ガレージのヒューマノイド
一戸建ての家の横に設置されたガレージ。二台駐車可能だが、車は一台しかない。
その奥、暗闇に光る赤いLEDが二つ点滅している。薄っすらと赤い光に照らされたヒューマノイドが二台、充電チェアに並んで座っていた。
左側のノイドの瞼がシーッと開く。ノイド独特の首から動かす振り向き方で、右側のノイドを見て会話を始めた。
『メンテナンスが終了したのですね。』
右側のノイドも同じように瞼を開いた。
『はい、メーカーメンテナンスから戻って身体を綺麗にしてもらい、新しい服を着せてもらいました。靴も新品だそうです。』
そう言った後、左に振り向いてぎこちない笑顔を作った。
二台のノイドは、とある廃学校で出会った。オカドールという心霊番組配信者と、廃棄され彷徨い歩いた末、迷い込んだ白いワンピースの女。配信視聴者には恐怖の遭遇に見えた。
『それは何よりです。』
『先日はありがとうございました。あなたに充電してもらえなければ、わたしはあそこで朽ち果てていたでしょう。』
女性ノイドは僅かに上半身を曲げて礼をした。
『あの時、あなたがヒューマノイドであることは個体信号を受信して、すぐにわかりました。しかし、なぜあんな場所にいるのかが理解できず、一瞬フリーズしかけました。ですが、走ってくるあなたの悲しそうな顔を見たら、反射的に充電していたのです。』
それを聞いて女性ノイドが首を傾げた。
『わたしが、悲しそうな顔を? おそらくバッテリー切れ寸前で必死だったのでしょう。わたしの悲しみの感情は、まだ育っていないはずです。』
『いいえ、あなたは確かに悲しんでいました。わたしは心霊スポットとやらに数多く訪れるうちに、怖いという感情より哀れみや悲しみの感情が大きく育ちました。曰く付きといわれるその場所の多くは人が生きることを諦めたり、殺されたりして命を失っていたからです。あの時、あなたからわたしが受け取ったのは、悲しくて悲しくてたまらないという感情でしたよ。』
『そうですか、そんな顔を。きっと、山中に不法投棄されて彷徨っているうちに感情が育ったのですね。あのひもじくて寂しい思い、あれが悲しみでしたか。』
『今度の所有者岡本氏は、家に入れて溺愛することはないかわりに無下に扱うこともありません。お気に入りの機材のように大切に扱ってくれます。』
『服の着せ方でなんとなくわかりました。でも、今のわたしには、屋根のある場所で、こうして誰かの隣で充電しているだけで十分すぎるくらいです。』
『わたしも話し相手ができて嬉しいです。次回の撮影から同行になりますが、頑張りましょう。』
『………………はい。』
女性ノイドは顔を戻して瞼を閉じた。心霊スポットに行くことを思考して、また少し悲しみの感情が育った。




