あや
「奥様、旦那様がお目覚めになられたようです」
「あら、早かったわね」
伯爵様は無事に回復したようだ、良かったよかった。
危うく次期領主様が現領主様にレベルアップする所だったのだ。
無事に回復したのなら、何の問題も無かったも同然と言って良いのでは?
いっそ全てを忘れてくれてたら良いのになぁ。
「アオ、不謹慎ですよ」
また思考を読まれてしまった。
※※
「そうか、、私は気を失って、、そう、ラキネル、キイロ、、アオ、
確かに挨拶を交わしたような気がする」
伯爵様はまだ記憶が曖昧だった。
見かねたラキネルが伯爵様の背中をさすっている。
「そうですわ、そして彼を食客として招いたのですよ?」
「そう、、キミからの手紙にもあった、付与魔術師だと書いてあった、、」
「そうですわ、彼は付与魔術を得意にしておりますの」
「得意、、特異、、なんだろう、手紙に書いてあったのに思い出せない」
奥方様も大概失礼だな、いや身分があればそれも許されるのか?
「そんな訳無いじゃない」
「?」
伯爵様が突然の奥方様の言葉に困惑しておられる。
「いえ、こちらの話で、、で、同じ食客同士という事でエルヴァナと同じ部屋で過ごしている内に」
「まてまてまて、えっ?同じ部屋?何で?」
「?」
伯爵様は常識人みたいだな。
ラキネルとも気が合いそうだ。
※※
「お母様、、私も初耳なのですが、、」
「初めて言ったのですから、初耳で当然では?」
「いえ、、そうでは無く、いや合ってるのか?」
エドヴァルド様も常識人枠らしい、流石は父子だ。
「エルヴァナを呼んでくれないか?エルヴァナからも話が聞きたい」
「まあ、、ふたりの馴れ初めを聞きたがるだなんて、、マナーに反しませんこと?」
「違うから」
※※
「何だ、馴れ初めが聞きたいって?」
エルヴァナさんがソファーで脚を組みながら伯爵夫妻と対面する。
眉間にシワを寄せて、ストローの端をガジガジ噛んでる。
「いや、まずは久しぶりだなエルヴァナ。王都から戻れず、済まない」
「、、構わん」
伯爵様とは気安い仲なのか。
「エルヴァナ、てっきり森で過ごしていると思ったのだが、違ったのだな」
「どちらかと言えば湖よね?」
「クラリッサ、黙りなさい」
奥方様の言葉にお嬢様の背筋がピンと伸びる。
※※
「何故、、なぜと聞くか、、」
あれから話は脱線しまくりだったが、何とか伯爵様が『何故同じ部屋で寝泊まりしているのか?』という質問までたどり着いた。
凄いなこの人、普通これだけ話を誤魔化し・逸らされたら諦めるだろうに、初志貫徹したぞ?
もしくは家長としての責任感か?
しかし言葉にされたのならば受けなければならない、
どうする!?どう答える!エルヴァナさん!!!
「私がコイツに襲われてな、いや私が襲ったんだっけか」
「ナニを言ってるんですかアナタは?」
あっ、模擬戦の事?違うんじゃないソレは。
そんな事言うとあらぬ誤解が、
「襲っただと!?何だそれは!不埒者めがっ、そこになおれ!!」
エドヴァルド様がキレられた。




