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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第89部 ボブの巻き上げ式クレーン?


 1243年12月1日 ポーランド・ブィドゴシュチュ



*)倉庫の建設



「ぅわ~~~、大きいトロロの鎮守の森になったわ。」

「少し休憩させて頂戴。」

「そうよね、オレグはいつも使いっぱなしだものね。」

「ううん、今日は魔女のお手伝いもあるから、楽だわ!」

 汗だくになったリリーの額にハンカチをあてるソフィア。同時にソフィアはオレグを睨み付ける……。


 背筋に冷たい感じがしたオレグは、


「リリー、冷たいワクスを飲むかい?」

「はい、オレグ兄さま。後ろの背後霊まじょにも分けてあげてください。」


「おうおう、お前らしっかり働け!!」


 魔女たちは全員が目を回していた。アントニアが各自にワクスを配っている。




 リリーは、アントニアも含めてトチェフの者を全て追い出した。


「オレグ兄さま、ここには誰も近づけてはダメですよ。」

「おう、分かった。……夜にはまたシビルの夢食いをお願いするか……。」



 リリーは魔女の十八人の前で、


「さぁ、あなたたち、また頑張るわよ。」

「は~い、リリーさま。」


 リリーは地下の全部の土をブルダ川沿いに積み上げた。


「こうすればブルダ川からは見えなくなるわ。」

「そうだな、偵察が出来ないな。これなら襲撃は正面だけになるだろう。」


 大きい立木は倉庫の柱となり屋根へと変化した。枝葉は壁や窓へと姿を変える。


「兄さん、見てて。今度は樹の根っこを地下室の壁と天井に変えるから!」


「出来るのか?」


 どうなるのか理解出来ないオレグは、大きく目を見張るのだった。


「オレグ兄さま。大きい目でも見えませんわよ……」

「そうなんだ。」


 また地響きが聞こえた。最初みたいには大きくはない。魔力を失くした魔女は順次倒れていく。


「リリーさま!!」x2

「リリーさま!!」x4

「リリーさま!!」x8

「リリーさま!!」x4


 魔女が全員その場にす。


「おいリリー!!」

「……、」

「オレグ、リリーを信じて……大丈夫よ、落ち着いて見ていなさい。」

「お、おう!!」


 今度は轟音と共に地上の倉庫が上に上がり出した。


「リリーさま~!!」


 伸びあがった倉庫が停止した。


「出来た……わ‥よ!」

「お姉さま、三階に……、」


 リリーも倒れてしまった。オレグは驚いて駆け寄り、リリーを抱き上げて事務所の三階へ駆けあがった。ソフィアも付いて来るかと思ったが、


「ソワレさんエレナ。リリーをお願いね。私はこの魔女たちの世話をしますから。」

「はい、ソフィアさん、任せて下さい。」


 オレグの後にはエレナ、ソワレが追従していた。


 ソフィアはリリーの言葉を考えて倉庫に行った。


「ぅわ~、とても大きいわ~!!」


 すでに階上へ上る階段も出来ていた。トチェフの倉庫を造る時に学習したのだろう。補強の柱も随所に立てられていた。ソフィアは二階へ、三階へと上った。


「あっ!……凄いわ~! ベッドが出来ている。ここに魔女たちを休めさせればいいのね。」


 ソフィアは急いで外に出て魔女たちに声を掛ける。


「どぉ? 起きれるかしら。」

「はい、教祖さま。大丈夫でございます。」x2

「はい、教祖さま。起き上ることが出来ません。」x4

「はい、教祖さま。もうダメでございます。」x8

「はい、教祖さま。ここは天国でございますか?」x4


「誰も居ないわね……先に服を脱いで…パ**はよしといて、と。」

「ゥオ~~~オ~~。」


 ソフィアは四mのオオカミに変身して魔女らを背中に乗せ、口に咥えてと三階へと運ぶのだった。


「まぁ~教祖さま~。」 「教祖さま~。」

「教祖さま~ぁ~。」x16


 そう、道路からは倉庫で隠れるし、ブルダ川からは土の壁に囲まれている。他は樹木が茂っているから、ソフィアは、


「へ~ぃくしょん!!」「へ~ぃくしょん!!」「へ~ぃくしょん!!」


安心してくしゃみが出来るのだった。


「あんたたち、しゃべったら食べるわよ!!」

「はい教祖さま。喜んで!!」


「ミャ~ミャ~おミャ~……オ*カ*にゃ~!!」


 一匹の黒猫が見ていた。


 倉庫の門からは大きくて長い松の大木が突き出ている。その梁を受ける鳥居の形をした松の大木が在った。


「これは何かにゃ~!」

「おっと、私はオオカミだったわ。リリーの様子を見に行かなければ……、」



 リリーは動けないまでも、しっかりと目覚めていた。


「お姉さま、魔女たちのお世話をありがとうございます。その~お声が……、」

「いいのよそんな事。……でも、あれを出して頂戴!」

「?……?」

「寒いわ。すすす~、」

「まぁ、お姉さま。ノー**ですの・・・?」





 オレグはアントニアを呼んでリリーの食事を運ばせた。


「リリーの後は、魔女たちにも食事を運んでくれないか。」

「はい、オレグさま。」


 アントニアは事務所の厨房からせっせと食事を運んでいた。


