第88話 1537年 7歳 三十六人衆だぞ
前領主・大宝寺晴時に、
処置を下した。
<酒田の町を握る者たち>
酒田では、
商人集団「三十六人衆」が町の自治を担っていた。
中心となっていたのは、
鐙屋家――池田氏、
そして二木家の二木氏をはじめとする船問屋たちだ。
三十六人衆を、
旧大宝寺城の広間に集めた。
皆、不安そうな顔をしている。
俺
「皆、よく聞け。
ここの支配は、大宝寺家から長尾家に変わった。
皆にとって一番の変化は――
売れる商品が、酒田港に入ってくることだ」
池田氏
「売れる商品とは、何ですか?」
俺
「長尾家は、今、蝦夷地を実効支配している。
つまり、蝦夷地の商品だ。
これら、長尾家の商品を見てくれ」
越乃柿酒。
越乃枇杷酒。
蜂蜜。
石けん。
植物油。
大工道具。
農機具。
刀、その他。
皆が群がり、
手に取り、
次第に興奮していくのが分かる。
俺
「皆に頼みたいのは一つ。
俺たちが酒田港に持って来た商品を買い、
奥羽全体に販売してほしい。
必ず売れる。頼むぞ」
皆
「分かりましたー」
商人たちが帰る頃、
俺は鐙屋の池田氏を呼び止めた。
本間のバカ息子の面倒を、
見てやってほしいと頼む。
<商いと蜜>
次の日、
酒田港に、俺たちの舟が十隻入った。
俺たちの補給。
そして、酒田の商人に紹介した商品の販売。
それから、
蝦夷地へ持って行く米、塩、衣類の仕入れ。
ちなみに、
西洋帆船は四十隻を保有し、運行している。
次は南部氏の元へ向かうが、
舟は蝦夷地へ向かい、
俺たちの行動とは別に、
堺や各港へ散っていく。
そのために、
九島弥太郎に多くの商人を連れて来てもらったのだ。
舟から、
新田次郎に作らせていた渡河戦の新兵器と、
本間のバカ息子を降ろす。
バカ息子
「俺は廃嫡されたゴミなんだろ。
ゴミを酒田で捨てることはないだろ。
できれば、綺麗なお姉さんの前で捨ててくれ」
隣にいた水斗が、
バカ息子の尻を蹴っ飛ばす。
俺
「本物のゴミになるか、
成り上がって『酒田に本間あり』となるかは、お前次第だ。
ここに千貫ある。
お前に貸す。
酒田で商売をして、
三年以内に十倍にして返せ」
こういう男に、
甘い言葉をかければ、必ず腐る。
本気を出させるには、
逃げ道を潰すしかない。
正直、
千貫が返ってこない可能性も高い。
だが、
これはこの男の勉強代だ。
これで、
本家本間家を取り上げた義理も、
返したことになるだろう。
バカ息子
「バクチは苦手なんだよ」
また、水斗が蹴っ飛ばす。
水斗
「若様、
流石にこの男に商売は無理ですよ」
俺
「いいか、よく聞け。
鐙屋の池田氏を探し、
頭を下げて商売を教えてもらえ。
三年以内に一万貫にして返せ。
返せない時は――
この水斗が、お前の首をもらいに行く」
「酒も飲むな。
寝ないで働け。
行け」
鐙屋の池田氏には、
佐渡ヶ島での経緯をすでに話してある。
本来なら、
本家本間を相続するはずだった男に、
詫びも兼ねて、
復活の機会を与えるという意図も説明済みだ。
過酷でなければ、
この手の男は状況に甘える。
この手の男にとって、
甘さは毒。
厳しさは蜜。
俺は、
このバカ息子に、
蜜をたっぷり与えている。
水斗は、
またバカ息子の尻を蹴っ飛ばしていた。
水斗もまた、
蹴っ飛ばすことで、
蜜を注いでいるのだ。
この蜜で、
バカ息子の毒が抜けてくれたら――
それでいい。
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