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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ

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第36部 農牧の農民の派遣  ありえない出来事!

 ジャガイモはリリーの魔法で持って来ていましたが、歴史の背景からはかなり外れますので、カブ(蕪)を持ってきました。カブはすでに栽培されいましたが、その利用価値は見出されていなくて、飢饉の時の臨時の食物として栽培されました。後世の18世紀になると、イングランドでは飼料として大量に栽培されました。ここから家畜の完全養殖へと発展します。


冬でも屋内で家畜が肥育されました。ジャガイモは15世紀になって、スペイン人が南米から、たばこ等と一緒に持ち帰りました。これが世界に広がって行きます。



 1242年6月21日 ポーランド・トチェフ



*)ライ麦の輸出 第七便


 マクシムとの約束の一万二千袋は、今回の輸送で終わる。残りは、ゴットランドまで運ぶことになる。その方がオレグとしても都合がいい。レンガと鉄材の輸入が急ぎで欲しいのだ。


「ボブ、今まで大変だったな。今回でグダニスクまでの輸送は終わりになる。次回は、ゴットランドまで運んでくれ。帰りの荷物もあるから、よろしくな。」

「おう、任せな。」


 ライ麦は今回は別にして、残りが五千袋がある。


 ここ最近のボブは明るくなって元気がいい。きっと、息子の顔を見ているからだろうと、推測が出来る。


「ボブ、次回でライ麦の輸出は終わるが、雇った人足はどうするんだい。」

「おうさの~、兄ちゃんから次の仕事が無いのなら、もうお払い箱さ。」

「そうか、そうなるわな。この俺もマルボルクから職人を多数雇っているから、給料を支払う余裕も無いからな。」


 二人の会話には元気が無かった。これに気づいたオレグは、


「ボブ、次の船で家族を呼ぶのだろう?」

 

 ボブは急に明るい笑顔を作る。ボブは三人で暮らせるのが嬉しいだろう。


「おう、その予定だよ。兄ちゃんが俺の家もこさえてくれたしな。この家で仲良く暮らすよ。だから、早く次の仕事を探してくれ。」

「よ~し、俺も頑張るさ!」



 と言うオレグは、目先の仕事は、東の草原に住むバイソンの捕獲だった。大きい牛だから当然肉も多い。このバイソンの飼育は豚に比較したら、はるかに楽なのだが捕獲と輸送が難しい。とりわけデカい牛の輸送は船ならば可能だが、船はおかを走ることはない。


「う~ん、早く牛の焼肉を食いて~。」



*)農牧の派遣、アントニ、トマシュ、ロベルト


 この三人には、馬、羊、鶏、野生の牛・バイソンの飼育を頼む予定だが、牧場の用意は出来ている。しかし、なにも飼育する家畜がいない。バイソンは捕獲すればいい。馬はどこからも引っ張りだこで普通に居ない。羊は購入が出来るが、数多くは居ない。鶏だけは購入できて増やせるが、人手は要らないのだ。


「オレグさん。バイソンを捕まえても輸送手段がありません。第一に道が無いでしょうが。どうするんですか。」


「すまない。なにせ素人の考えた事だ。あんたらでどうにかできないかい。」

「無理を言うな! 数名で出来る訳はないだろう。相手はでかい牛だろう?」

「しかし、一頭でも居れば肉がたくさん取れるのだからね。・・・おう、そうだ。捕獲の罠を作ってくれ。森に置けば何か捕まるだろうよ。」

「やっぱ、あんたはバカだ!」

「ああ、そうだな、旦那はバカだ。」

「これほどバカとは思わなんだ。」


 オレグは三人からバカ呼ばわりされた。資金不足と調査無しで失敗だった。


 森では鹿が数頭捕獲できた。鹿肉は柔らかくて美味しいという。



 三人からバカ呼ばわりされたオレグは、神の奇跡に遭った。


 1242年4月5日に、ドイツ騎士団とノヴゴロド公国が、エストニアのチュド湖で戦争をする。氷上の戦いと言われて有名になった。この時の騎馬がドイツに帰る途中でオレグの牧場で一休みをした。


