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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第42部 オレグが見た七つの夢② 小さな煙突

             

 1242年7月20日 ポーランド・トチェフ



*)姫様の能力? 


 一方、エリアスの四人は?


 オレグはルシンダの接待が終わり、リリーの育てたバラに話しかけていた。


「なぁ、リリー。ルーシーさんはリリーと同じ妖精だろう? 分かる方法はないかな。こう、煮たり焼いたりしてさ!」


「ええ、そう思いますけれども分かりません。普通は二人で行動するのが妖精ですが、もう一人はどこにいるのかな。でも、私は焼かれてはいませんわ。」


「ノアと同じ変身魔法は、対になる妖精がいないと出来ないと思うんだ。」



「オレグは、無事にあのお姫様の接待は済みましたか?」

「はい、俺の自己流の料理で満足させました。今はもう夢の中かもしれません。」

「それは素晴らしいですわ、私はオレグを見直しました。」

「おう、もっと尊敬しろ、Hしろ!」

「嫌ですわ! そんな~。私、亭主持ちですわよ!」

「へっ!!」・・・・・・・・もしかして、グラマリナさま?」

「いいえ、ルーシーですわ!!!!」


「キャン!」

「こちらのお二人は地下牢でお休み頂いておりますの。エリアスご夫妻は自室でお休みなられています。」

「ギャ!」

「お姉さまのルシンダを、・・・・・・、そうですわね、半年くらいお願いしますわ。きっと居つきますので、よろしくお願いします。」


「ソフィアとリリーは帰してくれるんだろうな。」

「秘密を知られましたので、帰しません。」

「ああ、そうですわ、ルシンダお姉さまをお嫁さんにしてください。ソフィアさんは私が頂きます。チェンジリング作戦、交換にいたしましょう。」

「ええ~!? そんな~。二人を帰してよ~。」


 その夜に見た、オレグの夢である。

    ☆

        ☆

            ☆

                ☆



 1242年7月20日 ポーランド・トチェフ


*)小さな煙突


「ルシンダさま、これが煙突と名付けた排煙用の穴です。」

「そう、これはいい考えだわ。今の家では、ケムけむとの格闘! だと聞いております。これは簡単には出来ませんのよね?」


「はい、天井と屋根には大きい穴を空ける必要がありますので、実質不可能かと思います。」

「ですか~、残念です。ですが、これから建設する家には付けられますですね。」

「それはもう、ぜひとも標準装備にされましたら、中古の家でも高く売れます。」


「こちらの大きいかまどは?」

「はい、これも自信作ですね。正面は煮炊き用ですが、右の部分を見て下さい。ここに鉄の板を入れて、ライ麦の粉をこねて作ったパンの生地を焼く所です。これで、各家庭でパンが、やけ・・?」


「オレグ、それはとてもいい発明だわ。すぐに特許申請して、街に広げなさい。ヨーロッパの近代化に繋がります。」

「ええ、この私ですら、自分自身が怖くなった気がします。」


「このかまどを大きくして、鉄板を何か所にでも挿し入れる事が出来れば、もう、これはベーカリーになります。」


「貧しい農民はパンを買う事が出来ません。ましてや、ライ麦を製粉にしようと、水車を利用すれば、製粉の二十%は水車使用料として、納税しなければなりません。冬の蓄えが二十%も無くなれば、農民は生きてはいけません。」


