似合ってます
帰路の途中で街に寄る事にした。
思えば河を渡ってからまっすぐに領邸に入ってしまったので、俺はこの街を知らないのだ。
「大体3km四方か?街では2階建てまでが許されているから、それなりに人は多いな」
「へー、高さが決められてるんですねぇ」
「公都は3階で、王都では4階だな」
「はぁ、色々あるんですねぇ」
街の入り口に門がある訳でも無く、巨大な壁がある訳でも無い。
道を行けば自然と街中に入ってしまうのだ。
「そんな防備を設けてしまっては、王都へ対抗しているみたいだろ?」
エルヴァナさんはそんな事を教えてくれた。
「過ぎたるは及ばざるが如し、ですか。成る程ー」
「、、、」
「?」
33さんが鞍上から怪訝な顔で振り向き、俺の顔を見る。
「お前さ、時々変な事を言ってるぞ?」
「え?」
「過ぎたる?如し?なんだそれは、ドコの言葉だ?」
※※
街の馬舎で馬を預かってもらい、街の大通りを歩く。
「ふぅん、、結構道幅を取ってるんですね」
「王都程では無いがな、馬車道でもあるし狭いと危ない。」
道の清掃も行き届いているし、大通り沿いの店構えはドコも綺麗にしている。
「伯爵様の意向だな。大河が国の導線になっている以上、下手なものは見せられん」
「成る程ー、、あっ、アレって何ですか?」
大通り沿いの店の中で、通り面した棚にはガラス製の小物が飾られていた。
※※
「店先に出している物は飾りですね。魔力を込めたものは奥に仕舞っているもので」
「はあー」
テーブル置きの燭台から身に着ける装飾品まで、ガラス製品を幅広く扱っているらしい。
「河向こうで見たものより安い、、でも、、」
グラスを一つ持ち上げて色味を見る。
作りは丁寧でしっかりしているが、やはりガラスの透明度が低いのだ。
「、、ご主人、こちらの店先の商品も頼めば魔力を込めてくれるのだろう?」
「はい、もちろんでございます。込める魔法の一覧とお値段はコチラで、、」
エルヴァナさんが店の主人と話している。
そうか、魔法も込められるのか。
「コレ、良いですね。これをいただけますか?」
俺は小さ目の耳飾りを指し示した。
※※
大通りから一本裏手に入り、茶屋の2階に上がる。
俺達は裏通りを走る運河を見下ろすテラス席に通された。
「川を走る風が良いですね、、荷物だけじゃなく、人も乗れるんだぁ」
「大通りはホコリが凄いからな。休憩所は裏手に回る事が多いんじゃないか?」
エルヴァナさんの話を聞きながら、テーブルの上で耳飾りを広げる。
(さてさて)
『感知』と『共鳴』を片方ずつに付与する。
彼女は黙って俺の手元を見ている。
「、、、着けてみて貰えますか?」
「、、、」
エルヴァナさんが耳飾りを手に取り、ため息混じりに耳に着ける。
「、、、」
「似合ってますよ?」
彼女は何も言ってくれなかった。