 ある日、ロベルトがオレグの家のドアをやかましく叩いた。



「旦那! オレグの旦那。居ますかい? 旦那!」

「うるさいわね~、リリーハエ叩きを持ってきて。」

「五月蠅いのが来たの?」

「姐さん、漫才を続ける気はありません。一大事です。旦那を起こして下さい。」


「リリー、オレグを起こしてきて!」

「ふわ~い、待ってて、水車小屋まで行ってくる。」

「?・・・・旦那は水車小屋ですか?」

「あ、いや、直ぐに起こしてくるね。」


 リリーは、急ぎ着替えてゲートで水車小屋へと跳んだ。


「オレグ、大変よ、ロベルトさんが、ロベルトさんが、」

「死んだのか?」

「バコ~ン!」

「お目ざのキスよ。ソフィアには内緒だからね!」

「・・・?」

「オレグ、また寝たの?」


 オレグは強制睡眠を強要されていた。分り安く言えば、気絶させられた。


「もう、起きるからさ、バコンは止めてくれないかい。」

「早くして、家に戻るよ。」


 ロベルトが来てから、ものの一分でオレグはロベルトに挨拶をした。


「や~、おはよう。」

「旦那、大変です。馬が、馬が、生まれました。」

「おう、そうか。あの老婆が馬を生んだか!」

「バコ~ン!」

「お目ざのキスよ。リリーには内緒だからね!」


 オレグはロベルトと走って農場へ行く。ソフィアとリリーは隠れてゲートで跳んでいった。


 目と口と鼻を全開にして牧場を見たオレグは驚く。


 アントニは、


「オレグさん、耳も全開にして聞いて下さい。朝起きてきましたら、二十三頭もの馬が居ましたんですぜ。」

「あれ! 本物か? ・・・動いているから、本物だな。」

「ええそうですぜ、馬は逃げられないように柵のとびらを急いで締めました。」

「アントニ、よくやった。」


「でもどうしてですかい?」

「それは、きっと、リリーが・・・・・」

「リリーさんがどうしました?」

「ああ、リリーが話していたんだ。」


「後の作業は、分かるだろうな。」

「はい、旦那。馬を厩舎に入れる準備をいたします。それと、飼い馬桶の用意に柵の補強でしょうか。」

「あぁ、そうだな。馬の飼料も準備しておけよ。」

「馬具も下しておきます。それと、バイソンの受け入れの準備も万端にいたしておきます。」

「おう、頼んだぞ。村の連中にも頼んでいいからな。デーヴィッドに言って頼んでもらえ。俺は急ぎでいくから、よろしくな。」



 馬・二十三頭もの数が牧場に忽然と湧いていた。戦争で使われた馬が逃げて来たのが牧場で休息していた。一網打尽。オレグは三頭を販売して金貨百八十枚を得た。この金貨で鶏と羊を買えるだけ買った。(んな、バカな!)



