短編未満小話詰め合わせ2
タイトル通り。
短編にすらならない小ネタ集。
◇とある転生侯爵令嬢の王子狩り作戦
「……ただの夜会であるなら、そこは女同士のマウンティング合戦の場。
最先端の流行を取り入れたドレス、宝飾品、化粧、髪型に、立ち居振る舞いが必要となる。
しかし、今宵は違う!
建て前はあれど、実質、王太子殿下の集団見合いの場!
そして、私は見た目がとにかく好みド真ん中の殿下をお慕いしている身!
ならば! 選ぶべきは! 全て彼を基準としたものでなければならない!
有象無象の印象など二の次!
全力で殿下を狩りに行く!
しかし、あの御方は用心深い、まずは一度で攻めきろうと思わずに興味を引くことを目的とすべきでしょう。
となれば、私の導きだす答えは……コレ!!」
「現在の流行である美白清楚系の真逆をゆく、ヤマンバギャル!!!」
~そして、夜会会場~
「うわぁ、どこの化け物かと思った。
殿下殿下、すごくおかしな女性がいますよ。
今日は殿下の見合いの場だっていうのに、何を考えてあんな……」
「ふーん、面白ぇ女」
「殿下ぁ!?!?!?」
◇いつか恋になる少年少女の最初の転換期
「あ、三木さん重そうだね。
日直? 僕、手伝うよ」
「結構よ。
私、貴方にだけは絶対何も頼まないって決めてるから」
「え?」
「断れない人、信用できないから。
何でも簡単に出来て断る必要のない人ならいいけど、水瀬くんはそうじゃない。
自分のキャパシティも考えず、乞われるがままに全てを引き受けて、そして、軽率に放つ大丈夫という言葉に自分すら騙り続けて、いつか壊れてしまう人」
「……え」
「一人の人間を潰す行為に加担して、無駄な罪を負いたくないから、貴方にだけは絶対何も頼まない。
同時に、ただのクラスメイトであるだけの貴方を助ける義理も、どこにもないわ」
「えっと」
「とにかく、本当に助けが必要な時は違う誰かに頼むから、二度と私に手を貸そうとなんてしないで」
「……そっか。
三木さんはとても優しくて、そして、自分をちゃんと把握してる人なんだね。
ごめん、きっと僕みたいな存在は、そこにあるだけで君にストレスを与えてしまうんだろう。
君が心苦しく感じることを分かっていても、僕はきっと変われないと思う。
だから、ごめん。そして、ありがとう」
「はぁ? 何でお礼?」
「多分、学校の中で君が一番、僕のことを心配してくれているだろうから」
「……バカみたい。
そんなだから、皆からいいように利用されるんじゃない」
◇トリップ先の世界でアレコレ発明してたら、ある日、後見人の貴族に見合いを強要された女性の場合
「ふむ、様々な意味で私を狙う輩は多い。
幅広く見識を蓄え、それを運用するだけの知恵の回る男を所望する」
「ほぉ、具体的には?」
「顔面や性格は二の次だ。
堕落した貴族や悪徳商人、その他、様々な悪意と渡り合える小賢しき者が欲しい」
「賢き者ではなく、小賢しき者なのか」
「そうだ。重要なポイントだから、間違えてくれるなよ」
「……いいだろう、条件に合う最高の婿を探してやる」
~後日~
「ぼ、僕のような男に見合い話だなんて、有り得ない。
何かの陰謀に決まってる。
陰謀じゃなけりゃ、勝手に罪人の罰として使われてたり、女のふりした男なんて落ちだったり、大金を要求されたり、大勢の前で笑い者にされたり……とにかくコレは罠だっ。
僕は絶対に騙されないぞ」
「ふむ。
他人に対する疑心暗鬼が過ぎて、自己防衛のために知を求めたタイプか。
……悪くない」
ブツブツと独り言を垂れ流す陰気な男に、女は舌なめずりしながら近付き、自然な手つきで彼の肩を抱いて、耳に唇を寄せ、ぬるい息を吹き込む。
「ひゃんっ!
