185 コーデリアの憂鬱
どうぞよろしくお願いします。
コーデリアはイシュー子爵家に戻って来て、ため息をついた。
あれから初めての時を入れれば三度、レンダート家を訪ねて伯爵夫人と話をする機会を作れたのだが、初めての時にはマリアとウィリアムが、次からはマリアとシーラが一緒で……。伯爵夫人とふたりきりになる機会が全く得られない。
「苦戦しているようだな」
兄のネヴァルが笑って言ってくるのが癪に障る。
「そうね、本当に私って不運だわ」
「そんなことはないさ。
しがない子爵家の長女だけど、女性初の魔法協会の隊長様じゃないか」
「……本気で言ってる?
隊長なんて……、確かに女性としてもてはやされているけれど、男性と違って、それ以上の地位は望めないでしょう。若いうちだけよ。歳を取れば、男性よりも早く裏方に回される。
結婚もしていない、独り身のしがない子爵令嬢……。行き遅れと言われるでしょうね……」
「そんなに悲観しなくても。
コーデリアはまだきれいだし、結婚したいと申し込んでくる男はたくさんいる」
「……なんで、私、もう少し遅く生まれなかったのかしら」
「いつもそう言うけれど、遅く生まれていたって王子達に選ばれるかなんてわからないだろう?」
「いいえ、5~7年ほど遅く生まれていたら……」
コーデリアは元第1王子であるアルベルトより年上なのだ。
アルベルト王子なら1歳差、もしかしたらャンスはあったかもしれない。でもアルベルト王子は神官になり、王子ではなくなった。
次のエドワード王子だとコーデリアの方が4歳年上になってしまう。女が上の場合……、貴族同士なら幼馴染とか恋愛から婚約に進んだふたりで家が認めていればありえるだろう。
厳密に家柄やつり合いのバランスを考えて整えられる王家の婚姻の場合、家柄と年齢……だけで考えたら、ありえない。
国同士の条約や親善が絡んだ政略結婚ならありえるかもしれないが、コーデリアは国内のしがない子爵令嬢。
さらに次のジョルジュ王子だと7歳差。
本当に自分は不運だと思っているコーデリアなのだ。まあ、父母である子爵夫妻に言われ続けていたことも大きいのだろうが。
生まれたのがもう少し遅かったら。
自分は王子妃にもなれたほどの美貌と才能を持っている。
それがコーデリアのプライドだった。
だから生半可な男ではだめなのだ。興味が持てない。結婚相手として考えられない。
そこに現れたのが、ジョルジュ王子と同い年の天才魔法使いのカイエンだ。
まだ少年だったが、成長すれば容姿端麗な男になるだろうと思われる美しい顔をしていた。父親であるレンダート伯爵も体格に恵まれ、美形の魔法使いとして有名だった。
性格も真面目で、才能も素晴らしい。身分も伯爵家の長男で後継だ。婚約者や恋人の話もなかったが、何やら決められていた婚約者がいるということが少し前に発覚した。政略なら覆すことも可能だ。
レンダート伯爵家は代々魔法使いの家系。魔法の才能ある女性を娶るということも後継には求められているだろう。きっと家としても、コーデリアの魔法の才能を取り込みたいと思ってくれるはず。
貴族同士の間柄なら、7歳差……、恋愛結婚ならありえなくはないだろう。
しかも、自分は美しく、若く見えるのだ。
今は自分の方が年上に見えてしまうだろうが、後三年もすればカイエンも大人の男として成長し、ふたりで並んでいても……、違和感はないはず。
天才魔法使いの若き伯爵と女性初の隊長となった女性魔法使いの結婚!!
いいではないか!
王子ほどではないが、自分のプライドも十分に保てる。何しろ、自分好みの旦那様に育てる楽しみもある。
そして、もう他にコーデリアがこれは! と思う物件はない!
「コーデリア。レンダート伯爵令息に拘らなくても。他にお前のことをいいと言ってくれている方はいるんだよ」
ネヴァルが言うがコーデリアは首を振った。
「周囲が、さすが! と思ってくれる結婚をしなければ!!
ああ、もっとはっきりとした色のドレスの方が私には似合うのに!」
コーデリアがイライラ言いながら、ドレスの裾を忌々し気に捌いて自分の部屋へ去った。
ネヴァルがぼそっと言った。
「本来の自分の在り方を我慢して得る人生なんて、楽しくないと思うがね」
読んで下さり、ありがとうございます。
コーデリアの事情でした。




