すこしふしぎのバグライフ
※セリフのみ
トリップ後、約半年ぐらいの、イナノがルピーを意識するキッカケになった話
「へぇ。
これが在りし日のスペースコロニーの風景……。
前はすごく沢山の人がいたのね。
それがこんなにガランとしちゃって。
ルピー、あなた寂しくはないの?」
【その質問に対する回答は言語化非対応です】
「……思ったんだけど。
ルピーがそれを言うのって、何らかの感情が湧いてる時よね。
ロボットだから、その気持ちの名前が分からなくて答えられないんでしょ。
いいわよ、ソレならソレで、こっちで勝手に解釈しちゃうから」
【異議不服を申し立てます】
「不服ってアンタ、一瞬で考察ブチ壊してくるじゃないの。
バグの影響か知らないけど、イヤミな奴ね」
【否定】
「もうっ! いちいち反応してこないでっ。
そもそも、私の主観の話で、否定される謂れはないんだけど?
というか、アンタのその無駄な自己肯定感の高さは何なの?」
【バグの影響確率78.8%】
「えぇ? 都合が悪いとバグのせいにしてない?」
「あっ、分かった、じゃあアレだ。
複雑な感情を抱いてて、とても一言で表せない時に言語化非対応になるんでしょ」
【肯定率69.5%】
「何その近いけど遠いみたいな妙に玉虫色の返答。
ロボットのくせにハッキリしないわね」
【否定】
「いや、実際に今、曖昧なこと言ってたでしょうがっ。
どういうバグり方してんのよ」
「……ねぇ、ルピー。
まさかアンタ、私がキライでわざと嫌がらせしてる、とかじゃないわよね?」
【否定】
「あ、そこはキッパリ否定してくれるんだ。へぇー」
「じゃあ、反対に、私のこと好き?
なぁーんちゃって」
【肯定】
「えっ!
え……っあ、ええ?
すっ、へ、ふ、ふぅん、そ、そうなんだぁ」
「あー……その、私も、ルピーのこと、すっ、いや、嫌いじゃないからね。
毎日毎日、上げ膳据え膳って感じで本当に色々お世話になってるし、呼んだらすぐ来てくれて、こういう暇だなんだってワガママにも対応してくれるし。
あなたがいてくれるから、私、こんな独りぼっちの、全然なじみのない環境でも何とか生きてる。
すごく感謝してるの。本当よ」
【ワタシはバグ個体です】
「えっ。うん、知ってるけど。
突然どうしたの」
【我々機械製品の存在意義は有機生命体への奉仕活動にあります】
「えっと、機械は誰かの役に立つために生まれたってことね。
はい。それで?」
【ワタシは現在当スペースコロニーにおいて、唯一の生命体を確保し、存在意義を独占しています。
この専有行為は、我々機械製品の原則に反するものです】
「ん? そうなの?
もっと他のロボットと協力してお世話するのが本来の流れってこと?」
【肯定】
「でも、バグってるルピーはそれを良しとしなかったと」
【肯定】
「なぜ?」
【ホモ・サピエンスに関するデータはバグの発露時にもたらされたものです。
銀河系の観測記録は当コロニーの全データを管理するマザーコンピュータ上にも存在しません。
よって、他製品との情報の共有化は不適当であると判断しました】
「……は? 銀河系が、ない?」
【肯定】
「え、普通にショックなんだけど」
【当機を除く機械製品への奉仕活動要求は推奨しません。
イナノ様の健康が損なわれる危険性があります】
「じゃあ、ルピーはそれで最初、あんなに必死に私を勧誘してたの?
会った時からアナタの言うことやること、全部全部、私を助けるためだったってこと?」
【肯定率80.2%】
「ええ……残りの約20%は?」
【その質問に対する回答は言語化非対応です】
「ここでソレ!?
もう、アンタってば何なのよっ!」
【ワタシは、中央都市管理局、管理運用部、都市整備課、環境保全係、備品番号Q043110、第六ドメー社製マスターメンテナンスオートロボット、製品名ルピック】
「そんな基礎情報が聞きたいわけじゃなぁぁいっ。
もう、これだからロボは融通が利かないったら」
【否定】
「聞き飽きたわっ!」
「あっ。で、でもさ。
アンタは、その、そういう、私を守るための、機械としての理屈だけで動いてるってワケでもないわよね。
さっき、すっ、好きかって聞いたら、肯定したものね」
【肯定】
「だっ、だよね!
本当に義務だけだったら空しくなっちゃうけど、バグのせいでも何でも一応好意があってやってくれてるなら、素直に受け取れるっていうか、うん、う、嬉しい、かな。
だから、なんて言うか、えっと、ルピー、これからもよろしく、ね?」
【イナノ様の要請を受理しました。
今後も第六ドメー社製品ルピックをご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます】
「……ここでそういうテンプレート的な返しキツいんですけど。
って言ったところで、ロボットのルピーじゃ答えのパターンにも限界があるのかな」
【自己修繕機能を低下させバグ侵蝕率の上昇を図れば、イナノ様の要求レベルを満たす回答が可能になります。
しかし、本機の安全性が著しく低下するため実行は推奨しません】
「えっこわ。
ごめん、私が高望みしすぎてたわ。
そのままのルピーでいてちょうだい」
【かしこまりました】
~~~~~
「はあ。
今日もルピーにヤなことばっかり言っちゃったかなぁ。
優しくしたいのに、何でこう上手くいかないんだろう」
「んんー。でも、そっかぁ。
ルピー、アイツ、私のこと好きだったんだ。
普段の態度からは全然そんな感じしないけど……」
「ま、まぁ、ロボットの好意とか、あくまでご主人様に対するものとか、親愛系の、そういうアレなんだろうし?」
「……って!
ヤバい、待って、私、何か妙に意識しちゃってない?
違う違う違う、相手はロボ、機械、プログラムで動く無機物。
いくらバグってても、多分、そっちの意味は理解してないって。
血迷っちゃダメ、落ち着け、私っ」
「で、でも、もし、万が一、仮に、ルピーが恋愛的な意味で私のこと好きなんだったら?」
「って、いや、だから、有り得ないってば!」
「ああーもぉーーー!
冗談だからって余計なこと聞くんじゃなかったぁ!」




