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嘘つきはそばにいる  作者: 麗遥
プロローグ
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プロローグ

 彼女を言葉で表すならば


「立てば芍薬座れば牡丹、歩く姿は百合の花」


がしっくりくるだろう。

 それほどに彼女は完璧で完全に美しかった。

色白の柔肌は男性の目を引き付けるだけの魅力があり。髪が靡けばそれ相応の香りが漂った。

 一部の男子からは高嶺の花と言われた

―――からと言って誰とも関わらないほどの孤高の少女ではなかった。男子とは関わらないにせよ女子との関わりは良好だった。


 時々本を読んでいる様だったが読書家というほどに孤立はしていない。時々音楽を聴いている様だったが外界をシャットダウンしているわけでもなさそうだった。

話しかけられれば答えるほどに愛想はいい彼女。

 成績優良とあり、教師からの人望も厚かった。クラスでは委員長と言う迷惑気回りない役回りを任せられるほどに笑顔で答えていた。


 そんな彼女を見ながら僕はいつもおもうことがある。その笑顔、その行動、その言葉、その眼差し



 ―――嘘みたい



 まるで、仮面を被ったような笑顔、まるでテンプレートな行動、まるで台本があるような言葉、まるでビー玉のような冷たい眼差し



 ―――偽物みたい



数学の時間、彼女は名指しで呼ばれたので黒板に向かって答えを綴っていく。その背中を穴が開くほどに僕は見つめていた。

 こんなにも完璧でこんなにも完全な人間がいるのだろうか。

 彼女の観察に夢中になった僕は不意に振り返った彼女と目が合った。しかし、気に留められることなく視線は反らされ彼女は僕の隣の席に戻った。

 一瞬どきっとした

 しかし、彼女にとって僕はクラスメイトの人であって、気に留めるほどでもなかったのだろう。隣に座る彼女を盗み見しようとも気付かれることはなかった。

 お昼の時間、掃除の時間、帰りの時間。僕は一日中彼女を見ていたが何も変化はなく。いつもと何も変わらなくいつもと同じでまるで嘘のような彼女が生活をしていた。


「利木、先行ってるぞ」

「おー」

 覇気のない返事をし、大したものが入っていない鞄の中に明日の予習のためにノートやら教科書やらを詰めていた。

 ふと、隣の席に目が行った。そういえば、彼女は今日、真っ黒な本を読んでいたな。何となく気になって彼女の机の中を覗いてみた。



 ―――吸血鬼



 目に飛び込んできた文字に胸が跳ねた。


 ―――吸血鬼、ヴァンパイア、チュパカブラ、血、ち、チ、chi



 まるで、ピースは填るような音がした。まるで、何かが完成する音がした。

 ああ、本当の彼女は、本当の〈緩鹿艶ゆるかあで〉はこういう子なんだ。なんだか嬉しくなりそっと、元に戻すと僕は教室を後にした。


 その夜、何となく吸血鬼を検索してみた。その所為だろうか、その日の夢は美しい女の吸血鬼に吸われる夢だった。


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