表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~   作者: 出雲大吉
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

228/228

第228話 ピコーン


「わからないけど、あまり聞きたいとは思わない。シャルが言いたくなさそうだからな」


 保留を選択することにした。


「そう……ツカサはさ、将来、何になりたいとか、何をしたいとかってある?」


 将来か……


「特に考えてない。魔法学校は卒業したいし、そこから先は多分、就職するんだと思うけど、どこに就職するのかも、その後の人生をどうしたいのかも考えてない。というか、俺はシャル達と違って、この魔法使いの世界に入ったばかりだし、学ぶことが多すぎる」


 正直、魔法関係の職業って何があるのかも知らない。

 錬金術師やクラウスみたいな鍛冶師くらいしか知らないのだ。


「それもそうね。まずは知ることが大事だもの」

「ああ。まあ、幸い、この前の対抗戦で優勝したから就職には有利だ。それに最悪はエリク君に泣きつく」


 ニートはノー。


「ラ・フォルジュね……私はさ、やっぱり目標を上げるならイヴェールの当主って答えになる」


 次期当主だからそうだろうな。


「それはわかる」

「ラ・フォルジュとは違ってね……イヴェールは男女問わず、長子が当主になるのよ」


 そうなんだ。


「ウチはそうじゃないな。長子はセレスちゃんだし」


 エリク君は長男だけど、セレスちゃんが姉なのだ。


「ラ・フォルジュは当主が次期当主を指名するのよ。だから現当主があなたやトウコさんを指名したらどちらかが当主ね」

「百パーないと思う」


 絶対にない。

 婆ちゃんも爺ちゃんも穏やかな老後は過ごせないと思う。


「ごめんね。私もそう思う。ツカサもトウコさんも優秀だけど、当主向きじゃないかなって思うわ」


 誰しもがそう思うだろう。


「なんでイヴェールは長子がなるんだ?」

「どこの家もだけど、跡目争いって問題になりやすいのよ。派閥ができたりもするし、兄弟姉妹で争ったりもする。ウチは特に武家だから昔はそういうのが過激だったのよ。そういうことが歴史的に続いていたからかなり前から当主は長子がなるって決まっている。もちろん、辞退することもあるし、子供がいなかった場合は親戚から養子を取ってくる場合もあるけど、基本的にはそういうことになってる」


 まあ、色んなケースがあるだろうからな。


「今のイヴェールはシャルが長子なんだっけ?」

「ええ。妹と弟がいるけど、私が一番上ね」


 ふーん……


「聞こうか?」

「聞いて」


 シャルが言いたいんだな。

 シャルは踏み込んでほしいんだ。


「なんでのその長子であり、次期当主のシャルがフランスではなく、日本にいるの? しかも、付き人がクロエだけ」


 いくらクロエが優秀でも一人っておかしくないか?


「私が父の奥さんの子じゃないから」


 そっちか……


「今の奥さんは後妻?」

「いーえ」


 となると……


「良くないやつ?」

「愛人ね」


 あーあ……

 そりゃ言いたくないわ。


「愛人って……」

「父を庇うわけじゃないけど、色々あったのよ。父は若い頃から私の母と付き合っていた。でも、次期当主である父は政略結婚的なものでイヴェール派の名家の子と結婚したのよ。それで母と別れたならまだ良かったんだけど、母はすでに妊娠してたわけね。その子が私」


 色々ありすぎる。


「お母さんって日本人?」

「半分ね。フランス人と日本人のハーフ。だから私はクォーターね」


 だから日本に住んでいるわけか。


「ごめん。お母さんは?」

「すでに亡くなってる。私が5歳の時かな? 病気でね」


 ユキレベルで重い話だな……


「日本にいる理由は家族と折り合いが良くないから?」

「良いわけないわね。想像してごらんなさい。この家にお父さんの愛人の子がいるのよ?」


 想像できないです……


「ごめん。わかんない」

「そっか……でもまあ、これが私が日本にいる理由ね。あんな家にいたくないわよ。向こうもそう思っているでしょ」


 それもわからない。

 イヴェールの家を知らないから。


「愛人の子でも次期当主になんの?」

「なんのよ。現当主の子であることは間違いないからね」


 そっかー……


「辞退しないのか?」

「私の目標はイヴェールの当主って言ったでしょ」


 今、前にクロエが言っていたセリフが頭を駆け巡っている。

 シャルの幸せが何なのかということだ。


「何にもわからない人間の言葉だから聞き流しても良いけど、折り合いが良くない家の当主になるってきつくないか?」


 すんごい空気にならない?


「きついでしょうね。でも、私はイヴェールであることに誇りも持ってるの。父を尊敬しているし、歴史あるイヴェールを守りたいという想いもちゃんとある。正直、妹や弟よりも魔力が低いし、才能もないけど、やれることはするわ」


 おー……かっこいい。


「すごいな。俺はシャルと同い年だけど、そこまで思えない。ラ・フォルジュは大事だけど、まあ、エリク君がどうにかするだろうって感じ」

「それでいいのよ。でも、あなたの友達で言えば、シーガー家のセドリックなんかも同じくらいの気持ちは持っていると思うわよ。いや、家の大きさを考えればもっとでしょうね」


 あいつがねー……

 いつもへらへらしているんだが……


「次期当主って重いんだな」

「ええ。一族はもちろんだけど、派閥、歴史、様々なものが圧し掛かるわけだからね」


 すごいんだが……


「いける?」

「わかんなくなってきた……」


 ハァ……だから話したんだろうなって思った。


「シャル、手を貸して」

「手?」


 シャルは首を傾げながら右手をテーブルの上に置いた。

 俺はそんなシャルの手を取ると、小指と小指を絡ませる。


「前に約束しただろ? 俺はシャルの敵にならないし、何かあったら助けに行く。それはシャルがイヴェールの当主になろうと、それとは違う道に進んでもだ。別に何ができるわけでもないけど、敵が出たらぶっ飛ばしてやろう」


 それくらいしかできない。


「そう……ありがと。じゃあ、頼るわ。でも、その前にあなたが私を頼りなさい」

「うん。勉強教えて」

「ええ。勉強しましょう」


 俺達は勉強を再開することにした。

 そして、22時前にはトウコの部屋からシャルが帰っていった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

本日、私の他作品である『宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅』の第1巻が発売となりました。エリクサーを作ったことで捕まりそうになり、祖国を逃げ出して、世界を旅するお話になります。

ぜひとも手に取って読んでいただければと思います。(↓にリンク)


本作共々よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~

【予約受付中】
~書籍~
~4/30発売予定~
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~(1)

~漫画~
~5/12発売予定~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
~6/8発売予定~
その子供、伝説の剣聖につき(1)
web版(カクヨムネクスト)はこちら


【新刊】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(3)

覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~(1)
web版はこちら

【現在連載中の作品】
元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

【漫画連載中】
その子供、伝説の剣聖につき
コミックグロウル

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
実はラ・フォルジュが脳筋の集まりで、ツカサを「入婿とする!」って実家に連れてって当たるを幸いなぎ倒してやれば受け入れられたりしそうな気もワンチャンあるけど、イヴェールなのがどこまで問題視されるかが問題…
愛人うんぬんよりも、あんな頭でっかちに従えるか!って言うような脳筋一族ならツカサが全員シバけば揃って忠誠を誓うかもしれないんだけどね
当主を諦めることが出来れば楽にはなれるんだろうけど ここまでずっと頑張って⋯⋯がんばって⋯⋯ 武家として頑張ってる描写あったかな?あれ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