 オレグは良からぬ企てを思いついた。港に厩舎を作るとか。後日には、実行されていた。




*)バイソン捕獲作戦



 以前にデーヴィッドはエリアスへ、東方のビャウィストクについて、広大な原生林ある草地に野生のバイソンが多数生息。と、手紙に書いていた。


「そうか、東方のビャウィストクだ。」


 抜き足でこの場を逃げようとしていたリリーを、オレグは呼び止めた。


「リリーさん、お願いがありますが・・・」


 リリーはこころの中で、そら来た! と思った。


「はい? なんでしょうか? 今日はオレグのお弁当を沢山作りますので、とてもお忙しいのですよ!」

「あぁ、気が利くな~。総員で六名だ。だから、お弁当は、沢山作ってくれ。」


「ギャ、揚げ足を取られた!!」

「うん? なんか言ったか。」

「ソフィアお姉さまと急いでお弁当を作りますわ、オホホホ~。」

「リリーお弁当は、三人分ですよ。良く考えて下さい。」


 リリーはすぐにソフィアの言葉の意味が理解できた。あのアントニとマシュ、ロベルトの三人をゲートで運ぶことは出来ない。


「ボブがまだ居るから、ボブも連れていくよ、四人分で頼む。」

「うん、分った。」


 リリーは大変面倒なことになったと、しょげてしまう。


「リリー、オレグのために頑張ろうね!」

「ええ、お姉さま。しかたありませんわ。暴れるバイソンをどうやってゲートに押し込むのかが問題です。」


「いいえ、反対ですよ。どうやってばれないように、バイソンを牧場に放すかですわよ。ま、オレグだから、考えているでしょう?」

「おうさ、そのためのボブさ!」


 オレグは、満面の笑顔を作っている。鼻の下がすでに顎までに達していた。


「あぁ、そうね。でも、ボブが可哀そうかしら。」


 ソフィアはボブが可哀そうというが、リリーには二人の考えが分からない。


 オレグはボブの所へ行くからと、歩き出した。リリーがゲートで送るよ! と言うも、オレグは歩くからと言った。ソフィアとリリーは館のエルザを訪ねる。


「エルザさん、東方のビャウィストクまでオレグと行きますの。それで、至急にお弁当を四人前をお願いします。」

「ええ、よろしくてよ。特大を四人前ですね。」

「はい、よろしくお願いします。」


 リリーとソフィアはずるをした。二人にはお弁当を作ることが出来ないのだ。


「ごめんなさい。お料理音痴だから許して!?」


 オレグは歩きながら捕獲の方法を考えた。


「リリーのゲートにバイソンを追い込むには、・・・・・、長いロープが有ればいいな。次は、ボブの船に檻の設置は・・・・時間と費用で却下!・・となると残るは船倉か。・・うん、この方法だ。ボブへの支払いは・・・金貨3枚でいいかな。むふふふふー!」


「おう、ボブ、居るか~。」

「おうさ! 難かようか。」

「その難か、だね。後でバイソンを数頭捕獲に行く。付いてきてくれないかい。日当は金貨三枚だ。」

「それはすごいな。喜んで参加するよ。で、なのをどうすんだい?」

「長いロープを二本以上用意ができるかい。」

「あぁ、船の係留用のロープは五本あるぜ。全部持っていくか。」

「五本か~、・・・あぁ、全部持っていく。」

「で、どこまで行くんだい。」

「東方のビャウィストクまでだ。沢山のバイソンが居るんだ、頑張って捕まえる。」


 あーでもない、こーでもないと、二人は嬉々として準備をしている。二人の用意が出来上がったころに、お弁当を持って跳んで来た二人。


「オレグ、とても大切なことだから、尋ねるよ、いい?」

「リリー、なんだい。その大切なことは。」

「うん、あのね、東方のビャウィストクは、どこにあるの?」


 オレグは頭を殴られたように、ショックを感じた。


「あ、ああ、あああ、あ~、一度行かないとリリーのゲートは使えない?!?」

「オレグ、理解出来たかな。今から行くけれども、帰りは明日の昼になるよ。だから、宿泊費も持って行ってね。」

「ああ宿屋代くらい安いものさ。すまないねリリー。」

「うん、いいよ。オレグのためだもの。でも、沢山の魔法を使うから、お腹が空くのよ、いいかしら?」

「ああ、いいよ。アップルパイを十枚でいいか。」

「上等よ。」

「じょうとう? とは、高いという意味か?」

「うん、いつもそうだったでしょう?」


「ボブ、すまないが一泊で行く。旅行の準備を追加してくれ。」

「おう、任せな。」


 オレグは牧場に戻りアントニ、トマシュ、ロベルトの三人に、


「明日、バイソンを買ってくる。牧場の準備を頼むよ。」

「柵の丈夫な方ですね。すぐに追加の柵と入口を作ります。お任せ下さい。」

「明日の昼過ぎになるからよろしくな!」


 物事を深く考えない三人で良かった。どうして、丸一日でバイソンを購入出来るのか、不思議とは考えられないのだろうか。


 ビャウィストクまでは、南東へ二百kの距離があった。リリーは魔法で空を飛び人の居ない所へ降りると、ゲートで三人を連れてくる。ひと飛びで十kとして、二十回の跳躍と飛行になる。リリーは十kほど痩せたかもしれなかった。無事にビャウィストクの宿屋にたどり着いた。