な、なななにをっ!?」
「ふふ、可愛い声で鳴くじゃあないか。
さ、こちらへ来なさい……抱いて差し上げる」
「ふぁっ! あ、っあ、は、はぃぃ……」
「いい子だ」
艶のある微笑みと囁きで男をあっという間に魅了状態にした女は、彼の腰に腕を回して、寝室の方角へと誘導していった。
急すぎる展開に取り残されたのは、後見人の貴族である。
「あの疑心の申し子をこうも簡単に陥落させるとは……異世界人、恐るべし……」
◇ある日、友達の家に遊びに行ったら謎の生物がいた
「高橋? どうした?」
「っそ……」
「そ?」
「そんな熊みたいにデカい猫がいてたまるかーッ!」
「いや、現にこうして」
「いたとしてもただの猫じゃねぇよ、これ何とか条約とかで禁止されてる猛獣とかだよ、素人が飼っていいタイプの生物じゃねぇだろ!」
「ちょっと大きいだけじゃん、そんな大げさな」
「田中うしろーッ!」
「え? え、何?」
「今、コイツ!
二本足で立って、ひげダンス踊ってやがった!」
「は?」
「絶対普通の猫じゃねぇって!」
「高橋ぃ、いくらウケ狙いでもソレはないわ」
「違ぇよ! ウソじゃねぇ、ホントにホントだって!」
『何この姦しい童、マジウケるんですけど』
「キェアアアアしゃぁべったぁーーーッ!?」
「猫がうにゃうにゃ言ってるのをウチの子はしゃべるんですって言って聞かない飼い主バカもいるけど、それって俺とお前で立場逆じゃない?」
「うにゃうにゃとかってレベルじゃなかっただろ、きっぱりハッキリしっかり話してただろぉぉ!?
どーなってんだよ、お前の耳はぁぁ!」
「こうなってる」
「指差して見せてくれなくても知ってるよバァカ!」
『HEY、YOUたちの頂点、UMAからの挑戦、ゆくゆくは侵略で有頂天、HI-HO』
「うわああ何か不穏なラップ始まった!
もはやコレ地球産ですらねぇだろバカ早く元いた場所に帰して来いよぉぉッ!」
「はぁ……高橋、お前さん疲れてんだよ。
今日は帰りな」
「何よっ、心配して言ってやってんのに!
田中のバカバカっ、もうどうなったって知らないんだからね!」
「何で急にそんな彼女みたいな言い方するんだよ、怖いわ」
「怖いのはお前の後ろの謎生物だyo!」
『Hi-Ho』
◇異世界トリップしたら転性(♀→♂)してた元女が冒険者仲間の男に愚痴る話
「うわぁああああくそぉぉおおお!」
「なんだ、どうした」
「何かこっちに来てから便がやたら大きくて毎回穴が割けて血が出るんだけど、これあんまり続いたら痔になっちゃうよなぁ!?
この世界、肛門科とかなさそうだし、治りかけてカサブタになると痒いし、とにかく最悪だ!」
「……それを聞かされる俺の方が最悪だ。
ってか、お前本当に女だったのか?」
「何度も言わせんな、女だったよ」
「お前さ、絶対俺に惚れたりすんなよ」
「はぁ?
するわけねぇじゃん、自意識過剰か」
「元が女なんだったら、絶対ないとは言えねぇだろ」
「っつーか、男になったからには嫁さん貰う気なんで」
「そうなのか?」
「おうよ。
理想は、髪色は何でもいいからとにかくゆるふわロング、笑顔が可愛くて、家事が得意で、けなげで、胸は俺の手のひらからちょっとこぼれるくらいの大きさで、身長は俺の目の位置と同じくらいで、実は少し人見知りなんだけど俺にだけはスゲェなついてて、怒る時にめっとか言ってくれて、エロネタ話すと真っ赤になっちゃって、パッとじゃ弱そうに見えるけど芯は強くて、帰るといつだって温かい飯を微笑みと共に用意してくれているような、そんな嫁さん」
「おい、お前。
女だったとか真っ赤な嘘ついてんじゃねぇぞ」
「は?
