tame14 カトル・ダン・スカー
前回に引き続きルー視点
抑止力NPC、カトル。
この世界の伝説的な設定では「最初にこの世界へ渡ってきた日本人」であり、「その拳の一撃で、あらゆる理を粉砕する」と、全抑止力NPCの中でも唯一、戦闘スタイルが明記されている規格外の人物だ。
……けれど、実際に目の前で龍を組み伏せている彼の様子は、英雄というよりは、暴れ馬を必死に手懐ける荒くれ者のように見えた。
「わりぃけどこいつ止めるの手伝ってくれ!!」
彼が抑えている龍の名前を見ると
彼が全力で押さえ込んでいる龍の頭部に表示されたネームタグを見る。
『地の神:ウリエル(Lv.100)』。
名前の通りなら、この世界に豊かな実りと加護を授けている最高位の神様の一柱だ。けれど、今のウリエルの様子は明らかに異常だった。瞳はどす黒く濁り、口からは魔力でもない制御不能な残滓が漏れ出している。完全に暴走状態だ。
(……待って、ニア君たちは大丈夫なの? あんな化け物の至近距離にニア君が来たら、ワンパンで……)
……ちょっと心配
「分かりました、何をすれば!!」
「こいつの背中に変なものが付いてないかを見て欲しい、多分そこに暴走してる原因がある!!」
だったら見るしかない、背後に回って尻尾から背に登る。
――――尻尾には見当たらない、背中は……見当たらない!? 翼は激しく暴れてて良く見えない……
「あったか!?」
「背中にもありません!! 」
「後は翼か、体内か……」
僅かに舌打ちした音が聞こえる、余程悔しいのかもしれない。そんな彼の心なんて知らんと言わんばかりにウリエルが暴れだす。
「わりぃウリ坊!! 耐えてくれよ!!」
「わりぃウリ坊!! ……大人しく耐えてくれよ!!」
カトルさんが龍の角から手を離したかと思うと、反撃の間も与えず、そのまま巨大な龍の首を掴んで、大空洞の壁へと力任せに投げ飛ばした。
ドォォォォンッ!! という衝撃音とともにウリエルのHPが三分の一削れる。
「……」
姉御さんは開いた口が塞がらない様子、それもそうだ、神を投げ飛ばしたということより自身の何十倍もある相手を易々と投げてしまえる人間が目の前にいるのだから。
(STRどれだけあるのかしら……)
なんて一瞬考えさせられてしまう。
「今だ!! 左翼を確認してくれ」
――――ごめんね と内心で思いながらレーヴァテインを翼に突き刺して固定する。
しかし、おかしいものはない、もう片方――!!
「……右翼も……見当たりません」
見つからない、一体どこに……
「……」
カトルさんの表情から余裕が消えつつある。体内なんて確認する前に噛み砕かれそうだ。このままじゃ、彼がその拳で龍を"殴り殺す"という最悪の選択肢を選ばざるを得なくなるかもしれない。
――――せめてもう一人、ニア君がいればどうにかなるかもしれない、けど
「ティア!! 口をこじ開けろぞ!!」
「はい!!」
なんて思ってたら本当に来てくれた……。