「オレグ、もうだめ。お腹が空いてもう動けない。」

「ごめんな、リリー。途中でアップルパイは売っていなかったものな。」

「そうね、でも、エルザのお弁当が有って良かったわ!」

「リリー、!!!!!!!、それ、言ったらダメでしょうが。」

「あ、ああ、あああ! もう、オレグには聞こえたかしら!」


 オレグは聞こえないふりをする。しかし、ソフィアの目にはオレグの態度でリリーの言葉が聞こえたと感じ取る。


「さぁオレグ! 泊りの手続きをなさい。でないとリリーが死にますわよ。」

「ああ、分ってるって! すぐに夕食も頼んでおくよ。ついでにエルザのお弁当も頼んでおくよ。」


 リリーはオレグの一言で、ドキッとした。奥からは、女将さんらしき人の声が聞こえた。


「エルザ! ちょっと、そこまで買い物に行ってくれないかい。お客さんから贈り物の購入を頼まれたのさ!」


 リリーは、


「まぁ、ここにもエルザが居るの?」


 オレグはしてやったりと笑っていた。


 夕食が終わって、女将さんらしき人が、バラの花束を持ってきた。


「リリーさん、これは、オレグさまからの贈り物ですよ。もしかして旦那さんですか?」

「はい、姉と私の二人の旦那さまです!?」

「まぁ~! うらやましいですわ~。」


「オレグ、ありがとう。元気が出るわ。」

「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~~ぇ!」

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」


 食堂に居る全員が大笑いをした。女将さんは、


「あらあら、まぁ、まぁ、どうしましょ。修羅場なのね!」


 今までオレグはソフィアに花束を贈ったことが無かったのだ。ソフィアの怒りは収まらない。

「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~~ぇ!」

「なにわめいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ殺すぞ~」


 奥からお腹の大きい女の人が出てきて、ソフィアに謝ったのだ。


「うちの妹が大変失礼な言を言いました。お詫びを申しあげます。」


女将さんは、一杯の葡萄酒をソフィアに贈った。


「そう、ありがとう。でもまだ足りないわ。オレグお金を払いなさい。」

「女将さん葡萄酒の追加を十杯お願いね。」


「はい、たくさんのご注文、ありがとうございます。」


 奥からは、


「お前よくやったわ。褒めてあげるね!」



 この一言を聞いたソフィアは、ケラケラと大笑いをした。自分は騙された! と思ったのだった。(ごめんね! オレグ。)


「はい、葡萄酒ね。ごゆっくりとどうぞ。」


 エルザはそう言って五回に分けて運んできた。



 追加の十杯の葡萄酒は、ソフィアが四杯、ボブが三杯、オレグが一杯を飲む。リリーも1杯だ。テーブルには、残り一杯がある。誰も手を出さなかった。


「あら、みんなさんは、根性無しなのね! 私が頂くわ!」

「わ! 貴女は誰? なの?」


 ソフィアはとても驚いて悲鳴に近い声を上げた。リリーも一瞬で構えていた。


 年の頃はソフィアよりも少し年上か。一人の女がこのテーブルに乱入した。


「私にも、葡萄酒を追加してちょうだい。いいかしら。」


 はい、と言ってエルザが急ぎ持ってきたのだった。


「お待たせいたしました、ご注文の葡萄酒でございます。」


 オレグは気づいた。エルザは、今、ございますと言ったのだ。俺の時は違う。ごゆっくりとどうぞ、だった。身分が違う? 貴族か? と、オレグが気づいたが、疲れからかこれ以上深く考えなかった。同時に、少し離れたテーブルには、目つきの鋭い二人の男が座っていることにも・・・。



