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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ
26/257

第26部 アイネの訪問  

ウィスト家のピアスタ=領主  

デンボウスキー家の家族。マルボルクの領主代行のエルブロ。妻のベマ

長男のユゼフ ユゼフの嫁・バーシアと長女のグラマリナ 



 1241年9月20日 ポーランド・トチェフ


*)リリーの魔力の枯渇


 リリーが、時々覗いている小瓶がある。それは、ノアは良く知ってはいるが、オレグとソフィアはまだ知らなかった。このリリーの魔法で、ゲートを港の建設や長屋の建設で多用していたのだった。小瓶の魔法が切れたのだ。


「もう、オレグったら、私の魔法の源泉が無くなっちゃうから。・・ほんと、あと少しだわ。どうしよう。アイネさんはまだ来れないのかな。バラもまだ少ししか咲いていないのよね~」


「ソフィア、怒らないで聞いてくれる?」

「どうしたの? リリー。何か心配事よね。また、オレグが悪いのだわ。」

「うん。」


 リリーは、アイネの魔法の源泉が、途中で切れたと、ソフィアに報告した。


「もう、リリーは便利屋さんだから、働き過ぎたのね! オレグには、苦情と十条を言い聞かせないといけないわね。」

「ねぇ、ソフィア。苦情の十条とはなんなの? 十一条を突き付けて、発条させるの?」


 発条とは、バネ、ぜんまいのことである。ここでは、ぴょんぴょんと、跳ねて飛んで逃げることを指している。


「そうね、その一、リリーを可愛がること。その二、リリーを労わる事! とかだよ。これを十ヶ条にして、オレグに突き付けるのよ。」


「ソフィア、それだけでは足りないよ? リリーは本当に参っているからね。もうくたくたなのさ! 二十条位に増やしてよ。」

「ノア! あんたは知ってて黙っていたの?」

「そうさ、俺はそれほどお人よしじゃね~よ。バーカ!」

「ま、ノアったら。そういう事はオレグに言いなさい。今日は家族会議だね。オレグを縛ってでも席に着かせる必要があるわね。」


「うん、そうだね。」


 なにも知らないオレグが、長屋の建設現場から帰って来た。当然三人は機嫌が悪い。いい顔はしていなかった。


「おう、帰ったぜ。?!?・?。なんだ? どうしたんだよ。」

「オレグ、驚かないで聞いてちょうだい。リリーが死にそうなのよ。これもオレグがこき使うからよ。どうするのよ。このままでは、リリーは小人になって、消滅しちゃうわ。」

「リリー、そうなのか?」

「オレグ。ごめんなさい。本当なのよ。リリーの魔法の源泉がもう無くなるのよ。無くなったら、天国に行くだけね。」

「そうか、リリー、世話になったな。天国で俺を見ていてくれ。」


「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~~ぇ!」

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」

「もう叩いたじゃないか。酷いよ、ソフィア。もう、怖い顔をしないでよ。」

「お前がそうさせるのだろう? 違うか? あ?、あぁん?」

「はい、すみません。」


 ソフィアは思いっきり、オレグをひっぱたいた。ノアは呆れた顔を作る。リリーは気休め程度に笑ってくれた。


「ああ、痛かった。で、リリー、何か魔法の補充方法が有るのだろう?」

「あ、うん、あるよ。あの、アイネさんが来てくれたらね!」

「あぁ~、それで一生懸命にバラの花壇を作り世話をしていたんだね。そうか、そっか。」

「うん、そうなんだ。アイネさんが来てくれなかったら、魔法が使えなくなる。もちろん死んだりはしないわよ。」


 翌日、オレグはバラの木に水をやった。それから、十二日ほど過ぎた日に。




 1241年10月2日 ポーランド・トチェフ



*)アイネの訪問


 秋口からリリーの様子がおかしいと思っていたが、リリーは別に何ともないよと、言うからその言葉を信じていた。ソフィアに尋ねても、そうね~、女の子の秘密でしょう? と、気にも留めないようだった。