何で確信に到ってんだ、女だっつってんだろうが」
「嘘つけ! 完全に男の思考じゃねぇか!」
「うるせえ元からだ!
女がオッサンみたいな思考してて何が悪いってんだよォ!
あと、あっちにいた時はちゃんと彼氏いましたからぁー!」
「ちょいとアンタたち、騒ぎ声が廊下まで聞こえてんじゃないか!
コレ以上騒いで他の客に迷惑かけるってんなら、二人とも宿から追い出すよ!?」
『ゴメンナサァイ!!』
◇呪われた王子と変わり者の令嬢
むかしむかし、あるところにカーマという娘がおりました。
カーマは「強い」ということにたいそう憧れており、兵隊の訓練を盗み見て自分のものとするためにお城でメイドとして働いていました。
そんな、ある日のこと。
いつものように人気のない場所で鍛錬していると、どこからか一頭の狼が現れました。
お城の中に狼が出たことにびっくりして、カーマは持っていた木剣を放り投げてしまいます。
すると、その狼は落ちた木剣を咥えてカーマのところまで持ってきてくれました。
心優しい狼を気に入ったカーマは、その後、時間を見つけては狼に会いに来るようになります。
やがて狼とすっかり仲良しになった頃、カーマはメイドの友達から、ある噂話を聞きました。
なんでも、この国の王子様が、もう何日も行方不明だというのです。
もともと王子様には脱走癖があって、いつの間にかお城からいなくなり、2・3日戻ってこないなんてことはザラだったのですが、さすがに今回は遅すぎると、王子様のことを心配した王様が明日にでも国中に捜索隊を出すことを決めた、というような内容でした。
夕方の休憩時間にいつもの場所で狼にその話をすると、突然、狼はカーマの口を舐めてきました。
するとどうでしょう。
獣の姿がみるみる変化して、美しい人間の男性になってしまったではありませんか。
姿の変わった彼は、カーマにこう言いました。
「私はこの国の第一王子エルトランディ。
悪い魔法使いに呪われて、狼の姿に変えられていました。
呪いを解く方法は、真の愛をもって口づけを交わすこと。
しかし、獣の姿の私を好いてくれる女性などいないだろうと、半ば諦めていました。
ですが、この場所で貴方と出会い、無事に元の姿に戻ることができた。
ありがとうございます、カーミランジュ様。
そして、愛しています。
どうか、私と結婚してください」
こうして真の愛をもって結ばれた2人は、末永く幸せになりましたとさ。
めでたし、めでたし。
「二人の馴れ初めを絵本風にしてみました」
「確かに嘘はありません。
ありませんが……事実と何もかも違いすぎるのは何故でしょう?」
「それで、この絵本を大量に刷って国民に配……また剣速が上がりましたねぇ、ミラ」
「あっさり避けながら言わないで下さい。
で、何ですか国民に配布って。
バカですか。あぁ、バカでしたね。スミマセン。
バカエル殿下死んでください」
「心配せずとも、公金は使いませんよ?」
「そういう問題じゃあありません。
いや、それも問題には違いないのですが……とにかく、そんなバカなことを実行したら即離婚ですからね?」
「うーん。仕方がありません、配布は止めましょう。
……まったく、ミラは独占欲が強いですねぇ。
まぁ、そんなところも可愛いんですけど」
「どこをどう解釈したら、そうなるのです。
だいたい最初にお伝えしたでしょう、狼のことはあくまで愛玩動物としてしか見ていなかったと。
国王陛下や宰相様に土下座されてまで頼まれなければ、誰が貴方みたいな変態王子に嫁いだりするものですかっ」
「私、変態と言われるような特殊性癖はありませんよ?」
「狼から人間に戻ってすぐの!
ほとんど初対面同然の仮にも年頃の令嬢を前に!
全裸のまま平然と話を始めたエル殿下は立派な変態です!!」
王太子妃カーミランジュの苦悩は続く。