 藪の中で「にゃ。」と鳴く黒猫。


 オレグとソフィアは倉庫を見にいった。ソワレとエレナも同伴だ。


「でけ!!!!」


 倉庫に入ればその大きさが実感できる。


「ほんと、大きいですわ~。」x2

「えぇ、先ほど入りましたが、私も不自由なく移動出来ましたわ!」

「それは良かった。」

「?……?」


 理解出来ないソワレとエレナ。


 二階は何もない床だけだった。三階はベッドで魔女らが休んでいた。


「おう、みんな、ありがとうな。アントニアが食事を運んでくれるから、今日はゆっくり休んでくれ。また、動ける者はアントニアの手伝いを頼む。」

「はい、教祖のご主人さま。」


「オレグ、あんた、魔女に何を言わせるの!」

「しらね~よ、あいつらが勝手に呼んでいるのだよ。」

「あんたたち、そうなの?」

「はい、教祖さま。」


 地下一階がとても広い。天井には両開きの扉が出来ていたからここが地上からの搬入口になる。その横の壁には二つの扉があるが、


「なによ、行き止まりの土壁じゃない。」

「ソフィア、それはパブから通じる通路になるのだろうよ。」

「そっか! パブはまだ出来てはいませんわね、オホ・ホ・ホ。」


 不気味な笑い声のソフィア。


 地下二階は上の搬入口の仕訳作業場の分が狭かった。地下三階も同じ広さだ。


「ここも広く出来ているね。」

「だが氷室になるから、雪壁で結構狭くなるだろうさ。」

「明日からこの三階から作業を始めるか。棚を一・二・三・四……。取り敢えず十五の棚を作ってもらうか。」

「だったら三十個だね。」


 オレグの倉庫は地上三階、地下三階の大きい建物になった。


 その日の夜。シビルによりリリーの大地の魔法で造られたという、事実が関係者からすっぽりと抜け落ちた。既に在った建物として認知される。



 翌日。オレグは地下三階から棚の設置を始めた。地上では馬車の組み立てが行われている。


「旦那、厩舎も必要でさ~。」

「忙しい、すぐには出来ぬ。森の木に繋いでくれないか。」


 倉庫はブルダ川の方が正面になるから、大きい開き戸が付いているが、道路の方には無かった。オレグは建築のジグムントに指示して、間口三mの引き戸を造らせる。


 ボブ二号は、家具職人のヘンリクに頼んで変なものを作らせようとしていた。


「旦那、地下三階への荷下ろし場は、あっしに任せて下さい。とても良い物を作ってみせますから。」

「ボブ、出来なかったら一生ただ働きだぞ、いいな!」

「いえいえ旦那。きっと泣いて喜びますよ。」


 ボブはそう言って地下一階の床に開口部を作るよう、オレグに頼んでいた。


「建築のジグムントさん、ここに一mの開口部を作ってくれないか。扉は不要だからね。その代わりに蓋を作ってくれ。人が落ちたら大変だからさ。」


 またボブは、鍛冶屋のレフに水車の羽根みたいな物を作るように指示している。


「それとなレフ。こういう金具も二つと滑車を五個ほど作ってくれないか。」


「おう……この絵は汚くてへたくそだな。……これなら出来るぞ。任せな!」


「すぐにトチェフへ戻るか?」

「そうだぜボブ。すぐに船を出してくれ。ここには鍛冶場が無いから作れないよ。」


 ボブも同行して弟子も5人がかりで三日で仕上げてしまった。


 家具職人のヘンリクは人足に木材を随時切らせて部材を多数作らせた。


「旦那、この調子ならば四日後には地下三階の組み立て作業は終わりますよ。」


「そうか、それは良かった。でだ、氷室の雪を壁に積み上げるから、棚は中央に置いていてくれないか。雪を入れたら順次棚は並べてくれ。」


 ボブ船長は次々と木材と石材を運び込む。荷馬車が出来たところで港に使用する石材の買い出しに行かせる。長い石材なので馬車には、三本が限度だった。ボブは石材を百本注文していたから、三台の荷馬車で三十三往復になる。この仕事が一番長く続いた。オレグは、


「ここは雇用の問題だ。リリーの境界の魔法は使いたいが使えないな~。」



*)ボブの巻き上げ式クレーン?


 ボブが考えた巻き上げ式クレーン。部材が出来上がったから意気揚々として? ブィドゴシュチュに戻ってきた。


 ボブは逸る気持ちを落ち着かせながら倉庫に部材を運び込む。


「おう、注意して運べ! 川に落としたら泳がせるからな……、」

「ボブの旦那。これは重たいですぜ!」

「バカを言うな! 積んできたんだ下ろせない訳はないだろう。」


 ボブは確かに重い部材の下ろし方を教えた。


「いいか、前後にロープを結べ。そうしてこの棒切れで二人ずつ持って上がれ!」


 四人で持ち上げるのだが、港でもない草地を持って上がらねばならない。二人ならいいが、四人で草地の斜面は絶対に上れない。(このように ÷÷ なる)


「だったらロープで引き揚げろ!」


 男が六人でロープをかけて引きずり上げる。無事に上がるも次は土手みたいに積み上げた土壁を上げて下ろさなくはならなかった。


「どうしてここに土手が出来ているのだ!!」


 喧しいから覗きにきたオレグは、


「すまね~な、これは対魔女用の防護壁だ。勘弁してくれ。」


「だったらまだ後でも良かったのでは???」(あ、あぁん??)