 リリーから、相談があるまでは、かように思っていた。


 リリーは、小さいながらもバラの木を植えている。こまめに肥料と手入れを行っていた。リリーに、未来を見通す力があったのか、オレグ一家いっかの家の横に花壇はあった。しかし、逆の事が事実のようだ。この花壇を見て、エリアスがここにオレグの新居を作らせたのだろう。場所的にも、領主の館に近くて、地方へ延びる道路沿いにあるし、長屋の隣でもあったのだ。


 オレグ一家は、5月2日にこのトチェフの村に着いた。とすると、リリーは間髪を入れずにバラの苗を植えている事になる。この事は見える所に植えているから、公然の事実だったが、ソフィアにもオレグにも何も話してはいない。


 暑い夏の時期を過ぎたから、花も1輪、2輪と咲き出した。蔓バラは小さい花が、多数咲き出している。土は豚さんのフンが混じったものを、運んだらしい。敷き藁もライ麦の束を丁寧に敷き詰めている。


 リリーは、花が咲きだしたら毎日水を与えに来ている。


「バラさん、きれいに咲いてね!」


 祈りにも聞こえる願いをバラの花に投げかける。そんなリリーに、ソフィアは声をかけた。



 ややふさぎ込んだ様子のリリーに対して、ソフィアは白々しく話しかける。


「リリー、きれいに咲き出したわね。葉っぱも茎も緑が鮮やかで、元気だわ。」

「うん、ありがとう。ゴットランド島のお庭のように、育てるんだ。お花を摘んだりしたら、ダメだからね!」

「あら、残念! お姫様のブーケにしようかと、考えていたんだ。・・だめ?」

「当然、ダメです。これは私の命ですからね!」

「はいはい、分りました。でも、これは何をしているの?」

「うん、お花の花壇の名前をここに書いておくのよ。」


「リリーの魔法の花壇! よ、か。そうなんだ。リリーの魔力の根源かしら。」

「そうだね。」


 それから、十日ほど過ぎた日には、バラが満開になっていた。小さなつぼみだったものまで、全部が綺麗に開いていた。


 これを見たリリーは、驚いたのか、不思議だったのかは、判らないが、暫くは身動きもせずに眺めていた。


「ちょっと、行ってくる。」


 リリーはそう言って姿を消した。境界の魔法で異空間に行ったのだった。


「ニャ~ン! ニャン!」

「こんにちは! 不思議なお嬢さま」

「ワッ!」


 白と緑のワンピースを着た綺麗な女の人が現れた。


「きれいに咲きましたわね。これなら合格よ!」


 ソフィアは驚いたために、すぐには名前を思い出せない様子だった。ここにオレグが居たらすぐに答えを出しただろう。


「・・・・・あっ!! あの、「わ~、ドイテ!どいて。キャー!」の人!?」

「ずい分な紹介の仕方ね?」

「アイネさんですね。」

「はい、アイネですよ。ここに呼ばれて来たのですけれども、あら? 不在かしら。」

「途中ですれ違ったのだよ。もう、間抜けなアイネだよ、まったく。」

「わ! なんだ? 猫が喋った? ね、ね、そうなの?」

「そうだよ、まったく同じ事しか言えないのだね!」


