第220話 だって、ねー?
楽しい祝勝会を終えると、皆で片付けをし、解散となった。
とはいえ、隣の部屋からはイルメラの声が聞こえているため、まだ女性陣は残っていると思われる。
声の小さいユイカは知らない。
「えーっと……」
スマホを手に取り、シャルに電話する。
すると、1コールで呼び出し音が収まった。
『ツカサ?』
シャルだ。
「そうそう。大丈夫?」
『ええ。実はこっちもかけようと思っていたのよ』
だから1コールで出たわけね。
「人と会うっていうのは? ミシェルさんからメラニーさんって聞いたけど」
『それ。まあ、挨拶とか色々あるのよ、これも急に決まったことだから大変』
次期当主は大変だな。
現当主のユキも閉会式に出らずに帰ったが、人と会う約束があるって言ってたし、色々あるんだろうな。
あいつはそういった苦労を見せないタイプだし。
「お疲れ」
『どうも。祝勝会はどうなったの?』
「ウチで焼き肉。まあ、楽しかったよ」
『良かったわね。それで用件は?』
多分、シャルと同じだろうな。
「テストがあるんだって?」
『そうね。再来週から。私もその電話をしようと思ってた』
ほらね。
「助けてー。聞いてないよー」
シャルえもーん。
『私、言った記憶があるけどね。とにかく、明日、放課後にでも会いましょう。それまでにテストまでのスケジュールを決めておくから』
「せんせー」
『はいはい。昨日まではあんなに頼もしかったのにねぇ……』
「昨日までは情けないなと思っていたシャルが輝いて見えるぞ」
あんなに出ない出ないと駄々をこねていたというのに。
『電話だから見えないでしょ。ユキが移ってるわよ』
確かにユキの持ちネタだな。
「明日、どうすればいい? 俺は午前中で終わるんだけど?」
『それもそうね。じゃあ、こっちが終わったらそっちに行くわ』
あ、わざわざ来てくれるんだ。
「トウコの部屋から来られるぞ」
『それは嫌。見られたら何を言われるかわかんないし』
「トウコがラ・フォルジュだから?」
『いーえ、ロミジュリの方。最近、『ジュ、会長』って言われる』
ジュ会長。
「多分、ユキとユイカのせいじゃない? あの2人がずっとジュリエットって呼んでいた」
実は女子の間ではシャルはもうジュリエットとしか呼ばれていないと聞いたがな。
『ったく……本当に誰も私の名前を呼ばないじゃないの』
オスカーがいるから……
「まあまあ。会長は仕方がないだろ。じゃあ、明日、お願い」
『ええ。それと……いや、やっぱりいいわ』
ん?
「何?」
『いや、本当に何でもない』
気になる。
まさかシャルの誕生日か?
あ、でも、2月生まれだったはずだ。
メル友のメイドからそう聞いている。
「ふーん……まあいいや。一応、聞くんだけど、シャルはテスト、大丈夫なん?」
『それは大丈夫』
そうですか。
断言ですか。
「いつもすまないねー」
『全然いいわよ。じゃあ、明日ね。おやすみ』
「おやすみー」
スマホを切ると、やけに静かだなと思った。
「聞き耳立てんな」
そう言うと、扉の外からどたどたと音が聞こえ、隣の部屋が騒がしくなった。
「ハァ……勉強でもするか……」
そう言って、漫画を読みながら過ごし、1日を終えた。
翌日、いつものように朝早くに起きると、準備をし、寮の部屋を出る。
すると、休憩スペースにいつものようにフランクとセドリックが待ってくれていた。
「よう。1週間ぶり」
「ああ。おはよう。俺達は実家に帰ってたからな」
「ツカサは大変だったね。でもまあ、優勝おめでとう。メンツを聞いた時にさすがに勝てるだろうなって思ったけど、完全優勝でしょ? すごいよ」
良い奴ら。
「他の町の連中がやる気なさ過ぎてな。ウチの魔法大会の方がずっと歯ごたえがあったわ」
「そりゃお前が戦った相手はそうだろうよ」
「全員、選抜メンバーじゃん」
モブコンビ、かっこつけコンビ、お粗末チビコンビね。
「それにしても相手がねぇ……あ、いや、遅刻するから行くか」
俺達は1階に下りて寮を出ると、校舎に向かう。
先週までとは違い、多くの生徒達が歩いていた。
「しかし、トウコはバケモノだったな。とんでもない魔法だった」
「ツカサもヤバかったけどね。相手が可哀想って思っちゃったもん」
正直、差はかなりあったな。
悪くはないんだが、アーサーとヘンリーとどっこいどっこいって感じだった。
「お前ら、見てたんだな。他の連中もか?」
「見てるんじゃないか?」
「生徒だけじゃなく、魔法使いならほとんどが見たんじゃない? そして、ラ・フォルジュの強さを再認識したと思うよ。まあ、ちょっと違う方向だけども」
ラ・フォルジュって研究職の家らしいからな。
それなのに完全な武闘派。
トウコのせいだな。
「ラ・フォルジュというより長瀬が武家っぽいからなぁ」
子供の頃から武術を仕込まれたし。
「家の方向性が変わるのは他所の血を入れた時によくあることだよ」
「そんなもんか?」
「そうそう。早くツカサの子が見たいよ。きっととんでもなく頭が良くて、とんでもなく強い子が生まれるよ」
まだ見ぬ我が子はサラブレッドなの?
「アホなことを言うな、セドリック。そんなに良いとこどりの子供が生まれるならどこの家も苦労しないだろ」
「それもそうだね。実はウチの父親は結構強いんだけど、僕、こんなんだし」
お前はやる気を出せ。
まずはそこからだ。
「ところで、お前らは誰の子を想像してんだ?」
頭が良いのが俺じゃないことはわかる。
「いや、特に? なんとなくそう思っただけ」
「僕も」
嘘つけ。
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