35話
家族会議は3日程度行われ、王族以外以外が列席出来ない。その為、一時的にワープゾーンが作られ、初日の第一陣で移動しようと大勢の利用者が待っていた。
これだけ多いと紛れ込むのは簡単だろうが、よからぬ者たちもまた紛れ込むことだろう。
様子を見に来たハワードは安全に3人を移動させねばならない。
それと、もう一つやらなくては行けない事がある。
家族への根回しだ。
きっと、家族会議後にレングア男爵領の屋敷に使者が来て通達がくる。
その前に事の経緯を伝えるべきだと現レングア男爵として判断を下した。恐らく姉は両親と喧嘩し現在置かれている状況を説明していないだろう。
そもそも現状を理解しているとも思えないが。
昼頃、大量のドレスの対応に困っているロザリンドの元をハワードが訪れた。
「ハワード、貴方はどうするの?」
「先輩方と、姉さん達の護衛。だけど、僕達はすぐには事情があって行けないし、ちょっと待ってて。明日以降移動しよう。ごめんね、今日1日用事があるから。実家に行ってくるよ。ハリエット様に馬を借りようと思ってね。」
「お父様、元気かしら?でも私は帰らないわよ。ハワード。家族会議前には移動終わるわよね。」
「そうだね。ただ、名前が伏せられていたけれど王太子妃候補の一番怪しい人物になっているだろうから特に姉さんはダミーのダミーに見せるつもりでいてね。緊張してすぐにバレると思うし。」
それで、あの子は?と精霊の姿を探すフリをした。
ハワードには精霊が見えていない。
「肩に乗ってるの。」
「やっぱり見えない。」
「精霊は基本的に子供の頃にしか見えないって知っているでしょ?たまに例外があるくらいだって。」
「精霊が季節を進ませるのが常識だ。春が来ない理由に、きっとこの精霊が何かしらの鍵なんじゃなんて、ね。」
「鍵?」
「まだ小さいからだと思うけど。意思の疎通って出来ないんでしょ。」
「えぇ。お人形にしか見えないし話しかけてもこないわ。それよりも、あの件について調べてよ。」
「姉さん、姉さんが思う様な結果じゃ無いと思う。リストに載ってた貴族に共通点があるのがわかる?」
「元騎士の身分かつ、北部に領土を持っている子爵や男爵ばかり。」
くらいでしょ。他に何があるのよ。と苛立つ。
やっぱりか、とハワード。
「うん、最近思い出した。けど話して良いか相談したい。あと、姉さんの結婚の話もね。本来ならすぐにでも使者が来そうな話なんだけど事情も事情だし。家族会議で決定したら姉さんがたとえ了承しなくても当主権限でとなる可能性が高いから。作戦を練るよ。」
「は?」
どう言うこと?
私はまだ、そんなの決めてない。
どうして?と呟く。
「うん。姉さん、色々策に嵌められたのに。今までだったらどうしたら良いかうまく立ち回っていたのに。どうしたの?」
つまりはサインさえ貰えたらパトリック側としては充分だったと言う事だ。それがわかりロザリンドはしてやられたと落胆した。
「あぁぁぁ?!」
「そりゃ、嘘でもつくさ。」
「信じられない!」
「姉さんが純粋なんだろうね…パトリック様的には仮婚約の書類にサインさえしてもらえればこっちのもの。家族会議での決定は国王命令とほぼ同格なのは貴族いや国民の常識だよ。うっかり忘れてた?」
「いや、でも、ね。身分差は…?私男爵令嬢、許嫁との結婚を白紙になった問題ある女なのよ?」
ロザリンドは頭をふる。
「王妃様の時とほぼ同じさ。やれないことはない。あと、婚約が白紙になったのは全てあの男が原因なんだから。姉さんが不利になることはないはずだよ。」
「やりかねない?」
「姉さん、だから先に父さんたちに話をしに行こうと思う。俺が戻って来たら移動できるよう荷物をまとめてて。たぶん明日には移動出来るから。」
「どうしましょう。これ全て持って行けないわ。」
「じゃあ、小さくしよう。着る時には元に戻せば良いよ。」
「その時は宜しくね。」
ロザリンドは出来るだけ手荷物を少なくするためにこの1日を取捨選択するために費やす事にした。
その後ハワードは予定通り両親と再会しことの顛末を手短に伝えた。
母ドーシアはあらあらと言うだけ。
父ジュリアスははぁとだけ。
「まあ、なんとかなるさ。」
「そうね。ハリエット様には申し訳ないけど、良き方と縁が出来たのだもの。」
両親は特に反対するつもりはないらしい。
「アリエノールもじきに腹を括るさ。」
「ところで、ハワードあなたは?」
え。ハワードはとばっちりをうけた。
「許嫁もいない、浮いた話も聞こえてこないし。この際だから見合いでも。」
「上司からの紹介を受けて食事を何度か…」
なんとか誤魔化したハワードだか、母ドーシアは追撃をする。
「次会うまでに相手を決めてこないとこの見合いを受けなさい。」
ハワードに見合い相手の小さい肖像画と釣書を押し付けてきた。
「ドーシア、その辺にしなさい。学校を卒業し、立派に宮廷勤めをしているんだ。まだ若い。ハワードしっかり探してきなさい。」
「もう!」
「奥様、これはどうしましょう?」
メイドがタイミングよく入ってきた。
ドーシアがアリエノールがいてくればと言いながら部屋を出て行った。
「父さん、これ。」
「あぁ。あいつらのな。」
「受けるわけにはいかないね。」
パトリックが調べた通り、北の自治国の息のかかった貴族のようだ。彼らと繋がりができて仕舞えば国を裏切る事になる。
レングア男爵家はどの家よりも国王派を自他共に認める由緒正しい家だ。絶対裏切るなんて出来ない。
「母さんの実家は北派だったね…縁を切ったはずだけど。あ、姉さんが持ち出したあれ。たぶん、寄付のやつだよね。」
「当主以外が知ってはいけない、な。」
「どうするの?」
「今年で寄付は終わりだから。もうじき、自動的に次の家に移動する。」
「じゃあ、ただの寄付帳簿だっていえばいい?」
「そうだな。その程度ならな。深入りさせるなよ。」
「そうするよ。じゃ、戻るね。父さん達は来るの?」
「いや、行けそうにない。トーマス達に宜しくな。」
ジュリアスに行ってこいと背中を押されてハワードは宮廷へ戻って行った。
アリエノールはロザリンドが本来つけられるはずだった名前です。
家族や親しい友人は内々でアリエノールやアリーと呼んでます。
メイドも基本アリエノール様と呼んでます。
ロザリンド=アリエノールがレングア男爵家内では常識です。