 黒ネコが小路の真ん中に立っていて、バラの垣根を見て鳴いている。


「キキちゃんね! 久しぶりだね。」

「ニャン!」


 と、大きい声で鳴いた。すると、リリーが姿を現した。


「よかった、来てくれたんだ。探しても見つからないんだもの、とても心配したんだからね!」


「うん、ごめんなさいね。綺麗なバラの花が咲いていませんと、訪問が出来ませんのよ。ずい分と待たせたかしら?」


 リリーは潤んだ目をして、アイネを見ている。小さな妖精の身体から、いつもの子供の姿のリリーに変身した。アイネは、終始無言だったノアに声を掛ける。


「ゾフィ、だったかしら。お元気のようですね。」

「おう、俺は、・・私は、いつも元気ですわ。アイネさまには、ご機嫌悪そうで、なによりです。」

「そっか、ノアは私を嫌っているのね。よく判るわ。」


 ソフィアが二人の会話に入って、


「あら、ノアは、アイネさんが嫌いなの? どうしてさ。」

「俺は、こいつに殺されるんだ。嫌いなんだよ。早く帰れ!」


 リリーは、この意味が解らないのだ。


「ねぇ、ノア。どうしてアイネに殺されるの?」

「ああ、嫌だ。これはお前が生れる時のお約束なのだな。」


 お前とは、リリーのことである。


「私が、生まれる時の約束?・・・それは、何かしら!」


 と、リリーは知らない様子。


 アイネは、ソフィアに向かって、


「ねぇ、ソフィアさん。おうちはどこかしら。お庭も見てみたいわ。」

「はい、今は、丘の上の館に居候をしております。ここの建設中の家が、私たちの新居になるのです。」

「まぁ、そうですの。この寒気かんきがよろしい家ですね?」

「そうですよ。換気がいい! と、言って下さらないかしら?」

「少しお邪魔させて頂きます。」

「キキ! お手伝いね。三回まわって、ワン、と言うのですよ。」

「私をバカにしているのですね?」


「私の、(カニングクラフト=賢者のわざ)をお見せいたします。リリー、家に入って下さらないかしら。」

「はい、家の中ほどでいいかしら?」

「では、ノア。あなたは、リリーの後ろにお願いね。」

「フン! 嫌だね。また生き返らせてくれのかい?」

「そうね、それもあり! だね。そうしましょうね!?!」

 

 アイネは緊張した面持ちで、建設中の家の前で、呪文を唱える。ソフィアにはまったく意味が解らないままだ。


「この世界の理を改変する。われ、亜衣音アイネが命ずる。風の息ぶきをバラの花に与えん。このバラの蔓が千変万化になりて、家にならんと、欲す。」


「キャーッ」


 若い女の庭師さんが垣根の上を飛んだら、バラの花が家の壁に” 蔓が家の柱となり、バラの葉っぱが屋根となり、家が完成した。


 ソフィアは、悲鳴を上げて驚く。また、すぐに驚くのだった。


「私は、ゾフィーよ。よろしくね! お姉さま!」


 確かにゾフィはソフィアに似ているから、歳の離れた妹で通せた。しかし、このゾフィ? は、もうソフィアと変わらないほど成長した女になっている。ソフィアそっくりだった。


