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夜のバス停
ただ、ひっそりと信号機はその色を変える。車など通る事は無いのに。
それはそうだ。時間が時間だ。バスの最終便はとっくのとうに過ぎ去って、バス停だけを置き去りにしてしまっている。
実家から数十メートル先にあるこのバス停。私は1人なのだと確かめたくて、たまにここへ来る。
すごく静かに抜け出して。化粧はなし。両親はいるけれど。
「寂しく無いのかい?」私が声にする。
「寂しいね」バス停が答える。私は星空を見る。バス停が続ける。
「バスはね。僕とは違う生き物なんだ。仲間の様な顔をして、何度も会いに来てくれるけれども」バス停は遠くを見つめている。
「何処かにね。多分、仲間というものはいるんだと思うんだ。同じ気持ちを持った。本当に分かり合えるものが。でもそれと会えない一生を過ごすという事も珍しく無いと僕は思うんだ」
「うん、そうかもね」
「……君も僕も、働いてるのにね」
「うん」
ここはバス停。実家から数十メートル先にある。ここは今いなければいけない世界から1番遠くに行ける場所。




