第229話 ロミジュリ見守る委員会 ★
「なんで私が教師なんかにならないといけないのよー」
メラニーが缶酎ハイを片手にテーブルに突っ伏した。
「あんたがミスったからでしょ」
ミシェルがへらへらと笑いながらツッコむ。
「あんたも取り逃がしたでしょうが」
メラニーが顔を上げた。
「だから私も教師じゃないの」
「あー!」
メラニーがまたもや突っ伏す。
とはいえ、すぐに顔を上げて、缶酎ハイを飲んだ。
「そんなに教師が嫌ですか?」
一応、聞いてみる。
「嫌なのはせっかく就職した鉄道警備隊から外されたことよ」
「一応は出向でしょ。すぐに戻れますよ」
「ウチのお嬢様が卒業するのは2年と半年後でしょ。それまで出向よ」
そうでしょうね。
「それくらいならいいじゃないですか」
「簡単に言うわね、このメイドは……このガレット、美味しいわよ、ちくしょーめ」
どうも。
「荒れてるわねー」
「荒れもするわよ! 教師になったらなったでとんでもない爆弾があるじゃない! ロミジュリって何よ!」
メラニーの耳にも入ったか。
「ノーコメント」
「何がノーコメントよ。あんたのところのガキでしょ!」
「ウチのツカサ君よりそっちのお嬢様でしょ」
「あー! 先生方は楽しそうに話しているし、すんごい嫌な予感がするー」
メラニーがまたもや突っ伏す。
そして、すぐに起きて、缶酎ハイを飲んだ。
「諦めなさい。私はもう諦めたわ」
「これ、私のせいになんない? 次はどこに飛ばされるの?」
「あんたが来る前からだからあんたのせいじゃないわよ。男女のことで問題が起きるのはウチもそっちも専売特許でしょ」
嫌な専売特許ですね。
「もういっそ友好の架け橋にならないかしら?」
「無理無理。さらなる問題が起きるわよ」
「やっぱりイヴェールの次期当主とラ・フォルジュの直系の子のロミジュリはマズい? どっちとも関係ないですよーって感じでいけない?」
それがベストだと私は思っている。
「いけると思うけど、近い将来にまた争いが起きるわよ。ウチのツカサ君は魔力が桁違いだからね」
「子供ができたら高確率で優秀な魔法使いでしょうね」
ツカサ様の魔力は群を抜いている。
「…………その子はどっちの家?」
「それが問題になるって言ってんの」
「奪い合いが起きるでしょうね。学園の地下にある歴史資料と一緒です」
どちらの家にも権利がある。
「……お嬢様もツカサ君も無能であれよ」
「すんごいことを言うわね」
「ここには私達しかいないわよ。昔は悪口を言い合ってたじゃない」
言い合ってましたね。
「それはそうだけどねー……」
「あー、嫌な予感がする。お嬢様は賢いし、ツカサ君はバケモノだし、とんでもない怪物が生まれてこないわよね?」
自分で嫌な予感がするって言ってるじゃないですか。
「私はもう知らないからノーコメント」
「あんた、ラ・フォルジュの一族でしょ」
「知らない、知らない。私は悪くない」
ついにミシェルが現実逃避に入った。
「あんたねー……」
「じゃあ、どうすんのよ? 無理やり引き離す? 無理無理。それに反対すればするほど、当人達は盛り上がるの。ソースはツカサ君のご両親」
あれも有名ですからね。
「同じような子供を育てるんじゃないわよ」
「それは知らない。良い子なのよ……」
「知ってる。月曜に会ったけど、本当に良い子ね。だから余計に厳しいのよ。クズ男であれよ!」
お嬢様に近づく悪い虫ならこちらも排除を考えるんですけどね。
「だから問題はそっちのお嬢様だってば」
「ウチのお嬢様も真面目で優秀な人なの!」
「だからどうしようもないんでしょ」
「あー!」
メラニーが突っ伏した。
これ、何回やるんだろうか?
「メラニー、もう流れに任せましょう。上手くいけばすぐに鉄道警備隊に戻れますよ」
「え? そうなの?」
メラニーが顔を上げて、こちらを見てくる。
「はい。駆け落ちしたらお嬢様が学校を辞めるかもしれないじゃないですか」
「……それ、あんたが言うの?」
「言いますよ。私はさっさとくっついてしまえって常々、思ってますからね」
あれは早かれ遅かれくっつく。
だったら今のイヴェールのようなことになる前にくっつくべきなのだ。
「女子寮でいつくっつくかの賭けをやってたわね」
ミシェルが笑う。
私達の時も寮内での賭け事は人気だったが、今でもそうらしい。
「私、半年以内に賭けた……」
「賭けたんかい……クロエは賭けるならどれ? 卒業後、卒業まで、2年以内、1年以内、半年以内、ひと月以内、もうくっついてるだけど。一番人気は卒業まで」
生徒達ですらくっつかないという選択肢がない。
「私ならひと月以内に賭けますね」
そう答えると、ミシェルとメラニーが顔を見合わせた。
「変える?」
「うん。クロエが言うならそうなんでしょう」
2人は頷き合って、缶酎ハイをぐいーっと飲む。
「覚悟を決めたわ。知らぬ存ぜぬでいく」
メラニーが深く頷いた。
「そう、それよ。乾杯」
「乾杯」
ミシェルとクロエは仲良く乾杯し、缶酎ハイを飲む。
「仲良しですねー。イヴェール派とラ・フォルジュ派なのに」
「知らない、知らない」
「おたくのお嬢様に言ってちょうだい。私はツカサ君に言わないけど」
言っても無駄。
そもそも派閥だけで人間関係は決まらないのだ。
「ところでさ、ここってどこ?」
メラニーがいまさら聞いてきた。
「私が住んでいる家ですね」
「へー……え? あんたの家? ここって日本じゃないわよね?」
メラニーは私の部屋のゲートを使ってきたから場所までは知らないのだ。
「日本ですよ」
「え? じゃあ、ここって……」
「お嬢様の家です」
「ハァ!? え!? お嬢様は!?」
メラニーがきょろきょろと辺りを見回す。
「ツカサ様の家ですね」
「…………かんぱーい」
はい、乾杯。
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