「双子? なの。ノアは? リリーは、どうしたの?」

「ごめんなさい、お姉さま。私がリリーですの。ノアは私の中に入っていますから、たまには姿をお見せします。ここは、あらあら・・。」


 ソフィアは空いた口がふさがらない。驚いて腰を抜かしたのか、その場に尻餅を搗いて倒れる。これに驚いたリリーが途中で言葉を切ってしまった。


 アイネは、まだ呪文を唱えていた。もう最後だったのか、声が小さくなって、最後は、「この家族に幸あらんことを!」と、聞こえた。


「さぁ、ゾフィ! このバラの苗を沢山増やして下さいね。それが、貴女の魔法の源泉になりますから。いいですね。」

「はい、判っております。この村中に増やしてみせます。」


 ソフィアは、大きく成長したリリーをオレグには、どう説明しようかと思い悩む。そして、顔をアイネに向ける。


 アイネは、


「はい、この責任は私が引き受けます。」

「リリー、ここにオレグさんを呼んでくださるかしら。今のあなたなら簡単に出来ますわ。思い描くだけですのよ、やってみて下さい。」

「はい、実行してみます。」


「わ~、なんだ、ここは天国と、ちゃうのか!」


 オレグが空から降ってきた。テレポートしてきたのだった。


「はい、ここは天国ですよ、オレグさん。こんにちは。」

「はい、天使のアイネさま。苦労して生きてきた甲斐がありました。」


「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~~ぇ!」

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」


 同じセリフが飛んでいる。


「今晩は、この家で歓迎会をお願いしますわ、オレグさま。」

「ここはって、まだ家は出来ていな・・・・・・、わ! これは、俺の家か!」




*)オレグへの贈り物、家を一軒。バラの垣根つき



「そうよ、これはあなたへの贈り物よ。どぉ? 気に入ったかしら?」

「この代償は? 何を要求するのかい?」

「あなたの三日分の命かしら。まだ少ないから、あと十日分は欲しいわ!」

「ああ、いいぜ、気持ちがいいから二十日分でもいいぜ。」

「ありがとう、合計で、三十三日分を頂くわ!」

「なぁ、アイネさんよ。贈り物に代償が要るのかい? 初めて聞いたぜ。」

「フフ! 相変わらずずる賢いのですね。」

「おう、これでも一応商人だからな。ずずだよ!」


 ずる賢いと、言いたいのか。


 アイネとオレグの漫才が続いていたが、ソフィアがオレグに一言。


「ねぇ、オレグ。この女性ひとは誰かな?」


 この一言でオレグは固まってしまった。漫才の時には見えていたが、直視していないから、ソフィアが二人居るとは気が付かない。


「ねぇ、オレグ。私は誰かな?」私は、リリーよ。

「ねぇ、オレグ。私は誰かな?」私が、ソフィアです。

「ねぇ、オレグ。私は誰かな?」私は、リリーではありません。


 オレグには、区別が出来なかった。だから、考えた。今日のソフィアの服は、いつもの万年服のはず。だが、たまには違う服を着ている。リリーの服は?!? ソフィアのマネをしているはず。


「判ったぞ! 胸の薄いのがリリーだ。そして、胸の大きいほうが、ソフィアだ。どうだ、当たっただろう!」


 男とは、女の服よりも、女の胸を好む生き物なのだろうか?


「アッハッハッハ~、ひっひっひ~。」


 アイネが大声で笑い出した。それも、身体を前にかがめ、お腹を抱えて笑う。


「なんだい、正解だろう。でかい胸としっぽを探してみるか。」


「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~~ぇ!」

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」


 本日、三度目である。オレグは正解だった。


「なに騒いでいるの?」


 キキが家に入ってきて尋ねた。


「キキ! バラの樹に魔法は掛けたの?」

「うん、今終わったとこ。これで少しくらいは面倒が見られなくても枯れることはないわ。リリー、これからもしっかり育てて頂戴!」

「うん、キキ、ありがとう。大事にするね。」


 オレグは考える。この家の完成は誰が見ても異常に早い。農民には、まだ誤魔化しが出来よう。だが、エリアスに知れたら困る。


「なぁ、アイネさん。この家はなんか不味くないかい?」

「あら? オレグさまはこの家を食べるのでしょうか?」

「あ、いや、食べて不味いじゃなくて、領主に知られでもしたら、困るという意味だよ。」

「そう・・・うですわね。この家にも、事象改変魔法が掛るようにしましょう。オレグさまには、いかにも、普請中のように振る舞われて下さい。あ~、面白いですわ!」

「フン!だ。一生懸命にやらせて頂きます。」


 これで、家の問題が片付いた。



*)ゾフィーの消滅


「なぁ、ゾフィーは消えたのか? それとも、二人で一人になったの?」

「そうね、二人で一人というのが、正解かしら。」

「なぁ、アイネさん。なんでゾフィーが消えたんだい。教えてくれよ。」

「はい、これはノアとリリーの二人の妖精は、元々は一人だったのですよ。リリーの力が強すぎたので、半分子はんぶんこになったのと、思われます。」

「半分こ、だろう? そうか、ノアは消えたのか。口やかましいのが居ないと淋しいかもしれないな。」


「リリー、境界の魔法で何か食べ物を出せるかい?」

「そうね、簡単だよ。でもね、エルザさんが腰を抜かすだろうな!」

「止めてくれ。デービッドも腰を抜かすぞ。」

「あら? エリアスの間違いじゃなくて?」

「おう、そうだった。では、リリー、また館へ俺を飛ばしてくれ。夕食を頂いてくる。」

「OKよ、オレグ。いいかい、いくよ~。」・・・パッ!


