第78話 1536年 6歳 急報だぞ
前回、
飛び加藤に
「軒猿を抜けて、飛猿を作れ」
と指示しました。
季節は冬。
直江津は海の近くとはいえ、
一面に雪が積もり――
場所によっては一メートルほどにもなっていた。
俺は作戦室にいた。
地図、資料、兵站表。
すぐ参照でき、
多人数が腰を落ち着けて議論できる部屋だ。
来年春の遠征について、
俺、雷蔵、胤嵐、風馬、水斗。
そして当然、安田も同席している。
まだ戦は遠い。
そう、誰もが思っていた――
その時だ。
扉が勢いよく開いた。
飛猿の加藤が、
雪を払う間もなく飛び込んで来る。
加藤
「失礼します!」
一瞬で空気が変わった。
加藤
「ただ今、春日山城が――
上条定憲、竹俣清綱、色部勝長、中条藤資。
揚北衆連合による反乱を受けています」
上条定憲とは母方の祖父上杉定実の弟だ。
前々から反乱の噂のあった人物だ。
揚北衆は、長尾為景が越後を強権的に統一し、
国人衆の既得権と自立性を奪ったことに反発して挙兵したのだろう。
加藤
「兵数、合計八千。
現在、春日山城を襲撃中です」
俺
「……祖父は無事か」
加藤
「門はまだ破られていません。
現在、交戦中です」
最悪ではない。
だが、猶予もない。
俺
「連絡が遅いぞ、加藤」
部屋の空気が一段冷えた。
俺
「攻撃される前に知らせるのが、
忍びの役目だろう」
加藤
「……申し訳ありません」
俺
「――だが、今は責めん」
俺は立ち上がる。
俺
「皆の者、すぐ出るぞ」
即断。
誰一人、異を唱えない。
まず赤目を先行偵察に走らせる。
敵の動き、布陣、進路。
一刻でも早く掴むためだ。
加藤率いる飛猿には、
四天王と安田実秀への連絡任務を与えた。
春日山城が攻められている。
この事実を、
一刻も早く越後全体に伝える必要がある。
俺達は三十分ほどで出発した。
動員兵力は――
重装歩兵、三千。
軽騎兵、五百。
騎馬は、五百頭しかいない。
軽騎兵は、
邸宅から徒歩二十分ほどの距離にある牧場へ向かい、
各自、自分の馬を引き出す必要があった。
いくら屋敷が東京ドーム半分の広さとはいえ、
馬を二千頭も飼えるわけがない。
そのため、
近隣に牧場を設け、
そこで一括管理している。
軽装騎兵千五百は、
後から追いつく予定だ。
――雪。
反乱。
八千の敵。
条件は最悪に近い。
だが――
春日山城は、落とさせない。
ここで止める。
必ず、だ。
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