「こちらの御嬢さんが、リリーさんですね。ではこちらの方は、なんとお呼びしましたら、よろしいでしょうか。」

「はい、私は姉のソフィアといいます。」

「貴女がソフィアさん。あぁ、ごめんなさい。私は、ルシンダといいます。よろしくね。」


 このルシンダという女性は、オレグにもそうだが、二人にも矢継ぎ早に質問を投げかける。そのくせ当の本人は、自分の事は話さない。


「そうですか、ご旅行でこのビャウィストクを訪問されたのですね。」


 オレグはこの女性にどのように話していいのかが分からず、少し困ったように話した。


「ええ、このビャウィストクが将来発展するのかを見定めしたかったからです。着いてそうそうに、ここの女将には、してやられました。こちらの方々は愉快な人が多いのでしょうか。」

「同じポーランド人ですわ。違いはありません。」

「そうですか。ここは水と森がとても豊かです。農業と酪農にはとても向いている土地だと思いますよ。」


「やはり貴方にも、そのように見えますのですね。」


 オレグは失礼だったらどうしようか、と思ったが、意を決して尋ねた。


「失礼ですがルシンダさまは、ここの領主さまでしょうか?」


「いいえ、私もビャウィストクの様子を見に来たのですよ。最近は、モンゴルの侵攻が多発していますでしょう? ですので、この地が侵略されるような土地かどうかを知りたいだけです。」


「そうですね、農業が主体でしたら侵攻しても得るものがありません。モンゴル人が狙うのは大都市ですから、ここは大丈夫でしょう。」

「う~ん。・・・・でしょうか。」


 オレグは、いつの間にかルシンダに乗せられていた。葡萄酒も飲みだしていたのだ。問題は酒の方ではない。経済論戦の方だ。だがルシンダはここからが論戦の焦点となるところで、話を切ってしまった。すかたんを引いたくじのように、オレグはがっかりとした。


