Ex 明日ありと思う命の仇桜
――――ここはどこだ?
確かに俺はゲームからログアウトしてリアルのベッドで横になって寝たはずだ、だが意識はハッキリしているし体も自由に動かせる。
(明晰夢(めいせきむ)って奴か?)
今は俺がいると思われるのはどこかの森の中だ、しかし激しく降っている雨のせいで良く見えない……
「あの日、あの光景を見たから思う……いや、作ってしまったからこそ思う」
不意に聞こえたのはそんな声、後ろを振り返ると
(ソレイユ!?)
金髪のツンツンヘア、右目の眼帯にあのマフラーは見間違えるはずもない、ソレイユ本人だ。
しかし、彼から俺は見えていないのか? 彼はずっと空を睨んでいる。
俺もその方向を見ると……
(なんだよアレ……)
雨でよくわからないが巨大な物体があることはわかった、しかもそれが生きている……?
「俺は人に、泣くより笑って生きて欲しいと」
目が慣れてきたせいかその物体の正体が分かってくる、巨大な鉄人形……ゲームでいうならアイアンゴレームと言えるだろう、見ただけでも100mは超えていることが分かる。
……しかもそれが視認できる範囲でも六体もいる
ソレイユの持っている武器はルーさんが使っている双剣ではない真っ白なロングソード、しかしただのロングソードではないのは雰囲気で分かるが、こんなのを相手するのには無謀にも程がある。
「人の生活が続いてほしい、笑いが続いて欲しい」
……呟いている言葉はなにかの詠唱か?
『待って光輝! それだけは止めて! もう貴方の体は貴方自身の本気に耐えられない!!』
不意に聞こえたのは女の声、よく見たら彼は小さいインカムを付けている、そこから漏れたのか? だとしたらすごい剣幕だが……光輝? ソレイユの本名か?
「だからこそ、ここで終わらせる。ひっくり返すだけではなく、幕を引く!!」
(これはダメだ……)
止めないと思った、説明はできそうにない。けれど止めないときっと大勢の人が悲しむような気がした
「悪い美夏」
そう呟いたソレイユはインカムを取って握りつぶしてしまった。
「明日ありと思う命、絶対に……嵐に吹かせやしない!!」
彼が初めて叫んだところを見た、その瞬間に彼の全身から血飛沫が吹き出す。
「現世で成らん|(第六天)……」
(止めろ!!)
今まで出したことのない位の声で叫んだつもりだった、けれど彼には届いていない。
「戦神|(阿修羅)」
全てがスローモションに見えた、敵に肉薄するために空に跳び出すソレイユ、それの背中を押すように現れたのが無数のソレイユと似たデザインの服を着た同年代の男女だ。そいつらの口が何かを告げるように動いている。
(行ってこい、そして生きて帰ってこい……?)
聞えなかったのでマネしてみたらそんなことを言っているような気がした……が
※※※
「ぶはっ!!……はぁ、はぁ」
そこで目が覚めた、なんとも目覚めが悪いし、息も荒くなっている。
(なんだったんだよあれ……)
そもそもこれはただの夢なのか? 何かを知らせるような夢な気がする……
そして思い立って携帯端末で攻略掲示板を開く、探したのは抑止力NPCの項目
【陽光・ソレイユ
現状プレイヤーがカトルの次に出会い、話したことのある抑止力NPCだと思われるが、その実力は未知数。気付いたらそこにいて、気付いたらいなくなっている、マフラーに書いてあるようにまさに『風』の様な人である。
わかっていることは一見、睨むだけで人を殺せそうな雰囲気と顔つきの持ち主だが、根は大変優しく良い兄貴分なお方である。という位だ。
】
としか書かれていなかった。俺の知りたかった細かい設定等々は書かれていなかった。
……明日マジで何も無ければいいな変にフラグ立ててしまったかもしれない。