「邪魔だからどかしてくれ!!」


 オレグは向こうの方を指差して、


「だったら向こうで荷下ろしすれば?」


 そう、平坦な場所が在ったのだ。樹木で見えなかったようだ。この後に土塁は倉庫の正面だけ削られた。


「もう、ごめんなさ~い!」


 そう言いながらリリーが大地の魔法で土を取り除いていた。


「おう、野郎ども。この部材を組み立てろ!」

「ボブの旦那。そう言われましても私らには理解できません。」

「ほ! そうだな。こうするのだ、よ~く見ておけ。」


 ボブとレフ、それに弟子たち5人が組み立ててしまった。穴の開いた大きい松の木を左右に立てる。倒れないように二方向から突っ張りの木を立てた。


「これからが大変だ。頑張れ!」

「重たい梁の部材を横にして持ち上げて、金具を松の穴に差し込んで止めるのだ。いいか!」

「へい!」


 男が十人ががりで持ち上げている。その間に梁に金具を取り付ける。


「もう、だめだ。交代してくれ。」

「俺もだめだ。交代・・・」x9


 とても重たいらしい。梁が揺れて松の穴に通した金具が取り付けられないから時間が掛かり過ぎた。


 これを見たオレグは、


「お前らはバカか! 松の大木を順次並べてロープで縛れ。その後に次の松を積んでいけばいいだろう!!」

「はは、旦那。頭がいいですね。」


 ようは筏を五~七段に上に積んでいくと考えて下さい。


 松の大木が十段に積まれている。最上部は細めの木材が置かれた。


「この上に梁を転がせればいいだろう。高低は木材を動かして調整しろよな。」


「はい旦那、これならすぐに作業も終わります。」

「ボブ、お前はあいつらにビールをご馳走しろや!!」

「はい旦那。そういたします。」


 出来た梁にの片方に水車の羽根が接続された。これも金具に差し込むだけだ。差し込んで留め金が下ろされた。


 オレグが、


「はは~ん、これはいいぞ。使えるぞ!」


 そう言いながら羽根を掴んで動かした。同時に梁も回転する。


 ボブはにたりと笑って、


「あとはロープを巻きつけるだけだ。すぐに終わるぞ!!」


 ボブは十段上の松の木に登り、ロープを巻かせる作業を指示した。


「おう、お前ら水車の羽根を回せや。ゆっくりだぞ。」


「巻かせて下さい。」

「? 任せての間違いだろう?」


 ごついロープが梁に巻かれていく。……、作業が終わった。


「もう終わりだ。下の松の木を抜いてくれ。」


 百本あまりの松が抜かれた。下には開口部が見える。


「今度は地下の部材を下ろすから、穴の横に並べろや。」


 梁から伸びるロープを部材に結びつける。


「いいか、見ていろ。こうするのだ。」


 ボブは水車の羽根を踏んで回し始めた。すると部材は引き摺られて上がっていく。最後は開口部の上で宙ぶらりん。


「お前、反対側を掴んでいろ。いいか手を離すなよ!」


 ボブは羽根から足を下ろして地面に立つ。


「今度はゆっくり下ろすから見ていろ。」


 ボブは羽根を反回転させる。これは力は要らない。重力があるから回転する羽根にブレーキを掛けるだけでいい。重たい部材がゆっくりと地下一階に下りてゆく。


「わ~!! わ~!! わ~!! わ~!!」


 多大な歓声が上がった。 オレグは脱帽した。


