第224話 彼女以外に何と表現すれば?
月曜が終わり、翌日からは通常授業を受け、空いた時間に勉強するという大変な日々を過ごしていった。
そして、土曜になったので朝からシャルの家に向かうと、ちゃんと武術の訓練もし、朝食を食べる。
「このパン、美味いな」
すごくふわふわしている。
「作ったんです。あ、パン、作ったんです」
しょうもな。
小学生か。
「クロエは本当に上手ね。美味しいわ」
やっぱりいるミシェルさんも絶賛した。
「ありがとうございます。お嬢様やツカサ様は先週、頑張られましたし、テストに向けて頑張って欲しいので作りましたからそう言ってもらえると嬉しいですね」
そうそう。
その感じをキープしてくれ。
「シャルも市街地戦に参加したけど、見事な偵察だったぞ」
試合を見れてないクロエに報告する。
「囮ね、囮」
まあ、そういう意図もあったみたいだけど。
「本当はペア戦の方でツカサ様との夫婦コンビを見たかったんですけどね。正直、ツカサ様とトウコ様の双子コンビはつまらなかったです」
「確かにつまらなかったわね。作業だもの」
それは仕方がない。
リーダーからそういう指示があったわけだし。
「勝ったから良いじゃない。相手が気の毒だったのは確かだけどね」
シャルがうんうんと頷いた。
「それもそうですね。勝って良かったです。ツカサ様、お嬢様、これから勉強だと思いますが、今夜は2人で夜のデートを楽しんでください」
ん?
「なんで?」
シャルがいつものジト目になる。
「実はメラニーとミシェルの3人で同窓会を兼ねた歓迎会をするんです。同級生なんですよ」
「同級生なのは知ってるけど、同窓会を兼ねた歓迎会は初めて聞いたわ。当日に言う?」
「急遽、決まったんです」
「先週ね」
急遽じゃないじゃん。
「いや、同窓会も歓迎会もすれば良いと思うけど、事前に言いなさいよ」
「すみません。サプライズです」
「いらないサプライズ……夜のデートって外食しろってこと?」
「ええ。夜景の見えるファミレスとかがおすすめです」
ファミレスから見えるのは夜景かな?
「私、別に出前でもいいけど……」
「ツカサ様と家で2人が良いと!」
いや、1人で食べるってことだと思うぞ。
「違うわよ……」
「まあ、何にせよ、家はマズいですね。同窓会を兼ねた歓迎会の会場はここなんで……」
あ、宅飲みってやつだ。
「なんでウチなのよ……外で飲みなさい」
「メラニーはフランス在住なので飲むとしたらアストラルになるんですが、店が空いてなかったんです。それでウチです。缶酎ハイで乾杯です」
急に安っぽくなったな。
「あっそ。何時?」
「19時を予定しておりますのでそれまでには出てください」
「ふーん……メラニーはここでやるって知ってるの?」
普通、派閥のトップの次期当主の家には来ないよなー……
「サプラーイズ」
「ハァ……気の毒なメラニー。じゃあ、19時前に出るわ。ツカサ、悪いけど、付き合って」
「いいぞ。何食う? 牛丼? ラーメン?」
シャルが絶対に行かなそうな店を言ってみる。
「私、このイタリアンの店に行きたい」
シャルがスマホを操作し、見せてくる。
そんなに高そうじゃない普通の店だ。
「即答……クロエ、お嬢様がそのイタリアンに行きたいって知ってた?」
「いいえ。ミシェル、野暮ですよ」
野暮メイドのくせに。
「じゃあ、そこに行くか。母さんにメールしとこ」
スマホを操作し、母親に夕食はいらない旨を伝える。
「よし。勉強しましょうか」
「そうだな」
俺達は朝食を食べ終えたので2階に上がり、シャルの部屋で勉強を始める。
「はい、これ」
シャルが白い液体が入ったポーションを渡してくる。
「頭が良くなるやつ?」
DHC!