「各家庭では、ライ麦を粉に挽いていますが、目が粗くてパンは堅くてまずいものです。」


「そうか~ここでも税金が高いのですね。」

「はい、ですが、水車を無料には出来ません。なぜならば、水車の維持管理にも多額の費用がかかります。」

「そうですか~。」

「トチェフは無料ですよ。トチェフは!」

「はい? はい!」



「実は私は、ライ麦を製粉にして販売をしようかと考えております。」

「ぜひとも実行なさい。」

「はい。」


「オレグ、この大きい丸い鉄の棒はなんでしょうか?」

「これはソフィアが私の頭を殴るための鉄パイプになります。」

「そうですか、ここで一回、こちらで二回、ここの部分で三回ですね。」

「ええ、とても痛いですよ。お蔭で随分と頭の作りが良くなりました。」

「ほほう~、」


 たまたまこの鉄パイプをルシンダから渡されて中空を見た。あ! 最初の煙突の考案時の記憶を思い出した。


「このパイプをもっと大きくしたら、煙突になる。これならば、ここから壁に伸ばして、壁に穴をほがせば・・・・・、もう、これは煙突になる。」


 オレグはルシンダを放り出して鍛冶場のカミルとレフの所へ駆けて行った。


「おい、カミル、レフ 。この鉄パイプの倍の大きさを作れ! すぐに作れ、なぁ、出来るだろう?」


「おい、レフ、出来るか、どうだい。」

「親方、作れますが、繋ぎ目はどうしやす。薄くて出来ませんぜ。」

「ふ~ん。この何倍もの広い板が必要だろう。ああして、こうすれば、して、こうすれば出来るな。」

「親方、そうは言われましても、理解されませんよ。」

「やっぱ、そうか。・・・・旦那、これくらいの広い板を、どこかで買われて下さいまし。その方が早く、楽に出来上がりますぜ。」

「そうか、買うのか。・・・・・・、だが今は出て行けないから無理だな。」

「そう、無理だね。」

「???・・・?」


「旦那、これは、薄鋼板、という名前です。これが世に出るには、まだ先でしょうから、幅が狭くて長い板を作りましょう。そうして捻じっていけば、

 極太のパイプが出来ませぜ。」


「おう、すぐに作れ。これはな煙突にするんだ。あの煉瓦を高く積み上げなくて済むんだぜ。どうだい、いいだろう。」


「旦那、高く買って下さいよ。」

「なにを言う。お前らは給料制だ。全部が無料だぜ。どうだい。」

「おい、レフ。実家に帰るぞ。」

「契約がまだ九か月も残っていますよ、親方は・・・・。」

「俺だけか・・・・・・・。」

「はい、そうですよ、親方だけが・・・・・・給料制です。」



 カミルが出来上がった見本の煙突を持って来た。


「オレグさん、出来ました。見てください。」

「おう、良くできたな。で? 見るのはこの小さな穴から見るのか?」

「いいえ、そこは叩き過ぎて穿うがした穴です、そこは見ないでください。」

「でも、ここからは煙が出そうだぞ。」


「物は試し! ですよ、旦那。」

「では取り付けてみるか・・・・・・・、おい、持てないぞ。」

「はぁ、重たいですね・・・・・。」


 とても重くて持てない。ブリキが出来るのは、数世紀も待たねばならない。手で打ち出す、叩き出すのは嫁の仕事か。だから均一には薄板が出来ない。



 隣の長屋にさっそく設置してみる。


「オレグさん、ここを直角に接続するのが難しいです。煙突は真っ直ぐがいいのですがね。」

「すると、屋根もほがす必要があるな。この壁に穴を空けるのが簡単で安く工事が出来るぞ。」

「そうですか~、明日までに作りあげます。」


 オレグは工事が楽な方の、横の壁に穴を開けて煙突を通すように指示した。かまどの上は、逆三角形の大きい部材が使われた。その上にこの煙突を差し込んで、かまどの所は完成する。


 天井近くでパイプを九十度振るのだが、カミルはL棒ソケットなる物を考え差し込み式にしていた。


「カミル! 重て~ぞ、早く壁に煙突を差し込め!」

「(旦那、うるさいです。)はい、すぐに出来ます。」


 これで試作品の煙突が出来た。


「レフ、種火を持って来い。」


 レフはバケツに入れていた種火をかまどに入れて小枝を載せた。


「あとは、ふいご、ですね。」

「ひ・ひ・ふー。」


 種火は明々と燃え出した。


「おう、実験だ、落ち葉を入れるぞ。」


 たくさん入れ込んだ落ち葉は、枝の火に覆い被り煙が出てきた。


「やったー成功だよ、カミル。」


 だが? 煙は煙突からは抜けずに部屋に漏れ出した。


「ケッ! 失敗か。おい、カミル、何か方法は無いか考えろ。」

「(それはオレグの仕事だろう?)ええ、そうですね。かまどの口を下にずらしましょう。たぶん、煉瓦一枚分ででも違いますよ。」


「オレグさん、この板を当ててみます。」


 レフは持って来た板をかまどの口の上に当ててみた。


「だいぶん違いますね。」


 ちなみに煙突は壁から横に一mほど出しただけだった。これだと、煙は天に登らないのだ。屋外でも九十度に振って煙突をさらに二m以上は伸ばす必要がある。だがオレグらには理解出来なかった。


「しゃ~ない。分解して今度は屋根をぶち抜くぞ~。」

「うひゃ~!」(もう勘弁して~)


 熱で熱くなった煙突を掴んで分解する。まずは横の煙突をL棒から外した。


「ギャシャ~ン」


 かまどの上の煙突が倒れて壁にぶつかった。


「おいおいおい、もっと丁寧にだな、こう?・・・・・・・あ、!」

「おう、嫌ですぜ、オレグさん。今度はなんですかい?」(俺、帰りたい)


「カミル、この煙突、斜めでもよくね~?」

「ホッホッホ~、そのようですな。では、・・・・。」

「へいへい、親方、すぐに壁、穴空けます。」


 レフは倒れた煙突が当たった所に穴を開ける。やや大きく空けるのだった。


「こう広く空けないと、煙突の座りが取れません。」

「ああ、レフは頭がいいな。関心したぞ。」


 かまどの逆三角形のふたから、斜めに煙突を立て、その先を真っ直ぐに外へ出す形になった。煙突が直進だから角の抵抗が無く、煙は問題なく排出される。


「今度は成功だよ。レフ、よく作ってくれたよ。」

「オレグさん、私にはお褒めの言葉は無いのですかい?」

「すまない、でかしたぞ、カミル。石工のシモンもきっと喜ぶだろうよ。」


 オレグは、石工のシモンを呼んで、かまどの形を統一することに決めた。


「シモン、お前の仕事を減らそうと思ってな、これを付ける事にしたよ。」

「うれしいですぜ。これで俺も石工の仕事に専念できます。」



 その夜に見た、オレグの夢である。



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