 オレグは消えて、両脇に夕食を抱えて戻って来た。それもかなり時間が過ぎた頃に歩いて帰宅した。


「オレグさま! ご苦労さまでした。」


 家具もテーブルも無かった。


「リリー、グダニスクの倉庫へゲートを繋いでくれないか。家具になるものを持ってきたいのだよ。」

「OK、オレグ。でも、お腹は大丈夫なの?」

「なんの、これしき!」


 多数の家具の代用品と、馬車を持ってきた。


「この馬車は、ベッドの代わりだ。どうだい、いいだろう。」

「オレグさま? バカですの?」

「オレグは、バカだ!」

「やっぱ、あんたはバカだったのね。これまで付いて来て損したわ!」


 オレグは三人から言われ放題だった。この大きい馬車をどのようにして、外に出すのか? と、言いたいらしい。


「いいよ、ベッドが来るまでここで使うよ。俺! 専用な。」


「あら、オレグさま、いいお考えですわ。」

「オレグ、冴えてる!」

「オレグ、長い付き合いだよね。この馬車を使わせて?」



 綺麗なオレグの家で、アイネの歓待が真夜中続いた。もっとも、始まったのは夜中になってだが。


 このようなピンボケの会話が続く。



*)リリーへの魔力の提供


 最後にアイネは、リリーの魔法の力の補充方法を教えるという。それは?


「強欲なオレグにこき使われるリリーへ、魔法の供給方法を教えるわ。」

「ぜひともお願いします。」

「それ! 誰の言葉かしら? オレグ(リリー)かしらね」

「いいわ、オレグに申し付けます。二人のソフィアを対等に愛しなさい。」


「はい、喜んで~~~~!」


「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~ぇ!」

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」


 本日、四度目である。


「バコ~ン!」「痛~~~~ぇ!」「バコ~ン!」「キャイ~~ン!」 

「なにほざいとるんじゃい、わりゃー。ぶっ殺すぞ~」


 本日、五度目である。


 二人のソフィアには、拒絶されたオレグだった。


 最後にアイネは、二人のソフィアを見る者には、事象改変魔法が掛るようにしてくれた。これで、誰も二人を見ても驚かない。


 リリーへの魔法の源泉は、ここに咲くバラの花だった。この事実を教えて貰ったオレグは、エリアスと先の方で嫁になるグラマリナにバラの栽培に力を入れてくれるように依頼した。この依頼が花咲くにはまだまだ先になる。


「これは、グラマリナさまにお願いしとうございます。この村が大きく発展しますように、私が居なくなりましても、後世へ代々に受け継がれますよに、バラの花が絶える事が無いように、されて下さい。」


「はい、承知いたしました。この家系が絶えましても、何らかの手段で言い伝えに残します。」

「ありがとうございます。我が家のバラの花は、私たちの命の源でございます

 ゆえ、ぜひともお守りをお願いします。」


 後日の事になるが、こうして、オレグはバラの花を守る事が、出来ると安心をした。




*)リリーの成長と魔法の特訓


 リリーには、鏡の魔法とゲート、境界の魔法の3つしか使えない。リリーは本来の大きさと力を獲得したのだ。まだ他にも魔法は使えるはず!