「脳に糖分が行きやすくするやつね」
「それそれ。もらうわ」
ぐいっとポーションを飲むと、やはり某乳酸菌飲料の味がした。
「よし、やるか」
「そうね」
俺達は勉強を始める。
「正直さ、初めてシャルに勉強を教わった5月の時よりもずっとわかるようになってきたし、勉強自体も辛くなくなってきた感じがする」
嫌なのは嫌だけどね。
「それは良いことね。少しずつかもしれないけど、理解してきてるってことだし、そういう積み重ねが大事なのよ。はっきり言えば、私達とツカサではかなりの差があるわ。でも、それはその積み重ねが違うから。物心がついた時から勉強している私達と違って、本格的に勉強を始めたのが5月からなら早い方よ。才能があるんじゃない?」
ないない。
シャルは褒めるのが上手だなー。
「まあ、頑張るわ。ユイカには負けられないし」
「それも大事だと思うわね。やっぱりライバルって大事だもの」
レベルの低いライバルだこと。
「シャルのライバルはやっぱりトウコ?」
「座学の方はどっこいどっこいでしょうね。ただ、実技がね……」
そこはまあね……
「座学はさすがにシャルの方が上だろ。錬金術の単位を全部取ったんだろ? 逆にトウコはまったく研究してなくて、婆ちゃんに呆れられたぞ」
「トウコさん、そういうのが嫌いそうだものね。確かにそう考えればこっちは勝ってる気がするわ。悲しいことに私は武家でトウコさんは研究職の家なのよね……」
逆だね。
「交換する? トウコ・イヴェールをやるよ」
「私がシャルリーヌ・ラ・フォルジュ? なんか嫌」
俺も微妙に嫌。
「それもそうだな……ん?」
ちょっとぼやっとした。
「どうしたの?」
シャルが覗き込んでくる。
「いや、ちょっと眠気が……」
「あー、運動して朝食を食べた後だもんね」
それはそうなんだが……
「昨日、寝る前に動画を見てて、2時に寝たのが失敗だったかな……」
「大失敗でしょ。テスト前に何してるのよ……」
テスト前だからこそって言っても伝わらないんだろうな。
「シャルは何時に寝たの?」
「私はいいの!」
どうせ錬金術をしてたくせに。
「顔を洗ってこようかな……」
「それもねー……ちょっと寝たら? 1時間くらい寝ると頭がシャキッとするわよ。前にそう言われて、あなた達に騙されたわ」
夜更かししたシャルを寝かせたな。
「俺は騙してない。悪いのはメイド」
「ホント、あの子は……でもまあ、ちょっとした睡眠が有効なのは確かよ」
「どこで寝るんだよ」
ソファーないぞ。
「そうね……じゃあ、こっち」
シャルが立ち上がったので俺も立ち上がる。
そして、部屋を出ると、隣の部屋にやってきた。
「ここは?」
壁一面に本棚があり、すべて埋まっている。
そして、部屋の真ん中には大きなベッドがあった。
「私の部屋」
シャルの寝室か。
当たり前だが、初めて来たな。
「本ばっかりだな」
「どんどんと侵食していったのよ」
好きだねー。
「それでどこで寝るの?」
ベッドしかないが?
「そこ」
シャルがベッドを指差した。
「いや、さすがに悪いよ」
「別にいいわよ。どうせ昼前にクロエが掃除するだろうし、私は気にしない」
そこは気にしなよ……
でも、眠いな。
「本当にいいの?」
「いいってば。ほら、さっさと寝なさい。起きたら勉強だから」
それを聞くと起きれそうにないな。
「じゃあ……」
ベッドに行き、腰かける。
そして、横になったのだが、枕から非常に良い匂いがした。
「シャルの匂いがするな」
「バカ言ってないで寝なさい。1時間したら起こしてあげるから」
シャルは頬を染めてそう言うと、本棚から本を取り、椅子に座って読みだした。
すると、眠気が一気に襲ってきたので瞼を閉じると、あっという間に意識が遠くなっていった。
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