96 トムスカナ伯爵家の処遇2
ふと気付くとトムスカナ伯爵家一同の端に芋虫のようにぐるぐる巻きにされた囮男が転がっていた。ご丁寧に猿轡も噛ませてある。まぁ、罪人として相応しい扱いよね。あるいはこれ以上の失態をせずに済むように身も口も封じたと考えればお情けの方かもね。
私が目を留めたのに気付いた伯爵が、
「お見苦しくお思いでしょうが、既に有罪が確定している罪人ですので、このような形での参加にさせて頂きました」
と言うので、
「分かりました。それで構いません。貴族籍は剥奪しましたか?」
「今朝、申し出て受理されました」
私は頷いて了承した。
「それでは、今回神子のご指示により、何故か、皆様の処遇を決めることになりましたメイジー侯爵家のメリアージュと申します。エムエム商会の会長をしております」
私は、何故か、を凄く強調して言ってみた。いや、本当に、何で私が処遇を決めるの??って思ってる。
「魔獣被害を拡大させた原因であるそこの罪人及び関係者であるトムスカナ伯爵家及びバサト子爵家、他に責任があると思われる者が裁決対象となります。
こちらは立ち会いをしていただくことになったワイマール伯爵家のキース様です。王子側近候補でいらっしゃいます」
そこでキースが、
「こんにちは。立ち会いを務めるワイマール伯爵家のキースです。
メリアージュ嬢は王子妃候補でもあるのでそれも御承知おきいただきたい」
と追加してくれた。
あ、自己紹介に入れるの忘れてたわ。婚活中だと曲解されてしまうことがあるから気を付けないと。私はキースに感謝の眼差しを送った。
「それでは小さなお子さんや妊婦さんもいらっしゃるので、座れる所に行きましょう。領内の状況等お聞きしてから最終的な処遇を決めたいと思います」
「その前に一つ良いでしょうか?」
若様団長が言うので頷いた。
「どうぞ」
「先程は失礼をして申し訳ありませんでした」
と頭を下げる。
はて、何を謝られているのかしら?突然やって来て会話相手を持ち上げて振り回したことかしら?と首を傾げているとジムスまで、
「私こそ大変失礼いたしました。トムスカナを救っていただいたと言っても過言でない方に対して、恩を仇で返すような態度をとってしまいました」
と深く頭を下げた。
なんだかトムスカナ伯爵家には頭を下げられてばかりだわ。私は苦笑した。
「先程の件については処遇に反映するつもりはないのでご安心ください。あくまでも魔獣の大群及びSランク討伐について責任ある者としての判断や行動が対象となります」
そう言うと若様団長は、
「あ、いや、それを心配して言っているのではありません。先程は遠目で見ても弟が苦悩しているように見えたのでわざと割って入ったのです。てっきりあなた方が弟に何らかの害をなしたのだと思っていたら、むしろ逆に言い掛かりをつけた方だったようなので次に会うことがあれば謝罪するつもりだったのです。このまま話が進むとその機会がなくなりそうだったので」
と慌てたように弁明した。
あら、そうだったのね。久々に弟に会えてはしゃいでる大きな犬のように思っていたわ。‥‥私も大概失礼な感想よね。
「分かりました。謝罪を受け入れます」
私が言うと若様団長はほっとした顔付きになった。ジムスを見るとまだ頭を下げていた。
「そちらの方もこれ以上の謝罪は不要です。ただ先程も言いましたが、後で理由を教えてください」
ジムスは顔を上げると神妙に頷いた。
神殿側に用意してもらった別室に移動して、被害の状態や魔獣がどのくらい討伐されたのかを聴取することになっている。
移動の時に私は若奥様に話し掛けた。大きなお腹で無理をしていないか気になった。
「もう大分大きく見えますが、何ヵ月ですか?」
「今8ヶ月です。もう少しで9ヶ月になります」
「そうですの?てっきり臨月だと思っておりました」
「確かに上の子の時はこれくらいの大きさで臨月でしたわ。子供も3人目になるとお腹の伸びがいいらしくて。前の二人によって伸ばされているからか大きくなりやすいようです」
「まぁ、そうなんですね」
うーん、一度膨らませた風船の方が膨らみやすいのと同じ原理かな?
二人で話していると奥様も加わった。
「私も4人産みましたけど、後の子の方がお腹が大きくなりましたわ。ジムスの時は双子と疑われる位でしたのよ」
「まぁ、それはさぞ大きな赤ちゃんだったのでしょうね」
「そうなんです。大きかったものだから産むのが大変で。死ぬかと思いました。まぁ出産はどれも大変なんですけどね」
話している内に聴取する部屋に着いた。聴取の間、子供たちは別室でお世話してくれる人と待機だ。
私は若奥様に、
「くれぐれも無理はなさらないでくださいね。調子が悪くなりそうなら遠慮なく別室に行ってください」
と言っておいた。そうは言ってもこういう場合、無理をするかもなぁ。長引くようなら途中で休憩を入れよう。
そう思いながら部屋に入った。