「ボブ船長が見たら驚くだろうな!」


 作業を嫌って船に残っていたボブ船長は歓声を聞いて倉庫にきた。


「ぎゃっは~、これはすごいや!!!!」

「お前、すげ~やつだったんだな!!」


 ボブ船長はボブの背中をドンドンと、叩いて喜んでいた。


 残りの部材も一階から地下一階へ大きい開口部から順次に下した。


 ボブは家具職人のヘンリクに、開口部よりも小さい戸板を作らせた。


「ヘンリクさん、ここには牛の半分の重量が載るのだ。丈夫に作ってくれ。」

「おう、任せな。」


 四角の戸板の四方にロープが着けられて、クレーンのロープと結ばれた。


 ボブの巻き上げ式クレーンが完成したのだった。井桁の囲いが作られて人が落ちないように開口部に置かれている。


 地下一階には、小ぶりの同じ形の巻き上げ式クレーンが設置された。地下三階までの直通だ。ボブの鼻が3cmほど高くなっていた。


 これの特大サイズが港に設置されるのだが、二か月先になる。先に港の土木作業がある。港の形はこのクレーンを造る方法で決められた。


「旦那、すみません。ポートは船の大きさの一,五倍の横幅でお願いします。これを二つ並べて造ります。」

「大きい港ではなかったのか?」

「はい、クレーンの梁になる松の樹がございませんでした。」

「そうか。いいぞ、いいぞ。」


 と、オレグは二つ返事で了承した。これは石材の節約にも繋がっていく。


 一回目の完成式の宴会が開かれた。ここまでで二週間しか経ってはいなかった。


「おう野郎ども。ボブの奢りだ、存分に飲んでくれ。」


「だ、だ、旦那! それは勘弁して下さい。金が無くなってしまいます。」

「? 金貨百枚だぞ。けちけちするなよ。足りない時には追加融資をするからさ!」

「ゆ、ゆ、融資ですか!!」

「違うのか?」

「いいえ、返済すると言いましたから融資で構いません。」


「オレグ、あんまりボブを苛めないで下さい。女房は身重ですのよ。」


 ソワレが憐れんでオレグをたしなめる。


「それもそうだが、中途半端な仕事はして欲しくはないからさ。」

「それはそうでしょうが………、もう私たちをトチェフへ戻して下さい。」


「?? そうだな、明日の便ででも帰ってくれ。」


 オレグの話が逸らされてしまう。


「はい、頂戴!」


「なに!」

「お給金ですわ。」

「けっ! サービスじゃないのか……」

「あったり前でしょう?」


 二階の棚も半分が出来上がっている。三階は魔女の住処になっているから当分はそのままだ。荷物も無いから良いのだろう。


 人足も余るようになったので、トチェフへ戻す事にした。


「すまないが、明日からは港の土木作業になる。希望者は残れ。採用の人数は二十名の予定だ。」


「建築のジグムントはパブの建設に取掛ってくれないか。」


 パブの家もリリーにより躯体は完成している。石工のマシュが、


「旦那、かまどと煙突とパン焼きのかまどがまだですぜ。あっしらも残ります。いいでしょう?」

「いや、お前たちには港の石材加工もあるので二十人の員数に入っている。最後までよろしくな!」


 男の力持ちが十八人集まった。


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