厄介事
「アオ、こちらはオジヴァル男爵と男爵夫人だ」
「はじめまして、アオと申します」
テーブルから立ち上がり、館で習った貴人への礼をする。
「うむ、君がアオだな。伯爵から話は聞いているぞ」
「優秀な方だそうで、エルヴァナとも仲が良いのかしら?」
「はっ!伯爵様と御一家の皆様には大変お世話になっております」
今さらっとこの″男爵″、伯爵様を呼び捨てにしたぞ?
エルヴァナさんを横目で見ると『静かにしろ』と後ろ手でハンドサインを送って来ている。
厄介事とも言っていたし、これは黙って従っておくべきなんだろうな。
※※
「ほお、王都ではそんな話になっていたのか」
男爵様達を交えてお茶会が再開された。
エルヴァナさんが会話を主導してくれるので、とても助かる。
「うむ、伯爵領で面白い物が出回っていると噂になっているぞ?
パスタマシンと言ったか?あれは便利だな!」
「ピーラーもですわね、うちの料理人共も喜んでおりますのよ?」
おかしいな、パスタマシンやピーラーを売りに出したなんて話は聞いて無いんだが。
「食卓を豊かにするという事は、国民の生活を豊かにするという事だからな。
大発明家というキミの活躍を聞いて是非一度会ってみたいと思っていたのだよ」
「そしたら近くに来ていると聞くじゃない?で、お邪魔させて頂いたのよ」
俺はにこやかに微笑んで見せる。
「しかしキミ、発明は安く売ってはイカンのだぞ?国は発明家の権利を守るために特許を制定してる。
しかし、伯爵は特許の申請にキミの名前を載せて居ないじゃないか?」
「国の重鎮たる伯爵ともあろうお方が国の法を蔑ろにして、
民の財産を簒奪するなんて、まさかそんな事をしてる訳では無いのよね?」
おおぉ、、雲行きが怪しくなってきたぞ?
「契約については伯爵様と彼との問題だろう。部外者が立ち入るべき問題では無いと思うが?」
「私は彼と話ているのだよ。部外者と言うのなら、いくら第五席を賜るエルヴァナと言えども同じでは無いかな?」
「私達はね、、国の利をもたらす貴重な発明家が野に埋もれたままになってしまう事を懸念しているだけなのよ?彼が心配なの、、」
五席?何だそれは。
「ふぅん、、部外者ねぇ、しかし私は彼の師匠筋でもある訳だから、十分にクチを挟む権利があると思うが」
「はっ!ロクに訓練もしていない若者と、随分とハンパな立ち回りをしたそうじゃかいか!?
王都を離れて腕が落ちたのでは無いか?」
「エルヴァナ、、師匠なら弟子の将来の事も考えてあげるべきでは?
いつまでも領に留めていては、彼の目的も果たせないのではないの?」
目的、、目的ねぇ。
「無理に引き留めているつもりは無いがな、、」
33さんが俯き気味に少しだけ言い淀む。
ちょっとは申し訳無く思ってたんだな。
忘れられてるかと思ってたんで、少し安心した。




