第221話 嫌
教室に着いた俺達はすでにいた女子達に挨拶をし、後ろの方の席に座った。
そして、基礎学の授業を受けていくと、演習場で自習になったので3人でだべる。
「優勝したのは見事だったが、昨日の夜、それ以上の問題が発表されたな」
フランクがつぶやくように言う。
「昨日? 何か発表されたのか?」
「いや、町の人間の誘拐未遂があったって知らねーのか?」
「あ、それか」
昨日の夜だったのか。
「ん? 知ってるのか?」
「まあ……」
これ、言っていいのかな?
「ラ・フォルジュ経由ってところか? となると、お前も知ってるな?」
フランクがセドリックを見る。
「僕も知ってるね。でも、ツカサは特殊じゃないかな?」
セドリックは知ってたのか。
まあ、世界で五指に入る名門の跡継ぎだから事情は知らされるのかもしれない。
「特殊って?」
「ツカサ、別に言っても良いと思うから言いなよ」
セドリックが促してくる。
「犯人とかも?」
「それもすぐに容疑者として発表されるよ」
そうなんだ。
「フランク、実はその誘拐未遂の被害者は俺だったりする。あとトウコ……シャルもか?」
シャルはちょっと微妙かも……
「え? そうなのか?」
「会長は初めて聞いたよ。そうなの?」
うーん……
「シャルはちょっと違うかも。一緒においでって言われただけかな?」
「よくわからんが、誘拐犯にまでロミジュリが浸透してんのか?」
地味に言い出したのってジョアン先輩のような……
なんか戯曲がどうとか言ってたし。
「えーっと、誘拐犯が辞めたウォーレス先生とジョアン先輩なんだよ」
「ウォーレス先生……ジョアン先輩……あ、春先のバイトか!」
フランクが手をポンッと叩く。
「それそれ。まあ、俺に勝てるわけがないから撃退したけど、以降もウチの派閥のなんちゃらっていう家のヨハンさんがトウコを攫いかけたりもした」
「結構な大問題じゃないか? お前ら、ラ・フォルジュの直系だろ」
「直系なの?」
そうなの?
「現当主の孫ならそうだね。君らがバカじゃなかったら君かトウコが次期当主になってもなんらおかしくない」
こら、セドリック。
本当のことを言うんじゃない。
「そんなバカ……じゃない、双子を誘拐未遂か……セドリック、他にも隠していることがあるのか?」
「そのジョアン先輩が先週の対抗戦でコンテの町の代表にいたことかな?」
こいつ、何でも知ってるな。
これからは全部、セドリックに聞こう。
「コンテ……また嫌なところだ」
「おや? フランク、知ってるのかい?」
セドリックが意外そうな顔をする。
「ウチの国のお偉いさんから注意しろって通達があったんだよ。ウチの国は独自に調べたりするからな」
それでイルメラが知ってたわけか。
「ふーん、さすがはハンネス・ヘルダーリンだねぇ……優秀な人間と聞いてるけど、自国第一らしい」
ハンネス?
どっかで聞いたことがあるような……
誰だっけ?
「お前が言うな。何でも知ってんじゃん」
俺とトウコが兄妹なことも知っていた。
「ははっ、それもそうだね。でもまあ、ツカサだけじゃなく、出かける時はフランクも気を付けなよ。君は1人でも外に行くからね」
「お前は?」
「僕が1人で出かけるわけがないじゃないか。常に君達というボディーガードがいる」
俺達、ボディーガードらしい。
「えんだー?」
「良いね、それ。感動的」
「お前ら、本当に明るいよな……」
フランクが呆れる。
「そこまで気にすることじゃないって。というか、ずっと気を張ってたらしんどいよ? 要は皆で動けばいいってこと。友情を深めようじゃないか」
良いことを言う。
「まあな……それにツカサは大丈夫か。会長も他所の町には行かないだろうし」
「駆け落ちしたりして……」
「笑えねー……」
笑ってんじゃん。
めっちゃ笑顔じゃん。
「やっほー」
「ツカサさん、優勝おめでとうございます」
俺達が話していると、イルメラとノエルがやってきた。
なお、トウコとユイカは魔法の基礎学の授業だというのに体術の試合をしている。
「どうも。ノエルも実家に帰ってたのか?」
「ええ。夏休みのおかわりって感じでしたね」
羨ましい限りだ。
「あんたらは何を話してたの?」
「やっぱり昨日のニュースだな」
ロミジュリで笑ってたくせに。
「まあ、そうなるよね。対抗戦に参加してた私達はいち早く教えてもらったけど、さすがにないわ」
「そこは仕方がないだろ。俺達だって恩恵はもらっている」
さっきのハンネスとやらのことだろう。
「まあね。でも、ラ・フォルジュも自分の一族優先なわけだ」
「俺、裏口入学」
入学試験を受けてない。
「やっぱり……」
まあ、わかるよね。
ユイカもそうだし。
「ミシェル先生が赴任してきた時点でわかったことだろ」
フランクが苦笑いを浮かべながら言う。
「ええ。そして、今度はイヴェールのメラニー先生よ」
「会ったのか?」
「女子寮にいるのよ」
そうなんだ……
「ツカサの前で言いにくいが、あそこの両家はいつまで争ってんだろうな」
「知らない。意地になっているところもあると思うわよ。そのメラニー先生とミシェル先生は親しげに朝食を食べていたしね」
友達らしいからな。
「そこはあまり触れないでいただけると嬉しいですね。イヴェール派の私の意見です」
ノエルも苦笑いを浮かべた。
「そういやあんたもイヴェール派のくせにラ・フォルジュの双子と仲が良いわね」
「難しいところなんです」
「俺もシャルと仲が良いぞ」
勉強まで見てもらっている。
「あんたらが一番難しいわよ」
「ある意味で簡単ですけどね」
「答えは出てるもんな」
「楽しみだなー」
はいはい。
「ノエル、ユイカのテスト勉強は始めたのか?」
「今日からですね。ツカサさんも会長と勉強ですか?」
「そうなる。なあ、ウチの学校、テストが多すぎないか?」
「どこもこんなものでは?」
なんか学校らしいイベントが皆無なうえにテストばっかりな気がするんだよなー。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
今週は金曜日も投稿します。
よろしくお願いします!