 アイネの特訓を受ける。


「そうね。リリーはノアを吸収したようなものだから、変身魔法が使えるはずよ、何かイメージして変身してみてよ。」


 リリーはここ数日で、本当の人間、ソフィアの妹になったように、大きく成長した。ソフィアと見分けがつかない。オレグには困ったものである。だから、髪の形や服だけは、変える事になった。


「はい、やってみます。そうね、何がいいかな。」

「エルザさんは、どうかしら。」

「はい、テクニカ、コニカ。フェアリーのエルザにな~れ!」


 赤い髪のエルザに変身した。鎧姿の戦闘服だ! 館のエルザとは違った。


「あんた、バカなの? 呪文は要らないのよ。エルザに変身しなさい。」

「はい、アイネさん。」


 リリーは館のメイド、エルザに変身した。とてもよく出来ている。


「次は、お姉さま!」


 アイネは不思議な顔をした。エルザからソフィアへ変身した。


「バコ~ン!」 「キャイ~~ン!」 「バコ~ン!」 「痛~~~ぇ!」

「なにふざけてとるんじゃい、わりゃー。ぶっ叩くぞ~」


 オオカミの耳としっぽのついた姿に変身した。この前の森でのソフィアの容姿だった。


「キャィ~~~~ン!」

「あなた、犬になったのかしら!」


 リリーは泣きながら元の姿に戻る。泣き顔と泣き声が出せない、テーブルに変身した。


「リリー、合格よ。では、これからは本当の修行だからね。」

「・・・・・・」


 返事は? 口が無いから当然出来ない。


「あら! 丁度いいテーブルね。アイネさん、お茶にいたしましょう。」

「そうですわね。時間との根競べね! リリー頑張ってね。」

「リリーはどこかへ飛んで行きましたの?」

「ええ、そのようですわ。さ、お茶にいたしましょう。」


 アイネは可笑しくて一人で笑い転げて、熱いお茶を零す。


「あっちぃち!」


 リリーが魔法を解除した。アイネは、


「まだまだね。不合格だわ!」


 今度は、ソフィアがお腹を抱えて笑い出した。


「おお、今日はいいお天気だな。」


 変な挨拶をして、オレグが帰ってきた。オレグが言う、いいお天気だなは、楽しい会話が弾んでいるという意味だ。


「オレグ。アイネさんはひどい性格をしているのよ。」


 と、オレグに言う。オレグは、


「俺よりもまだ、ましだろう。頑張れよ。」


 リリーは引き続き泣き出した。


 リリーは特訓で、風の魔法、水の魔法、氷の魔法、大地の魔法を獲得した。扇風機、魔法びん、冷凍庫だったりする。大地の魔法はアイネがこの世の理を無視する、想像の魔法だ。かぼちゃをリンゴにしたり、大木を家具へと変えてしまうことは出来ない。昨日のバラを家に変えるような魔法だ。大変な力を使うから、そうそうには行使が出来ない。要は、大地に根ざしたもの、くっいているものにしか出来ない。


「大地の魔法は、他に何が出来るのですか?」


 リリーの問いに、アイネは、


「そうね、小さな苗木を少しだけ大きく出来るとか、麦でもできるけど、畑全部とかは出来ないわ。あとは、柱を立てるとか、木材の階段とかは、出来るかしら。リリーの創意工夫でやってみて。」


「そうですか、考えてみます。」

「ヒントは、大地から魔力を得るから、大地から離れる物は出来ない、という事ね。椅子やテーブルはリリーが変身するしかないわ。」


 この場にオレグが居たのは最悪だった。オレグは聞き耳を立てて聞いていた。オレグの頭には、きっとよからぬ思いが巡っている。


「リリー、俺をまたエルザの所まで飛ばしてくれないかい。また、夕食を頂きに行ってくる。」

「オレグさん、私の事は秘密にして下さいね。絶対にですよ。」

「ソフィアさん、一緒に行こうか。今日はお酒も持って来たいよ。」

「そうだね、今日は乾杯しようね。」



トチェフ村の領主、エリアス。従者のデーヴィッド。メイドのエルザ。

オレグ、ソフィア、リリー、ノア=ゾフィ(女装)。

船乗りのボブ。

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