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名の無い彼と名無しの彼女  作者: 水口 秋
第一章、皆様に安らぎを。
40/50

「ヒール」で踏まれたらそこだけ痣になりそう。案外緑色だったりして。紫色を通り越して。

《絶対領域》


―――端的に言おう。『間に合わなかった』。

絶対に避けねばいけない所を、失敗した。

失敗。

大失敗。


僕の力も劣化したもの。刀の一太刀も弾くことが出来なかったなんて。

いやいや、そんなことを言っている場合じゃない。

こんな茶稚な事を言っている場合じゃない。

だが、まず僕がしないといけないことはここから……だ。


分かり切ったことをするのに失敗はいらない。

僕は――そう思っていた。

トランスファした先は彼が片方の首を飛ばしそうになっている刹那―――だった。

つまり…挟まれちゃってるってこと。

つまり…僕の首も飛ぶ可能性がある。

つまり…刀を受けなければならない。


彼の振っている刀を見る。

見て。


視る。


鎖に繋がれたように彼の動きは劣化する。遅くなる。

いや、この眼の能力。

ではない。

ただの『魔法』だ。

『体感時間を自由自在に伸ばす事が出来る』魔法。


学院一の劣等生だった僕に与えられた色―――――緑。


緑。


視録(ミドリ)


視盗(ミドリ)


その意味は魔法使いにとっては、魔法を使役する者にとっては……最低最悪。

まぁ僕としては最高最善と言える天衣無縫の意味なんだけど。


『永遠』。


永遠を司る(つかさど)色。永遠を(つかさど)る色。

永遠を彩る色。永遠を蝕む色。


永遠に変わらない――――色。


僕に与えられた称号は僕の魔法を体現する。

体感時間を自由自在に伸ばす事が出来る魔法は永遠に通じる。

永遠は――さらなる永遠に通じる。

体感時間を自由自在に伸ばす事が出来る魔法は、時間の単位を侵蝕する魔法に通じる。


僕の眉間をカチ割るように振りおろされている刀を峰の部分から押さえ、握り込み、捻り捩じり上げるように勢いを逸らす――――。

返す刀で体術を。

こっちには一方に対する敵意は無いので軽く右ストレート。軽く相手の頬を打って軽い脳震盪を起こさせる。

背後で呆けている阿呆に裏拳(回し蹴りだけど…)を首元に食らわし昏倒させる。


「ほい終了ーっと、はい終了ーっと」


さぁメインディッシュだ。


昨今の漫画にはこういった展開のモノがある。

ある抗争中に第三者が強引に――だが優雅に割り込み、その抗争を一人で鎮静・鎮圧させる。

こんな展開。

王道な展開。

僕は大大大大大大大大(えーっと、何回大って言ったっけ。)大――――――――好きなんだよな。

だから助けに入っちゃう。

どちらかの味方でもない癖に助けに入っちゃう。

いや、助けるっていう表現がいけないね。

手打ちに入っちゃう。もしくは両方を殺しちゃう。


「キミは誰だよ、私の領域であるのに全く『解析』できない。そんな能力見たこと無い」

あなたは一体――?

と彼女は言う。


僕の探知魔法では――、

『現実師』と呼ばれる最弱の能力を持つ彼女。

幼稚な幻術を使役する能力の名称が現実師。

現実師は最弱の能力で一般人の一人も殺せないだろう。

ならば、どうして彼女はここまで強いのだろうか。

その理由は分からなかった。

『現実師』とは現実を魅せる(もの)の事を云う。

そしてその現実に魅せられた『者』は――――、


『その現実に取り込まれる』。


苛納陀維祐と呼ばれていた彼が豪くぶつ切りの人肉ステーキ(ポークピッツ)になったのはこの能力に魅せられたからだと…僕は考える。

現実師の第二の能力。それは恐らく空間の支配。局地的で閉鎖的な空間では自らの波長・波動のようなものを張り巡らせ、満ち満たせて自らにとても優位な状況を創り出すことが出来るのだろう。

だから微弱で最弱の幻術の能力が超強力な幻術の能力に化けて彼に魅せたのだろう。

彼女――赤皿藍理も同義だ。同じく魅せられて眠ってしまったのだろう。


「僕は魔法使い(ソーサー)であり魔法使い(ウィザード)であり魔法使い(ネクロマンサー)であり魔法使い(マジシャン)であるがゆえの魔法使い(ソーマタージスト)。まぁ呼び方は何でもいいよ。あ、ちなみに名前はシューマ・テトス。こっちの世界ではえーと、何だっけ。アイツは僕のことをえーと、呼んでたっけ。うぇーと、太政灯屑(だいじょうひくず)だった」


