魔力切れ
「あらあら」
「決まりましたね」
「綺麗にふっ飛んだわ」
「くぅん、、」
「しまった、、」
流石にやり過ぎたとエルヴァナは焦るが、手加減をする余裕が無かったのだ。
(まさかあそこまで付いてくるとは)
お互いに武器を捨てた時点で『勝った』と思ったのだ。
武器慣れしている者は多く居るが、長年積み重ねて来た徒手空拳の技を交わす者が居るとは思っても居なかった。
アレはどちらかと言えば暗殺術の技なのだ。
(付与魔術で攻撃力を底上げしてくるのは読んで居たが、回避能力を上げる付与もあるのか?)
一向に起き上がって来ないアオを見ながら、自分の息が整うのを待つ。
「最後にアオがおかしな動きをしてたわね、あれはエルヴァナが何かしたの?」
お嬢様が聞いてくる。
「いえ、私は何も、、多分アレは魔力切れじゃないですかね?」
カウンターを放たれても交わす自信はあったが、それ以前にアオが動きを止めたのだ。
そしてこちらのカウンターが止まらなかった。
結果、無防備な胴にモロに蹴りが入ってしまった。
「敗因は戦い慣れをしていなかったと言う事でしょうか?」
ルーナが首を傾げて、皆が頷いた。
※※
「いってぇ、、」
頭から足の先までズキズキと痛み過ぎて、自分がどこを痛めたのか全く分から無い。
まぶたも開かず、指一本動かせないでいる。
「動くな」
短い声にからだが強張る。
「大丈夫だ、、動くな、休んでいろ」
額に冷たい手が乗せられて、熱を吸い取られたようにからだの力が抜ける。
どうも気絶している間に館のベッドに運ばれたらしい。
「スマンな、やり過ぎた、、」
心から、申し訳なさそうに言われる。
(違うんです)と返したいが、喉から声が出ない。
かろうじて指を動かしてサインを送ろうとするが、何故か手を握られてしまう。
「大丈夫だ、、今はゆっくり休め、、」
その言葉を最後まで聞く事は無く、俺の意識はまた微睡みの中に落ちていった。
※※
「どう?アオはもう気がついたの?」
部屋に入るとお嬢様がすぐに聞いてくる。
「ダメですね、一度は起きたのですがすぐにまた落ちました。完全に魔力切れですね」
「魔力切れはポーションでも治らないから大変ね。時間が掛かるのかしら、、」
「本人の魔力量次第ですね、、魔力が多いと逆に回復が遅くなります」
「まさか魔力切れになるまで戦うなんて、、普通は手前で止まるでしょうに」
「あー、その、、もしかして止めて良いとか、止める合図を知らなかったとかでは?」
ルーナの言葉にみんなの動きが止まる。
「こちらに来るまでに訓練をしていたという話は聞かなかったわね、、」
「確かに最初は攻めっ気が無くて、ぎこちなかったかも、、」
「いや、でも訓練無しに接近戦であれだけ戦えるものですかね?エルヴァナさんですよ?途中から本気でしたよね?」
「うーむ、、」
「まあ、起こってしまった事はしょうが無いでしょう。魔力が戻れば『快癒』も使えるでしょうし」
結局アオが自力で起きるまで待つ事しか出来無いのであった。




