チンチロ
賭博にうとい俺のために、ゲームは「チンチロ」に決まった。
「サイコロを3つ、椀の中で振るだけだ。簡単だろ?」
役について教えて貰い、大きく頷きながら初めて聞いたという演技をする。
「、、2つ同じ数を揃える、、3つなら尚良し、、456は良くて、123はダメだ、と、、成る程?」
勝負は3回で、役のポイント制で3回の合計で勝敗が決まるのが異なる点か。
(掛け金を毎回積まないから、ギャンブル性は低いんだろうか)
後で知った事だが、殺傷ざたの多いこの世界では過度なギャンブルは禁止されているらしい。
「まあ、負けても術の一回くらいなもんだし、気楽にやるさ」
手の中でハドメが用意したサイコロをもて遊びながら、オレインに笑いかけると、
オレインは困ったように片眉を上げた。
※※
村を出発して、ハドメの隊商の最後尾をオレインの荷馬車でついていく。
「、、お前さ、なんかやっただろ?」
「何が?昨日のサイコロ勝負の事?」
荷馬車の運転席で隣で馬の綱を操るオレインが話し掛けてくる。
サイコロ勝負は俺の勝ちだった。
3回勝負の内で、最初の2回を軽く負け続け、
ラストの一回で、手の中で強く念を込めるように、それぞれのサイコロに「一」をこっそりと書き込んだのだ。
結果、「一のゾロ目」が出て俺の勝利、と。
「言いがかりは止めてくんないかな?単なるビギナーズラックだろ?」
疑わしそうに唇を突き出すオレインに笑い返す。
「まぁ、世の中には不思議がいっぱいあるのさ」
「、、魔術師じゃなくて、詐欺師じゃないのか?」
納得しないオレインを軽くあしらいながら、俺は運転席で軽く目を瞑った。
※※
「、、どうだった?」
宿の自室に集まると、護衛のリーダーであるディーダが小声で聞いてくる。
グループの魔術師であるソフィアが、首を傾げながら答える。
「なんかしたんだろうね、最後にサイコロを振る前に、坊やの手に魔力が集まるのが見えた」
魔術師であるソフィアは属性魔術師だが、魔力の動きや発動を可視化するスキル持ちでもある。
彼女の目にはアオが最後にサイコロを振る前に、不自然な魔力の集まりが見えていたのだ。
「ハドメには言わなかったな?」
前衛を務めるトラインが言う。
「そんな義理は無いさ。それより面白いガキを見つけたんだ、そっちのが大事だろ?」
「付与魔術は分からない事が多いからねぇ、魔術じゃなくてスキルかもしれないし」
「ハドメなら金貨20枚は大した損でも無いだろ。結局ハドメの馬車に『軽量化』は付与して貰ったんだし、旅程が早まるのなら損は無いさ」
勝負の後でオレインとハドメの話し合いで、隊商に追従する代わりにハドメの馬車にも『軽量化』を施す事になったのだ。
「本当に馬車一台を『軽量化』出来るもんなんだな、、そんな話し、聞いた事が無いが」
ディーダが首を傾げる。
「実際にやったんだから、あるんだろ。国に雇われるレベルだろうにな」
「聞いた事の無いレベルの『軽量化』に、サイコロを操作する能力ねぇ、、どんな師匠についていたんだか」
ディーダは少し考えた素振りを見せて、全員を見回す。
「あいつらの馬車は最後尾だ。明日から後方の警戒って言って一人ずつ順番に奴らの荷馬車に乗り込め。で、警戒されないようにそれとなく情報を聞き出せ。何が出来るのか、もっと知りたい」
ディーダがそう言うと、一団は揃って頷いてみせた。




