第28部 イワバの領主、ピアスタお嬢さま
イワバの都市の領主は、ピアスタお嬢さま。
イワバという都市は、大都市エルブロンクの貴族の衛星都市になる。マルボルクは、イワバの管理領地。 ウィスト家の双子の長女。名はピアスタ。イワバは、森と湖に囲まれたとても綺麗な都市である。
ウィスト家のピアスタ=領主
デンボウスキー家の家族。マルボルクの領主代行のエルブロ。
長男のユゼフ ユゼフの嫁・バーシア。
妻のベマと長女のグラマリナ。 執事は、ギュンター・グラス。
1242年4月29日 ゴットランド島、ヴィスビュー
*)ヴィスビュー
オレグはバルト海・ゴットランド島、ヴィスビューに着くなり、ハンザ商館のマクシムを尋ねた。ちょうどネーデルランド(今のベルギー)のブリュージュから帰ってきたばかりだという。
「これは、オレグさん。お久しぶりですな。」
「はい、マクシムさん。今日のお勧めはなんでしょうか?」
「何もありませんよ。ブリュージュは、造船業が盛んですので、船の建造に行っていました。私専用の船が手に入りましたので、オレグさまにはぜひともご利用をお願いしたいものです。」
「なんだか景気がよさそうですね。羨ましい限りです。今日は、馬車を建造したいので、その材料の一式と鉄の板材が欲しいですね。」
「はい、至急ご用意いたします。鉄板の切断の工具はいかがいたしましょうか。」
「そうですよね、それもお願いします。」
マクシムは本当に帰ってきたばかりのようだった。女史のアナスタシアさえも顔を出さなかった。
「マクシムさま、お忙しいそうですので、これで帰ります。明日お支払に来ますので、書類の用意をお願いしておきます。」
「分りました、今日は徹夜ですね。頑張ります。」
「えぇ、よろしくお願いします。」
オレグは最初に宿泊した宿に向かう。すでにボブは宿屋の手配はしているだろう。夕方からパブで飲みまくる。リリーが底なしになっていた。飲んだ酒は、何処に流れているのだろう。
「おう、ボブ。嫁さんの家は決まったかい?」
「そうさな、里帰り出産だよ。住む家に金が掛らないからな。」
「それはいい。ボブには祝儀にトチェフまでの、金物の輸送を頼む。マクシムの所へ、朝早く行くから一緒に来てくれ。」
「おうさ、任せな。」
オレグはボブに荷物の積み込みとトチェフへの輸送を依頼した。翌日にハンザ商館へ行き、マクシムの請求金額を支払い、積み込みなどの指示は、マクシムから受けてくれるよに頼んだ。
マクシムからは、ハンザ商人の時事討論会が催されるので、参加するように勧められた。南や東が怪しいらしい。
「ボブ、金物は水車小屋の軸受けの鉄板だ。その積りで品定めを頼んだよ。」
「おう、任せな。で、兄ちゃんはどうすんだい。」
「エリアスに手土産を買って帰るよ。すぐに輿入れだろう? 留守には出来ないさ。リリーの魔法で帰るよ。」
「そうか、俺も早く帰ってくるよ。」
オレグは、ゴットランド島、ヴィスビューに発つ前に、港の小屋をボブの新居に決めて、建設の続きを頼んでいた。屋根と壁さえ完全にリフォームすれば、後は部屋の間仕切りの壁の建付けだ。その他は流用で済ませる。
帰ったオレグの最初の仕事は、ボブの家を完成させる事だった。家具はボブに買って来るように言ってある。二人で決めてその内に戻るだろう。
1242年5月1日 ポーランド・トチェフ
*)イワバの領主、ピアスタお嬢さま
ウィスト家の双子の長女。名はピアスタ。性格は自由奔放で先走りの傾向が強く、思い立ったら吉日? だというから従者は大変だろう。
悪く言えば、鉄砲玉。良く言えば、行動的でスマートなお嬢様?
