tame7 牧場
村に帰ってくると再びあの大きな家に通される、さっきと違うのは戦って気絶させてたコボルトやウェアウルフまで来ていることだ、ここに最初からいたミノタウロスを合わせたら総勢200を超える魔物がここに集まっている。
「なんか押しかけたみたいになって悪い……」
「いやー! 一気に大所帯になりましたなぁ!」
気まずくなって大将に謝ると、こいつは笑って許してくれた(?)みたいだ。
「で、報酬とか言ってたけどなんかくれんの大将?」
正直、経験値以外あまり期待してなかったからこの話はおいしい。
「この土地と私らでどうでしょうか?」
「は?」
いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って
「大将が仲間になってくれるのは強い前衛が増えるって意味では滅茶苦茶ありがたいよ、ただ『ら』って? 土地って?」
「『ら』っていうのは勿論私を含めたミノタウロス一族のことです、土地と言うのもこの森一帯のことです。テイマーというのは『牧場』という私有地を持つと聞きましたので」
うーん、聞き間違いじゃないし牧場ってなんだ? ヘルプに書いてあるかなと思いヘルプを開くと
【テイマーの牧場について
牧場はインベントリに召喚し切れなくなったファミリアを放しておく場所になります。また、ファミリアは種族によって得意なギャザリング、クラフティングスキルが存在し、微量ながら経験値とIGを獲得できます。
※牧場の獲得、拡張には多大な資金や多くのクエストをこなす必要がありますのでご利用は計画的に。
】
ギャザクラスキルはプレイヤーと同じスキルって所かな? 俺はまだ触れてないけどスキルにはその内手を出したい。
「内容は分かった、ただあの程度でここまで払う価値があるのか?」
「そうですね……疑問を持たれるのは当然かと思いますがここからは」
「小生から説明致します」
新しい女性っぽい声が聞こえたと思えば大将の右に座っていたやや大きいコボルトだ。
「此度、あなた方が現れなければ小生らコボルト一族はヴァルガの手先となっていたでしょう、コボルト一族を含めこの森に住まうものは極力人間と争うのは避けたいのです。」
ふむ、つまりここら一帯を俺の牧場、ということにしてしまえば無理に人と戦う必要が無くなるという事か。ただ
「抑止力NPCも言ってたけど結局ヴァルガっていうのが分からないんだよなぁ」
「伝承で良いなら……」
と口を開くさっきと同じコボルト
「ヴァルガ、その起源はとある人間の男と女の悲恋から始まったと言われています。イデアであった男ですね、と女は恋に落ちて仲睦まじく暮らしていたと聞きます。」
ここまではまだ幸せな話だ
「ですが、その男に恋心を寄せていたある国の女王がその女と二人の間に産まれた子とその女を暗殺してしまいました、結果はご察しの通りです。」
「男が怒りに任せて暴走して、ヴァルガって呼ばれるのになったってことか?」
「そうですね、その後は彼女の愛が欲しいが愛が欲しいに変わり、愛が欲しいが女が欲しいに変わり、そこからどんどん人間でも生物でもない『欲の塊』になったと聞きます」
なるほどなぁ……それを抑えるのが抑止力NPCの役割でもある……か。て言うか
「どこでも化け物を倒すのも作るのも人間なんかねえ……」
やだやだ、ホント人間て自分勝手
「本題に繋がりますが、ヴァルガに自らの身を好き放題されるなら、少しでも小生らの事を考えていただける者に付こう、というのがこの森に住まう魔物の総意なのです。」
「そういうことね」
納得がいった、それなら……
「人使い荒いぞ俺は……?」
何とか下衆っぽい表情を作って軽く脅してみるが
「ミノタウロス一族、覚悟はできております」
「コボルト一族、ミノタウロス一族と同じく貴方に身を捧げる覚悟はできております」
「マスター、俺っち以外のウェアウルフのほぼ全員もマスターに付いて行くと」
最後は外から聞こえた、窓から覗き込んでたロボの声か。っていうか
「ロボ、お前族長だったの?」
「あー……そのついさっきそう決まりまして……」
随分急だなおい、いやでも動物的に考えれば普通の考えか?
「はぁ……分かった」
俺も決心しなくちゃいけない
「今日から全員俺のファミリア……家族だ! まずはここら一帯を全員で住めるようにしたい、頼めるか? 俺はドラゴニア、呼ぶ時はニアでいい、気が退けるならロボやティアみたいにマスターとか主人とでも呼んでくれ」
「「はっ」」
首を下げられるところまで下げる大将、片膝をついてから頭を下げるコボルトの族長(?)。
……なんだろうなぁこのアクションゲーの中一人だけ兵站ゲーし始めた子の感じ
※※※
そこから暫くはひたすらモノ作りに明け暮れた。
コボルト達が各種族ごとの住む家を作り、道を分かりやすくするために木を切ってはミノタウロス族がそれを加工してそれを埋めて道にした。ウェアウルフ達は竪穴が良いとのことなので木を切って開いた土地に大きな竪穴を掘ってその中を蟻の巣みたいに思い思いの大きさに掘って彼らの住処にした。
続いてはクラフティング、これに関してはミノタウロスは幅広く活躍してくれた。伐採から土木と建築関係が得意だと分かった、主に土木関連の仕事をしてもらう事にした。
コボルトはミノタウロスより力が無い分、皆が使った道具のメンテナンスや家具作り、要は細かい作業の方面が得意だったので鍛冶屋や家具屋、服飾屋を勧めてみた。今はまだ他人に売れるようなものじゃないけど近いうちに良いものができそう
ウェアウルフは当然のことながら狩り、それと意外なことに植樹ができたのでそっち方面を任せることにした。
それから大体一か月後の事……
「……」
「ご主人……?」
開いた口が塞がらない、なんせ自分の牧場……というより村にかなりのNPC、プレイヤーが出入りするようになった上に俺はほとんどゲームをすることなく折り返し地点ちょいすぎの20と書かれていたレベル欄も58に到達、所持金は80m……つ8000万を超えていた……
「なにこのヌルゲー……」
メンテナンスしてればレベルが上がる、こんな楽なレベリング他に知らない……