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人狼夫婦と妖精 ツインズの旅  作者: 冬忍 金銀花
第一章 駆け出しのハンザ商人 オレグ
100/257

祝100号 ミル島 キルケーかわいい魔女?



 1244年10月30日 ポーランド・グルジョンツ


*)ソフィアの失態


「いや違うだろう。きっとソフィアが何かを言って逃げたからかもしれないよね。」

「それは大いに可能性があるわよ。でも、違うような気がする。だって私を見て疑問に思っていたし語気も和らいだわ。」


「きっとリリーが若くて綺麗だったからだろう?」


「まぁそんな、恥ずかしいわ~! 妹 ♥L♥O♥V♥E♥だわ!!」


「?……ゴホン!!」

「あ、すみません、これからどういたしますか?」

「行きつけのパブがあります。取り敢えずそこに移動しましょう。何か情報が得られるかもしれません。」


 歩く事20分場末のパブに着いた。


「あ~~~!! ここ魔女たちが捕まったところだわ。」

「あぁ、ソフィアが飲み過ぎて見張りをさぼった所かな?」

「うん……そういえば誰かと言い争ったと言っていました……。」


 三人はパブに入ると、


「……あんたか、もうここには来んでくれないか、迷惑千万だったぜ!」

「いいえ私は知りませんが? もしかして私とそっくりな銀髪でロングの髪をしている呑んべ~の年増? かしら。」

「そうだが……あんた、少しないわな、違ったか?」


「そうですね、生き別れの姉を探しているのです、そう、きっと姉ですわ。」

「なぁご主人、いったい誰と争っていたのかな。」

「あぁ酔っ払いの大男だったな。名前は……。」


「おう、あいつはクルシュだぜ……! 領主代行の息子さ。」

「ええええ! クルシュさん?!!」

「そうだった、若い女の連れも居たな、…」


「もしかして小柄で色白に金髪美女?」

「そうだよあの美貌には男はいちころさ!」


「あんたのね~ちゃんは二人にビールを豪快にぶっかけていたな~、あんたは損害賠償で金貨一枚を支払いな!」


「払うからその時の状況を話してくれないか。嫌なら払わないよ! 出ていく。」


「そうだな姉ちゃん、俺の代わりに働いてもらうよ……んん?」

「はい承知いたしました。メイドをいたします。」

「すまないね、早く話を終わらせるからさ。」

「うんお願いね、お兄さま。」


「あのね~ちゃんが、三人かな連れだってきてたくさん飲んでいたね、そんで出来上がった頃に大男の二人組が来てさ、あ! そうそうビールを掛けたのはその男の連れが先だったかもな。そんでさ、後は騎士団がやって来て……、」


「そうだな、男女で六人が捕縛されたとか?」

「そうだね~ちゃんも捕まっていたな! 胸を揉まれて逆上してさ、周りの客のビールをカタッぱなしからぶっかけていたよ、そりゃ~面白かったけどさお蔭で客も出て行ってさ、料金踏み倒されたぜ。」


「そのクルシュは金を払ったか?」

「いいや騎士団と一緒に出ていったよ、さ、金貨一枚でいいから払いな。」

「そうかすまなかったな、それと今日の飯代だ、金貨二枚で勘定してくれ。」


「あいよ、毎度あり~!!」

「おうね~ちゃん、ビールを三杯な。」

「は~い喜んで~!!」



「クルシュがソフィアの胸を揉んだのか~、この~ぅ!!!」

「旦那、そこは違うでしょう。」

「いいや、きっと思いっきり揉んだからリリーが別人だと判ったのさ。」


 荒れたオレグはビールをがぶ飲みした。


「なんだ~これ、水っぽいな~~!! これでは酔えないよ~。?????」


「やいオヤジ。このビールには水を足しているだろう。料金返せ!!」

「もう十分酔っていますよ、旦那!」



「リリーさん、どうしますか?」

「うんキルケーをどうかしないと、……クルシュさんは魔女に憑りつかれていますわ。これは戦争よ、女の戦いだわ!!」


 オレグらはへステアにブィドゴシュチュに帰る旨を伝えた。


「ビスワ川で待っていようか、船を止めて乗せてもらうよ。なにすぐに通るさ。そうしたらブィドゴシュチュまで一っ飛びよ。」 

「旦那、そうでしょうか?……?」


「旦那、船が来ました、リリーさんは何処ですか??」

「いいよ、先に行ってるよ。」

「?……?」



*)ミル島のキルケー、かわいい魔女?


