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80話 骸骨、不満が爆発する

しなくても良い激論を交わしているルインさん達の邪魔にならない様にそっとその場を離れ、とりあえず容態が急変した時の為に血ダルマ三人組が寝っ転がっている血の海の近くの壁へ移動。急変したところで出来る事なんてたかが知れているけど流石に何もせずに息を引き取られるより、やる事やって駄目だった方がまだ寝覚めが良い。


「わらびもち……ちまき……きりたんぽ……ぽっ……ぽ?」


壁に背を持たれ掛ける様に座り血ダルマ三人組の様子を観察した後、やる事も無いので始めた一人しりとりが早速手詰まった。ぽって何かあったかなぁ……。


「ぽー……ぽ?」

「ぽっぽ焼き」

「えっ?! なっ……なっ?」

「『な』ではないぞ。 ぽっぽ焼きだから『き』で始まる言葉だ。 しかしなんだ、食い物限定のしりとりとはどこまで食い意地が張っているのだキサマは」


真横から掛けられた声に驚いて顔を向けると、すぐ横に僕と同じく体育座りで背中を壁にもたれかけ、平然と人の娯楽に乱入してきた上に好き勝手行って来る骸骨が目に入る。最初は二号機でも居るのかと想像したけどフルアーマーウルズさんセットだったかなんだよく解らないけど母さんが作った鎧を身に付けており、その横には魔剣なにがしが突き刺さっている。そして、この口の悪さは間違いなく、つい先ほど僕を捻りを加えて血の海に放り投げたウルズさんに間違いはないはず。


「……」

「どうした? 『き』ならば幾らでもあるだろう。 ボキャブラリーの少ない小娘だな」


そうじゃない、僕が言葉に詰まっているのはそこじゃない。ああもう、何から質問すれば良い?魔導人形はどうなったの?何でここに居るの?そもそも……


「えっと……ぽっぽ焼き? って何?」

「ん? キサマの好きそうな甘ったるい菓子だ」

「ほう! それは魅力的なって、違います間違えました。 聞きたいのはそんな事じゃなくって、ウルズさんは結界の外側で魔導人形と戦っていたんじゃないんですか?」

「うむ、そこなんだが……」

「それに、僕の結界は地面から天井までしっかり密閉しているのにどうやって入って来たんですか?」


聞きなれない食べ物の名前は蠱惑的なお菓子であった事は一旦脇に置いて、思わず聞き入ってしまいそうな気持をぐっとこらえて、先に聞いておかねばならない事から質問をしなくては。


「とりあえず、順を追って説明するから落ち着け」

「すみません興奮しました」

「まずは、この結界の中に入る方法から先に説明してやろう。 ほれ、そこの隅を見て見ろ」

「隅? あっ!」


ウルズさんの指の先には結界の端っこ、その端っこの部分の結界に小さい四角い穴が開いていると言うかくり抜かれている。開いてはいるけど、結構大柄なうえにフルアーマーなウルズさんが通過するには少々どころかかなり狭い穴の気がする。あれだと僕がやっとこさ通れる位なのでは?


「あの穴がどうかしました?」

「まだ理解出来んのか? あそこを通ってこの中に入った。 それだけだ」

「でもあれだとウルズさんが通れるほど広くない気が? ん? ひぃっ!!」


無言でこちらに右手を伸ばしてきたので、その手を見て居たら目の前で、ぱらぱらと手が崩れる。思わず本能的に転がって来た指の骨を叩き潰そうと、手を降ろした瞬間に骨に避けられた。


「何をする! キサマのバカ力で叩き潰されてしまっては、流石の吾輩でも損傷はま逃れん」

「だって、いきなり骨が転がって来たんですもん。 思わず気持ちが悪くて手が動いちゃうのは仕方のない事ですよ。 で、急に手が崩れちゃったのですが大丈夫なのですか?」

「うむ、吾輩のパーツは腱や筋で結合している訳ではなく魔力で結合しているだけだからな、幾らでも分離も合体も出来る。 今の潤沢に蓄えてある魔力を使えば多少離れた所に転がったパーツも自由自在に操作可能!」

「あー……、ばらばらになってあの狭い穴を通って来たと」

「ご名答!」


気持ち悪い上に無駄にメンドクサイ、更にはそう言う小細工まで使えたのか。さらっと潤沢な魔力とか口走ってたけど、この骸骨は僕の近くにいるとこれからもどんどん僕から魔力を吸い上げて、どんどんややこしい存在になってしまいそうな気がして来た。この課題が終わったら、本気で制作者のお墓探しをしてお別れしよう。


「で、次は石人形共がどうなったかだな」


頷きつつ結界の方を見ると今現在も、結界をブニョンブニョンと叩いているのが見える。けど、結界を叩いている魔導人形の隙間から覗ける広間にはかなりの瓦礫が横たわっているのが見える。


「も、もしや結構な数は倒したんですか?」

「うむ、だがそこで大問題が発生した」

「大問題?」

「そうだ、はっきり言って致命的な問題だ。 それのせいで早急に戦闘を止めてここに来た」


この位の数の魔導人形なら僕が手伝わなくても、むしろ僕が近くに居る事が足手まといになってしまうだろうと言う位、強いと思っていたウルズさんが戦いを止めてこちらに来た。それほど危機的な事があったのだろう。今の僕の力でそんなウルズさんをサポートできるのだろうか。


「そ、その致命的な問題とは? 魔力が尽きたとか……でも、さっき潤沢とか言ってましたよね?」

「うむ、先程も言ったが現在省エネモードで動いているから全く尽きる気がせん。 そんな事よりも重大な問題は……」

「尽きる気がしないのも問題ですが……、まぁ、今はそれは置いといて問題は?」

「だーーーーーーれも、吾輩の活躍を見とらんではないかっ!」


……は? 今何て言ったこの骸骨? 自分を見ていない? どう言う事?


「あのっ、見ていないとどうなっちゃうんです? 正直、見続けていたら変な呪いと掛かりそうで嫌なんですけどっ」

「どうなるかだと? そんなの決まっているだろう! 吾輩のやる気が出んっ!!!」

「……、……???」

「誰も吾輩を見ていないせいで、華麗なる剣裁きに誰も感嘆の声を挙げる者も居なければ、称賛する者も居ない。 挙句の果てに、結界の中の様子を伺えば男三人が顔を合わせて何かを言い争い、血塗れの小娘は更に血塗れで寝転がっている奴らの周りで蠢いているという、面白可笑しい事になっているのだ。 こんな状況で完全に蚊帳の外に居るような状態で吾輩、やる気なんて出せる訳ないだろうっ!」


あ……、え……、こういう時ってどの様な反応をすれば良いのだろう。理解出来た事は、目の前の骸骨が人助けより、結局は一層目で味わった強者を見る眼差しを浴びたかったからと言う理由でここまで来たという事位か。


「あのっウルズさん」

「何だ?」

「非常に……、非常に不本意なのですが……」


ええ、本当に不本意なのですよ。なのですが……

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