イワバは、森と湖に囲まれたとても綺麗な都市である。イワバという都市は、大都市エルブロンクの貴族の衛星領地になる。マルボルクは、イワバの管理領地になる。次女のルーシーは本家の都市のエルブロンクで父と二人で生活している。
いよいよ明後日になった。グラマリナがエリアスに嫁いで来る日だ。女の三人は忙しいだろう。デーヴィッドは色々と指示を出していることか。エリアスは、浮かれた顔をしているだろうな。
「なぁ、ソフィア、リリー。二人には結婚式のお手伝いをお願いしていいか?」
「うん、綺麗なドレスを頂いているから、当然でしょう? 任せてオレグ。」
「とても助かるよ。俺は村の美化に努めてくる。」
「オレグ。ビスワ川の横断はどうするの? あの小さな小舟でいいの?」
「たぶん、ボブが間に合うさ。ボブが居ない時には、小舟だね。」
リリーは、あまりいい顔をしない。
「ふ~ん。それでいいのかな。間に合わないと思うけど?」
「なぁ、リリー。小舟ではまずいかな。ボブに帰る時間を訊いてきてくれるかい?」
「すぐに訊いてくると言いたいけれども、オレグは考えてよ。いつここに戻ったのさ。私は大きな船は運べないよ。」
「あ! そうだよな。この俺もボケたのかな。俺たちはリリーのゲートで跳んで戻ったのだよな。」
「でしょう? だったらボブはまだ3日はかかると思うわ。」
「?・・・?・・・・。?」
「大きな船? なぁ、リリーはさ、小さな船ならば運べるのか?」
「そうね、出来るよ。この際だから、川の往来の船を新調したらどうなの。」
「よし、リリー、すぐにグダニスクへ出発だ。」
「うん、いいよ。ソフィアはどうするの?」
「そうね、行っても何も出来ないから、館でお手伝いをするわ。」
「うん、分った。明日には戻るよ。待っててね。」
「いや、俺はすぐにでも戻りたいのだが、出来ないのかい?」
「当たり前でしょう? 人がたくさんいる前で船を消せると思っているの? オレグはバカじゃないのかな。」
「ソフィアさん、俺を慰めてくれないかい。大いにしょげているのだが。」
「引っ叩いて欲しいのかしら。OKよ、オレグ、任せて!」
オレグは怖くなり急いで外に出た。リリーのピンクのバラの花が綺麗に咲いている。色、艶ともに最高だ!
「ああ、家具職人が欲しい。まだ家具が何も無いものな~。馬車の製造の職人も攫ってくるか。」
オレグとリリーはゲートで、グダニスクへ小舟を買いに行く。
「へい、毎度ありがとうございます。」
「これ、贈り物だから、包んで頂けますか?」
「はい、おリボンはどうしますか?」
「赤のリボンでお願いね!」
「お嬢様の頭にですか?」
「いいえ、船にですわ!」
1242年4月30日 ポーランド・マルボルク
建造されて間もないと思われる小舟を、夜中に移動させた。明日の朝、主人は驚くだろう。船を川に浮かべてマルボルクへ行く。
人数の照会が目的だったが、
マルボルクからは、嫁のグラマリナは当然だが、領主代行のエルブロと長男のユゼフ。妻のベマとバーシアと、数名の従者がついてくるかと思っていた。
ここで事態が急変した。ウィスト家の娘、ピアスタお嬢さまも挙式に参加するというのだ。さて、どうしたものか。
ピアスタとソフィア姉妹が会うことになる。ピアスタが式に参加するのは、あのピアスタの亡き母のソフィアが、オレグの家族のソフィア姉妹と、そっくりだというのが伝わったためであった。誰が話したのかは関係ない。
これはただ事では済まされなくなった。事実、ピアスタはすでに、エルブロの家に滞在していた。オレグは、ギュンターに挙式参加人数の照会に来たので、会わずに帰ってきた。また、付き添いの人数も尋ねた。
「オレグさま、申し訳ございません。領主さまのピアスタお嬢さまが挙式に参加されます。また、侍女は参加させる必要はございませんので。ピアスタお嬢さまの追加をお願いします。」
「領主さまが参加されて問題があるのですか?」
「はい、ピアスタお嬢さまは、お母様とそっくりなソフィア姉妹に会われるのをとても楽しみにされてあります。」
「?・・・・・。」
「ですが、ソフィアさまが、ピアスタお嬢さまと会われましたら、一大事になるかと思われます。」
「わ~、どうしよう。リリー、どうしたらいいかな。」
「私に振られても、どうしようもないわよ。オレグがどうにかしなさいよ。」
「そうだよな。今後のお付き合いが生じて大変だろうな。」
この自由に生きるピアスタが、エリアスとグラマリナの挙式に来るという。ソフィアの事を知ってしまったから、挙式に不参加とは出来なくなった。
ギュンターは、ビスワ川の渡船の心配をしていたので、オレグは新造船を買ったことを報告した。
「まことにありがとうございます。この前の、エリアスさまのように転落されたら一大事でございます。」
「あぁ、あれはここのリリーが落としてくれたのを、もうお忘れですか?」
「そうでした。」