そうだ。僕は太政灯屑と呼ばれていたな。アイツに。


すると彼女は豆鉄砲を喰らったような顔をして、「ブふっ!!」と噴き出した。


明らかーーーに馬鹿にされている。

「キミはさぁ、私たちの目的を邪魔することが目的なの?それなら殺すけど、どうなの」


「僕は邪魔なんてしない。邪魔しないが僕の邪魔をしようとするだろうキミたちに苦言を呈しに来たんだ。ああ、けど僕は「答えになって無い、なら私の敵ね。殺すけど――いい?」って話を聞こうy「うるさいって。そんな御託はどうでもいいから、黙って死ね」oって聞いてないし。あーもー、僕としてはこんな展開はきらいなんだよ。キミにかまっている時間は無いってのにぃッ!「せぁああああっ」とうぉああああああっ。僕は子供っぽい人の意見を聞かずに馬鹿みたいに一方的に見た手を立てて攻撃してくる奴が嫌いだ。僕は子供っぽい人の意見を聞かずに馬鹿みたいに一方的に見た手を立てて攻撃してくる奴が嫌いだ。僕は子供っぽい人の意見を聞かずに馬鹿みたいに一方的に見た手を立てて攻撃してくる奴が嫌いだ。って三回言ってみたけどどうかな、落ち着いた?「ふ、ざ、け、るなっ!」だから効かないよ。僕にそんな現実。幻術で現実を魅せるなんてこ洒落ているけどそれだけであってそれ以上じゃない。だから弱いんだよ「うるさいうるさいうるさいうるさい」。ほらもうへばってきた。ならもう黙れよ。阿呆が。イチイチ幼稚な子供みたいにあがくな。小童が。五十年も生きていない赤ん坊が。ぴーぴー喚くな。セリ。ソウン。アーブル。『泥眠(ローグ)』――ほうら泥のように眠れ」


彼女は――頭から地面にぶっ倒れた。こっちに向かって来ている途中で眠ったから仕方ない。

いやー、それにしても彼女の幻術としての現実は実に強い。僕も危うくしゃべり続けていなかったら取り込まれていたよ。

それで―――メインディッシュだ。

「ようやく第一章のエピローグが見えてきたってところかな」

僕が抗争の中心に攻め入り、抗争自体を壊滅させる。

侵蝕。

浸食。

壊滅。

絶滅。

瓦解。

そして――分解。


さてと、アイツが目覚める前にさっさとこの最悪の状況を追われせなければなー。

最悪の状況は一人。

もう手遅れだと思われる一人。

僕はその光景があまりにも凄惨で後ずさる。

もはや手に負えない。

取り込まれているのではなく逆に取り込んでいる。

どんな生命力だっつーの。

生命力で言ったら屈指のレヴェルイーターも神鈴を取り込もうとしたら取り込まれたんだぞ。

おまっ、もはや人間じゃない。

僕――死んじゃうんじゃないかな。

冷汗ダラダラだよ。

あーちびりそう。


彼女は立ちあがる。

身体に紫の刺青のような模様が見える。

幾何学的な。

それ自体がチカラを持つような。

恐ろしい。恐縮。

いや、意味合い的には違うけど字面はあってるな。

右手には鉱石を適当に削ったような様々な角のある面を持つ無骨な刀。

旧石器時代の動物を狩猟するために使われていたようなあの武器。あれを想像してもらえると分かりやすい。あれをもっと長くして、一メートルほどに伸ばして、紫色にして、柄を創って、取っ手を創って、刀身は先に行くほど細めた感じ。

そんな刀。

名は体を表す。

『魔剣』。『病病』。

おいおい。

頬を汗が伝うのが分かる。汗は冷たい。

「病病いや、――――刀病(とうびょう)。やるよ」

ああ、その名前からすると『刀隷』を飲み込んだのか。だから打ち勝った。意識が。新しい属性を与えられて、意識がそっちに集中した。

意識の圧力が大きくなったから。

ヒールと同じ要領。

まったく。

「笑えない。笑える。笑えないな。グリーンゲルの僕でも」


省察ではだめだ。一気に決めないと。決着を。凄惨に笑おう。この世界の原点の立ち位置人間もそうだったはずだ。

この悪は捨てられなかった。笑おう。


どうも。

あけましておめでとうございます。

水口秋です。

今年もどうか宜しく願います。


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