「申し訳ありません、オレグさま。今度どこかでお会いしましたら、ゆっくりと続きをお願いしますよ。」

「はい、でもそのような機会はまだ先かと思いますが?」


 最後のオレグの言葉には返事を返さずに、


「ソフィアさん、リリーさん、お会いできて嬉しかったですわ。また、お会いしましょうね。」


 ソフィアとリリーは一言だけで最後まで無口で通した。


 そういいながらルシンダは、一人で部屋に戻っていった。オレグとソフィアとリリーは、このルシンダの才能に気づかなかった。たぶんゲート酔いで頭が働かないからであろう。


 才能とは変身の魔法である。ただし、この魔法はゾフィのような完全模写ではなくて、簡易なもののようだ。


 翌朝、ルシンダと再会した。


「ほら、またお会いできましたでしょう?」


 オレグは笑いながら、はい、と返事を返して別れた。ルシンダはそんな四人の後ろ姿を見送った。そして一言。


「そう、そっくりでしたわ。」

「ルーシーさま、私たちもでかけましょうか。」

「はい、そうしましょうね。」


 このルシンダと二人の男はどこに行こうとしているのだろうか。



 このビャウィストクという街は、日本で例えると北海道のような感じか。ライ麦やジャガイモの生産が多くて酪農は羊が多い。羊毛と麻の生産が多い工業は発展しなかった。


 ロシアで工業が発展する条件は、鉱物の算出が絶対条件だ。内陸部のロシアの都市は軍需産業しか大きな発展が無い。そういう意味でもポーランドも同じではなかろうか。



 お弁当を持ってバイソンの捕獲に向かったオレグたち。


「リリー、どうだい。牛の群れが見つかったかい?」


 ゲートでみんなを呼んで、


「うん、まだ先になるみたい。所々に奇妙なトーテンポールが立っているわ。コロポックルみたいな顔の彫り物がしてあるわ。」

「コロポックルよりもバイソンだ。次に案内してくれ。あ、捕獲には森の木々があった方がいいから、もりの近くで見つけてくら。」

「OKヨ、オレグ。任せて。」


 暫く空を飛んでいたリリーが戻ってきた。


「先の森に小さい群れが居るから、そこへ行くね。」

「ゲート!」


 リリーはみんなの前にゲートを開いた。


「ここだよ。あ、オレグ。木にロープを繋いで張るんだね。」

「そうだよ、先の方でリリーがゲートを開いて待っててくれよ。この群れを全部追い込むからさ。」

「うん、分った。でも、ボブにも一言断った方がいいわよ。まだ何も言っていはいないでしょう、が。」


 オレグが頭をカキカキしながら、ボブに話をした。


「な~ボブ。金貨で四枚にするよ。ここのバイソンをボブの船に送るよ、いいかい?」

「ざけんな、殺すぞ・・・兄ちゃんには世話になったな。これでお別れだ。」

「金貨、六枚。」

「いや、十枚だ。船が壊れたら新造船な!」

「分ったよ・・・・・。」


 ボブに捕獲の方法を教える。ボブはすぐに理解して、オレグにロープを張る位置を指示した。Vの字の形にロープを張った。その先には、リリーがゲートを張って待つだけだ。


 ソフィアは布を広げてくつろいでいる。そんなソフィアにも仕事があるとオレグは言う。ソフィアはすぐに理解した。


「もう~一休みして間抜けなオレグを見ていたかったのに~。」

「なぁ、ソフィアさん。二言でいいよ!」

「うん、分ったわ。大きい声で頑張るわ。」


 遠くでボブが大声で叫んでいる。準備が出来たらしい。ボブは左手の方から自前の顔の悪さで、バイソンを中央に追い出した。オレグは左の方からバイソンを追い立てた。少しずつバイソンがソフィアの前に集まる。少しして、


「ソフィアさん、お願い!」


 ソフィアは、を尖らせて、


「ぶーーーーーーーー!」

「ソフィア、違うだろ?」


「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」

「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」

 


 オレグとボブは、急いでバイソンを追いかけて、リリーの所へ走った。


「ウォ~ォ~ オ~~ォ ウォ~~~」


 これで済んだと思うオレグだった。追われたバイソンは次々とリリーのゲートに吸い込まれていく。


「やったぜ、リリー。俺たちもトチェフのボブの船に跳んでくれ!」

「オレグ。明日から三日間の休みを要求する。お姉さまも一緒だよ!」

「OKよ。お小遣いも出しますよ。温泉に行ってきな。」


 リリーはゲートでみんなをトチェフへ送った。ボブの船に着いたのは、ボブとオレグの二人だった。


「くそ~、あの二人はもう温泉に行ったか~!」


 壊れんばかりの船を見たボブは、顔が青くなり次に赤く染まった。


「オレグ~、やっぱり殺したろか~。」


 オレグは牧場へ逃げる。ボブはかんかんに怒ってオレグを追いかけた。


「おう、アントニ、トマシュ、ロベルト。居るか~。」

「ああ、旦那。待ってましたぜ。」

「おう、バイソンを買ってきたぜ。ボブの船の中だ。至急村人を集めて応援を頼む!」


「みんな~、いいか~。」


 牧場の小屋からは、村人が三十人ばかし走って出てきた。


「おう、港まで、手筈通りに頼むな~。」

「おう!!!!!!」


 村人は手にロープを持って走りだす。


「そっちから引っ張れ! その子牛はお前で大丈夫だろ、こっちを手伝え!」


 夕方には作業が完了した。


 バイソンの子供を捕獲すると言ったが、子牛は十頭が捕獲できた。親はなんと二十頭もの数だった。


 結果、大成功だった。


 二人を ビャウィストクに残してきた。ボブのロープは翌朝に戻っていて、ボブは朝早くからライ麦を積んで出航していた。



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