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97 トムスカナ伯爵家の処遇3

部屋に入ると早速聴取を始めた。

まず、地図を出して何処にどのような魔獣が出てどのくらいの被害があったか、把握している限りを記入していく。Sランクが初めて目撃されたのは、私が最初に駆け付けた場所だった。あれだけ大きなものがいきなり現れるなんてどう考えても変だ。そう言えば魔蜘蛛も突然現れたように見えた。何かがあるのだろうが全く原因が分からない。なので原因はさておき被害の把握に努めることにした。


Sランクの被害は甚大だった。体が大きいので移動するだけで建物が壊れて中にいた人が圧死している。地下に逃げ込んだ人は命は無事だけど、上に崩壊した建物がのって出られなくなっているようだ。しかし、意外にも捕食された人は現時点で調べた限りはいなかった。最初に現れた場所から脇目もふらず移動していたらしい。最初の食事があの山の中腹に置かれた家畜たちだったようだ。

変ね、最初に見た時は人を襲って食べる気満々に見えたけど‥‥?

そう言えば、討伐許可がおりなかったから、最後に魔力を込めて睨みつけたわね。Sランクは急に方向を変えて市街地の方に逃げて行ったけど、そのまま逃走を続けて行ったってこと?

地図で表されたSランクの経路を見るとどうやらそのようだ。‥‥これはどう考えるべきかしら。私にも責任があると言うことかしら?でも、あの時討伐許可を貰えていれば討伐したわよ。許可のないものを討伐していちゃもんつけられたら嫌だもの、そういうルールだし。でも人道的に見るとあそこで討伐しておくべきだった?でも許可を出さないのが自分たちで討伐出来ると思っての事だったら余計なお世話になるのよね~。神様、どうしよう、私も罪人ですか?

私がうーん、と悩んでいるとキースがどうしたのか訊いてきた。

「ここで討伐していたらこの経路の方々の被害がなかったと思うと、許可がなくても討伐するべきだったのかと‥‥」

キースは首を振った。

「メリアージュ嬢、それは結果論だよ。メリアージュ嬢が被害に遭われた方々を悼む気持ちは分かるけど、許可がおりなかった時点で討伐を止めるのはそう取り決められているから当然だ。許可をおろさなかった側に討伐の権利と義務と責任があるんだ」

キースが言うと伯爵も、

「仰る通りです。許可が出ないのに討伐する方が問題です。これは長年の色々ないざこざを鑑みて作られたルールなのです。ルールを遵守したことで悩まれることはないのです。その責めを負うのも罪の意識に囚われるのも貴女ではなくタクエンであるべきなのです。それと騎士団管理に任命してしまった私であるべきなのです」

と明言した。部屋の隅に転がしてある罪人を見ると、意外なことを聞いた、って感じで目を見開いている。本当に何も分かってないようだ。もしかして、討伐に関するこういうルールすら知らなかったのではないだろうか。

「そうですわね、分かりました。被害の大きさに動揺してしまったようです。ご助言に感謝します」

私はキースと伯爵を見て言った。伯爵は自分に責任があると言える人なのね。


地図を見ながらどの魔獣が何処でどれくらいの被害を与えて誰が討伐したのかも記入していると、若様団長が「皮の硬いワニみたいなBランクと、悪賢い猿型のAランクは仮面の騎士が討伐してくれた。でも場所が分からない」

と言った。

確かに場所は言ってなかった。聞かれても分からないけどね。

「それから私たちが追っていた空に浮かぶAランクと、番だとSランクに近いAランクで、単体だとAランクの2体も仮面の騎士が討伐してくれた。私たちは一体づつに引き離しはしたがその後は劣勢だったり膠着していたりしたんだ」

と報告した。ジムスが、

「サン兄いいな、俺も仮面の騎士の討伐が見たかった。噂通り本当に強いのか?」

と聞いた。若様団長は目をキラキラさせて握り拳を作った。

「強いなんてもんじゃない。圧勝だ。瞬殺だ。

番のAランクは一体は顎を蹴り上げて、もう一体はジャンプして上から蹴りつけての一撃で終わった。

空に浮かぶAランクは脚だけ攻撃すると逃げられるからとわざと捕まって天空で攻撃。高過ぎてよく見えなかったが、魔力の大暴発みたいなのが天空で起きて、地上までビリビリとした振動が伝わってきた。その後、Aランクは真っ逆さまに墜ちてきたが、仮面の騎士はこう、フワッとスタッと着地して余裕綽々だった。ああいうのをヒーローと言うんだろう」

と熱弁した。それを聞いたキースが口を挟んで、

「確かに仮面の騎士は強いようだ。でも、ヒーローというなら、Sランクを一撃で倒した人だと思う。あの凶暴なSランクが瞬殺だった」

と主張した。キース、討伐の瞬間を見ていたのか‥‥。

「ほう、Sランクの討伐も瞬殺だったのか。世の中には強い人が他にもいるのだな。是非一度稽古をつけて頂きたいが」

と言って若様団長が私を見た。私は、

「すみません、あの人はシャイで人付き合いが苦手なのです。素性を誰にも言わない約束で協力して頂いているのです」

と断った。

「そうか、それは残念だ‥‥。

仮面の騎士にも弟子にして欲しいと言ったが断られてしまった。でもせめて鍛錬の内容を教えて欲しいと頼んだら後日送ってくれることになったのだ。そして、都合がつけば一度だけだが実演してもらえるのだぞ」

と目をキラキラさせて言った。

「いいなー、サン兄。仮面の騎士が俺の居る時に来てくれればいいけど。

そう言えば騎士団には連絡したけど、俺も帰る途中で討伐した。首が3つある犬みたいなやつと、腕がびろーんと伸びてくるやつ。3つ首があるやつを討伐しているとき、誰かに加勢がいるか訊かれたんだよね。討伐したら騎士団に連絡して欲しいとわざわざ言われたから、多分この領の人じゃないか新人だと思ったよ。俺のこと知らなかったからね」

‥‥あの時討伐していたのはジムスだったのか。斜め後ろからだったからきちんと顔を見てなかったよ。



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