「今度の船は少し大きいので、安心して川を渡れます。」
オレグはエルブロの館を出ると、リリーを急き立てた。
「早く帰ってソフィアに相談だ。リリー、船は置いていくからゲートを頼む!」
「直接、館がいい? それとも家がいいかな。」
「家で頼むよ。ソフィアとは家で話すからさ。リリーは俺を家に置いてソフィアを連れて来てくれないかい。」
「分ったわ、そうする。」
オレグとリリーはゲートで跳んだ。オレグは思い悩んでいたから、ゲート酔いはしなかった。リリーがソフィアを連れてくるまで考えた。
オレグは悪い方向の思考に傾いている。当然か。
1242年4月30日 ゴットランド島、トチェフ
「オレグ、どうしたの? また悩み事かしら」
「あぁ、そうなんだよ。困った問題がな。ウィスト家の双子の母のソフィアにさ、ソフィアが似ているというからね。あのピアスタさまが挙式に来るというんだ。挙式に出なくてもきっと会わせろというに決まっている。色々と問題が出てくるんじゃないかい?」
ウィスト家の双子の母のソフィアは、十年ほど前に亡くなっている。双子のピアスタとルーシーは小さい時の、多感な時に死に別れをしているから、きっと母への思い入れは大きいと考えられる。
「それは、バレたのならば避けようがないわ。当たって砕けろ! かしら。でも姉妹で似ているとなると、どうなるのかしらね。」
「執事のギュンターさんは、何も言わなかったが、申し訳なさそうにしていたよ。ピアスタは、気まぐれという性格だし、挙式が秋から春へ変更になったのもきっと、あのお姫様のせいだろうよ。」
「ああ、なるほど。急に延期になりましたものね。」
顎に手を当てて考えていたオレグが急に、
「では、ソフィアのドレスはどうしたんだろう?」
「あぁ~!!!!きっと、お姫様のお古だわ。」
「そうだろうな。お古はリリーの方で、ソフィアには新品だよ。姫様が特別に作らせて、納期が4月だったのだろうな。」
「では、ますます会わないと失礼になりますわね。」
「んだな!」
オレグとソフィアの会話にリリーが入った。
「そうだね。覚悟を決めましょうか。お姉さま!」
「ねぇ、お姉さま。ペンダントの宝石が光っているのかしら?」
「ええ、そうなのよ。二日くらい前から光り出したわ。でも、紫水晶の一個だけなの。ダイヤも気持ち光だしたかしら。意味が判らないわ。」
リリーは黙り込んで考え出す。ソフィアの運命というか、ペンダントの目的というか、ソフィアはペンダントの宝石を集めるのが目的である。ならば、紫が光るという事は、ピアスタさまは、紫の巫女となるのかしら。
「お姉さま、ピアスタさまはきっと、紫水晶の巫女ですよ。」
「ええ!!!??」
ソフィアは大きい声を出して驚いた。
「そうなのかしら。紫は前世で双子の娘の三女なのよ。・・・・そう考えると?・・そうね、領主のピアスタお嬢さまは双子ですわ。」
「運命の出会いかしら!」
ソフィアは、黒い台座の中心にダイヤを嵌め、周りには宝石を鏤めたペンダントをしている。その内の1個が紫だ。対になるのがピンクになる。
「どうしようオレグ。私たちが会って手を取れば、ピアスタは気絶しちゃう!」
「ソフィア、ピアスタさまが気絶したらどうなるのかい。」
「う~ん、多分前世の記憶が蘇るわね。同じように私も倒れて鮮明な記憶が蘇るかしら。」
「おいおいおい、待ってくれよ。二人して前世が母娘と判ったら、もうお姫様はソフィアを離さないよ。それは困る!」
「オレグ、短い間だったわ。元気で暮らしてね。もうお別れよ!」
ソフィアはオレグと別れると思うと、泣けてきた。リリーも神妙な面持ちになる。
オレグは、
「俺と別れるのが、そんなに嬉しいのかい。この薄情モノ。」
「あら! バレタ?」
「まぁ~、お姉さまはヒドイですわ。リリーを騙しましたね。」
「ごめんね! リリー。」
「フン!・・・だ!」
*)リリーとソフィアのチェンジリング作戦
オレグは考えて、
「ソフィアとリリーが入れ替わればいいのだろう? リリーとお姫様が手を繋いでも、何も無いだろうしさ。」
「そうね、オレグ。何も起こらないよね。・・・お姉さま、この際、入れ替わりをいたしますか?」
俺たちは、旅の途中で宝石を探す事は三人とも判っている。だが、巫女と会って前世の記憶が蘇るとは、想像も、考えもしていなかった。
オレグは、
「ソフィア、お前の綺麗なドレスをリリーに着せてくれないかい。どうしてもイヤな時は、リリー! お古で頼むな。」
二人は顔を突き合わせて、睨み合う。オレグには、嫌な予感がしてならない。
ピアスタ=紫
ソフィアは、黒の台座に宝石を鏤ちりばめたペンダントをしている。中心にダイヤを嵌め周りには、ルビー、サファイヤ、琥珀、エメラルド、水晶、紫水晶、ヘリオドール、ブルートパーズ、ヒスイ。他に3個が欠落していて穴だけが残っている。欠落の3個が何か分からないが旅を続けて探すのだ。




