの裏路地に入る意味はないはずだ。


 それなのにアリシアみたいな女性が、あんな裏路地に入っていく理由なんてあるのだろうか?


「うーん、何かよくわからないけどちょっと気になるし……確認のために俺も裏路地に入ってみるかな」


 という事で俺はさっきの女性が気になったので、俺も裏路地の中に入ってみる事にした。


 そして裏路地の中に入ってからすぐ、周りの空気感が何だかおかしい事に気が付いた。


「? なんだこの変な空気感は? かなりピリついてる感じがするんだけど……?」


 ここは人の賑わう王都の街中だというのに、裏路地に入っただけで何故かダンジョンのような危険な場所に迷い込んだような奇妙な感覚に陥った。


 そしてそれは直感的にヤバイと俺は判断した。もしかしてさっきの女の人……裏路地に入って危ない目に遭ってるんじゃないのか?


 そう思った俺はすぐに裏路地の中を全力疾走で駆け抜けていった。そして俺の予感は的中してしまった。


「はぁ、はぁ……あ、あれはまさか……アリシアさん!?」


 裏路地の中を全力疾走で駆け抜けていくと、奥の行き止まり付近で地面に倒れこんでいる女性が見えてきた。さらにその女性を取り囲むように数人の屈強そうな男性が立っていた。


 そしてその倒れこんでいる女性はやはりどう見てもアリシアだった。しかもアリシアのかすかな泣き声も聞こえてきた。


 こんなの誰がどう見てもアリシアが襲われてる状況だ。ここは先手必勝だ。俺はその屈強な男達の元に全力疾走で向かって行った。そして……。


―― ダダダダダッ!!


「アリシアさんに……何をしてるんだぁああああ!!」

「えっ? って、ぐはぁぁああっ!?」


―― ドカァァアンッ!!


 俺は全力疾走で駆け抜けていき、その屈強な男達に向かって全力で飛び蹴りを食らわしていった。


 男達にとっては今のは完全なる不意打ちだったので、蹴った衝撃に耐えられずにそのまま少し遠くまでぶっ飛ばす事が出来た。


 俺は男達がぶっ飛んでいったのを確認してから、すぐにアリシアに声をかけていった。


「え……あ……あっ……あぁっ……!」

「はぁ、はぁ……間に合った……! 大丈夫ですか、アリシアさん!」

「あ、あぁ……セ、セツナ様……! ど、どうしてここに……?」

「はぁ、はぁ……偶然アリシアさんらしき人を見つけたから気になって……それで何かあったら大変だと思って後を追ってきたんです! それよりアリシアさん! 立てますか? 早くここから逃げましょう!」

「は、はいっ……あ、で、でも……わ、私の杖が遠くに飛ばされてしまって……それで一人では立てなくて……」

「はぁ、はぁ……そうなんですね……わかりましたっ! それじゃあ今すぐに手を貸しま――」

「……っち。いってねぇなぁ……何だよ今のは? 何でいきなりクソガキに蹴られなきゃなんねぇんだよ?」

「いや俺だって知らねぇよ。ってか誰だよこのクソガキは?」

「……っ!」


 アリシアに手を貸そうとしたその瞬間、俺が不意打ちで蹴っ飛ばした男達が立ち上がってこっちに戻ってきた。


(こいつら……おそらく強い……!)


 俺はこの異世界に訪れて一年間、色々な冒険者の先輩に修行や稽古を付けて貰ってきた。


 だから今の俺は相手の姿を見たら相手の力量は何となく察する事が出来る。今目の前に立っている男達はおそらくかなり強い。


 男達が身体をかなり鍛えているのはパッと見ただけでもわかるし、俺みたいなひよっこ冒険者よりも遥かに強い相手だというのは瞬時に理解した。


 だけど流石に相手の方が遥かに格上だったとしても、今の俺に逃げるという選択肢はない。


 何故なら俺の後ろには地面に倒れこんでいるアリシアがいるからだ。アリシアを残して一人で逃げる訳にはいかないんだ。


「セ、セツナ様……」

「……大丈夫ですよ、アリシアさん。そんな不安な顔しなくても絶対に俺が助けてみせますから」


 そう言って俺は不安がっているアリシアに向かって優しく微笑んでいった。


 そして俺は倒れているアリシアの前で仁王立ちして、目の前の男達からアリシアを守るために全力で立ちふさがった。

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