 ブィドゴシュチュでは、


「お姉さま、お姉さまは酔って男に絡んで胸を揉まれたのですか?……?」

「あらぁリリー、帰りが早いわね上手くいったのかしら?」


「お姉さま、どうしてかしら? の疑問形かしら。私の質問に答えてくださいまし。お答えが無ければ怒りますわよ。」


 塩対応のソフィア。


「ねぇリリー、今晩は何を食べようか!」

「お姉さまは今日の会議が破断すると思ってらしたのですね?」

「いいえ全然。リリー破断になったの?」


「もうお姉さま、怒りましたわ。」


「我はゾフィを召喚する、ソフィアの頭に落ちたまえ!!」


「わっ!!」

「ぎゃ~どきなさい!」

「ゾフィお姉さまを押えて下さい。今ロープで縛りますわ。」

「いいぜ俺ごと縛ってくれ、そうしたら逃げられないよ。」


「そうですわゾフィ、始終しじゅう身体をくすぐって頂戴。お姉さまは縄をぶち切る達人ですもの。」

「きゃ、いや~、いい、そこはいい、いや、止めて、そこもいい!!」

「??? まぁ、お姉さま……。」


「あっオレグ兄さま、お姉さまは白状しないで、白状しました!」

「もういいよ。それよりもあのキルケーだな。」

「でもキルケにはバックのオットー三世がいるでしょう。戦争して大丈夫かな。もっと他の手立てはないの?」


 もう普通に戻ったソフィア。切り替えが早い。


 ギーシャは戦争という言葉を何度も聞かされて、段々とオレグらが怖くなってきたのだった。これではあのクルシュでさえ敵わないだろうと思えてきた。今ではこの人たちに逆らわなくて良かったと、ギーシャは思う。


「そうだな……巫女たちを久しぶりに集合させるか!」


「オレグその必要はないよ。俺ら総員で乗り込めば大人しくなるよ。あの女は寂しがりやで媚びへつらう事が出来ない鼻だかツン子だからさ。攻めればすぐに落ちるよ。」


「ゾフィ、あんた、どこで魔女を分析できるスキルを覚えたのよ。」

「そりゃ~リリーの身体の中でさ。リリーはそうとう性格がまがったね。俺でもびっくりするくらいさ!」

「まぁ失礼な。また私の身体に押し込むわよ。」


「ギーシャさんだったっけ? びくついて怖がっているぜ。リリーも女の子に戻りなよ。」


 ギーシャは本当に怖がって震えていた。


「あんたたちは人じゃないのか、それとも魔女かいな。」

「そうですよギーシャさん、私たちは人間ではありませんわ。」

「おいおいこの俺は人間だぞ。ソフィアだって……。」


「私は黙っていますからもう帰らせて下さい。ライ麦は自由にされて構いませんから、もうお許し下さい。」


「これはへステアには悪いがシビルの出番だな。……ギーシャさん、今晩はお泊りになって頂きます。」

「そんな~、神へステアさま。お助けくださ。」

「おう祈っても無駄だぜ、観念しな!」




*)ミル島 


 ゾフィはキルケーの家は赤い屋根だからすぐに判るという。


「なんだ広い島に一軒家じゃないか、」

「家畜の家がたくさんあるよ、もしかして、そこの小さいのがキルケーの家だったりするかもよ。」

「はははご冗談を!」


 元は人間だった動物が多数草をんでいた。


「おう、こいつは丸々と太って美味しそうだぜ。食えるかな。」

「そうね、本当にヤギだったら美味しいでしょうが、デブんちょの人間ならとても不味くて食えないわ。」


 ヤギと羊が遁走した。


「じゃぁ、あの牛はどうだ、乳がでかいホルンちゃんだぜ。」

「場末の太ったママだよ、とても不味くて食えないわ。」


 牛が遁走した。


「あの豚が美味しいかもよ。」


 豚が豚走した。ニワトリも、ヤギも、ウサギもすべてが赤い家に逃げ込んだ。


「あの家には、オオカミは居ないよね。」

「ばこ~~ん!」


 シビルがソフィアから叩かれた。オレグ以外はソフィア、リリー、ゾフィ、マティルダ、シーンプ、シビル、ギーシャで、ボブ船長もリリーにより招かれた。


「おう兄ちゃん。このドアは蹴とばすかぁ?」


「いや待ってくれ。先に塩を振りかけて見るからさ。」


 オレグは正面玄関に思いっきり塩をぶつけていた。


「兄ちゃんその石が塩なのか?」

「あぁとても高い岩塩だ。」

「オレグ、敵に塩おくってどうするのよ。」

「よ~く見ていなさい、・…・…・だぜ。」


 羊やヤギ牛らが、オレグの投げた塩を食べだした。


「あっ! 塩を食べている!」

「そうさ、あいつ等だって塩は必需品なんだ。食べないのがキルケだけだろう。」


 ニワトリすら食べ始める。オレグは庭の動物が全部食べているのを確認した。


「ボブ、頼んだ!!」

「おう、任せ……!」

「ばこ~ん、ガバッ! がしゃ~ん!!」


 玄関ドアが破られた。


「ボブが持っている物はなんだい。」

「俺の怒りさ!」

「錨の間違いだろう。それ、チェーンもついていて便利だね!」


「そうさ、これでマグロを釣るんだ!」


 奥に一匹の白ネコがいた。こちらを身動きもせずに見ている。


「リリー、ソフィア、そいつを捕まえろ! ゾフィは上から跳びかかれ!」


「にゃん、ワン、ギャン。きゃっ!!」


 白いネコはゾフィが跳びかかって白い犬に変わった。ソフィアが蹴とばす。続いてキルケーが人の姿になったところでリリーが捕縛した。


 キルケーはものの3秒でお縄を頂いたのだった。


「オレグ捕まえたわよ、煮て焼くのかしら。」

「いや普通は逆だろう。焼けば旨い出汁が出やすいんだ。」


「じゃぁ、そうする。」

「そいつは元々、ヘビなのだ。足が無いだろう??」


 キルケーは本当に容姿端麗で綺麗な金髪を玉飾りで飾っている。中肉中背、胸はそれほど大きくはないが、とにかく透けて見えるくらいの色白だった。


「キルケ……靴は要らないのか?」

「蛇足よ、それは、皮肉かしら!」


「あらほんとだ足が無いわ、でも二本の尻尾あしがついている、とても珍しいかしら。」


「ゾフィ、こいつは本当にキルケーかい?」

「あぁ半分はな……、」

「じゃぁ、残りの半分はどうした。」

「倉庫に繋いだ黒猫さ、あれが本当のキルケーだと思う。こいつは男に纏わりついて精気を吸い出す化身なのさ……たぶん。」


「そいじゃ、こいつと黒猫を一緒にしたら?」

「それこそ魔女に変身さ! とても綺麗だというぜ? 倉庫の天井に張り付けにすればいいよ。火災報知機になるだろう。」


「おお、それはいい。火災の時は消火してくれるんだな。」


 キルケーは最初の勢いは無くなりオレグらの会話で段々と萎れていく。そう、ギーシャと同じだった。


「今まで反撃が無かったのは出来なかったのだね。どうりで大人しいと思ったよ。こいつ、皮を剥いだら食べれるのかな。」


「オレグ、ゲテモノ食いはよしなさい。肺炎になるかも知れないわ。」


「なぁキルケ、クルシュに掛けた妖霊の魔法を解いてくれないか。そうしたら食べることはしないと約束するぞ。」


「ふん……でも縄もほどいてくれる?」

「あぁほどくとも。」

「黒猫を返してくれる?」

「いや出来ない。俺が死ぬまで解放はしないよ。もし解放して散々に仕事を邪魔されたくはないしさ。当たり前だろう??」


「そうねだいたいね、あんたがちょっかいを仕掛けるから悪いのよ。私たちを見くびった罰だわ。一生倉庫で火災報知機兼消火器になりなさい。」


「そんな~罰だなんて、世の男たちが黙っていませんわ。アザラシくんだって私の事を好きなのですよ、きっと私を探し出してあんたたちを火祭りにしてくれるのだから。」

「そのオット三セイは元はトドだろう? だったら元のトドの姿に戻せよ。」


「オットーⅢ世をトド呼ばわりはあんまりだわ。皮を剥がれても化けて出てやるわよ、末代でも永遠にね。」


「リリー、テーレマコスを召喚できるか。」

「無理だわ、だってこの前のスッポンがそうだったのよ。」


 スッポンと聞いてマティルダがビクンとした。シーンプにいたっては夢のような出来事にしか見えていない。


「ギーシャさん、この罰当たりをクルシュさんに届けたいが、いいかな。」

「はい理由は判りませんが、オレグさんにお任せいたします。」


「オレグ、どうするのよ。」

「うん、うみんちゅうではウミヘビを食べて精力をつけるんだ。だからウミヘビのスープにして届けるさ。」

「そうしたらクルシュは元に戻るのね。」


「オットⅢセイも正常に戻るだろう?」


「………イ……ヤ……ダ……ヨ……」


 ミル島のキルケー、かわいい魔女はこうして、オレグらに落とされた。



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