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神様に『万が一の救済者だ』と言われてますが、実質出番は無いはずですよね?  作者: 杜槻 二花


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じゃあどうして三年で終わったんだろ?

「……私の『女神』呼ばわりも新聞に載っちゃったのも自業自得として……、ひとつ気になることがあるのですが」

 なんとか気持ちを立て直した私は、足りない情報がないかと、この際思いついたことを聞いておく事にした。


 父と兄の方に顔を向けると、私への説明が終了してなんとなく達成感の漂わせた二人は、タイミングを見計らってバートンが淹れ直したお茶をのんびりと啜っていた。

「ん?なんだい?」

「今の話を聞く限り、勇者チームがメンバー交代もせずに三年で討伐クリアできたの、何故でしょう?」

「あー……それね、ぶっちゃけわからない」

 少し考えるような仕草をしてから、兄はそう返答してきた。父を見てみると同意するように頷いている。

「わからない?」

 と私が首を傾げると、

「聞こえてきた噂では、唐突に聖女様が立ち上がって『時が来ました!これからはガンガン先に進みます!』とか言って突然動き始めたらしいよ」

 と、今度は父が答えてくれた。


「『時が来ました』?」

 これもまた、まるで啓示を受けたかのような発言だ。

「……つまり、神からの託宣を貰ったか、予知か遠見の加護でも貰っていたとか……?」

「前半は有り得ない、と言いたいね。後半はないとは言えないけれど、それならばもっと早くに予言なり遠見で見たものを他の者に伝えても良さそうだ。人見知りと言うタイプでも無いようだし、わざわざ伝えない理由もないと思うんだよね。それをもっと早くに言っていれば、評判が落ちることもなかっただろうし」

「じゃあなんでそんなことを言ったんでしょう……」

 私が首を傾げると、

「まあ考えられることがひとつふたつあってね。と、言っても憶測でしかないんだが、ひとつはアンナのお陰で道の整備が進んでいたから、それで安全かつ楽に移動出来るようになったっていう話を聞いて動いた、かな」

 と、父は答えた。

「……ここでも私の所為……?」

 いや、所為、というか、立ち往生していた勇者チームに動きがあったというのならば、これも『おかげ』と言い直してもいいだろうか。

「とは言えね、勇者チームが強化されてないから、安全地帯を進むだけなら出来ても、魔王の遺構までは近づけない。あれは人里離れた山を超えた谷底にある。そう簡単に進めない。途中にかなり凶悪な魔獣が住み着いているしね」

「あー……そうです、ね」

 魔獣の強さと道程の険しさに、最終的に立ち止まることになるだろう。それならばむしろ後退して鍛え直した方が良いくらいのはず。


「そういや、一代前の聖女様は魔術も使わずに、『崖だー、岩山だー、登攀(とうはん)だー!』とか言って大喜びしながら、手足使って登ってたって記録があって、見つけた時には笑ったなぁ」

 兄がまた思い出したように言った。顔を見れば本当に笑っている。

「歴代随一の脳筋聖女様だと書かれていたよね。あれ、当時メンバーだった司祭が書き記したんだったっけ」

 父もその記録を読んでいたようで、相槌を打つ。

「……さっきから思ってるんですけど、一代前の聖女様の話、今いらなくないです?」

「いやぁ、比較対象として面白いよなぁ、とふと思って」

 と兄は悪びれない。確かに色事に長けた聖女様と脳筋聖女様では、あまりにも落差があるのは判るが、割と酷い扱いじゃなかろうか。

「二代前の聖女様の話をすると、氷の橋と階段作って皆で悠々移動したって記録が残っているよね。聖女様に付与される加護というか、魔力量というか……壮絶だよねぇ。歴代の魔導師にもそこまで出来る人物はいない」

 父は存外魔術方面に長けていて、実家が商家でなければ魔杖士になっていたかもしれない人だ。結局魔道具を作って売ることが楽しくなって、ついでに商家を継いだそうだが、魔術系の話を始めると密かに饒舌になる。

「四百年前の魔杖士長が、なんか似たようなことが出来たって古書に書いてたような覚えがありますけど」

「あれとは規模が全く違うんだ。聖女様の作った橋は数キロメートルある山と山の間を結び、階段は数百メートルある谷底まで届き、有効時間もかなり長かったらしい。幅も厚みもメートル超えだったはずだよ」

 因みに、二代前の聖女様の発言に「ひゃっほー!剣と魔法の世界だヤッハー!」と叫んだと言う逸話がある。前世持ちの私からすると、二代前も五十歩百歩だと思う。

「えっぐい話だよな。それを一瞬で作って、疲れもしないで平然としてたっていうんだから、えっぐい」

「そこまでの加護を貰っていたとしたら、勇者とか他のメンバーが必要だったのか、ちょっと疑問に残るよねぇ」

 ふふふ、と父は楽しそうに笑っている。

「二代前の聖女様は魔力に全振りで、一代前の聖女様は筋力に全振りで、今代の聖女様は色事に全振り、と」

「色事全振りは討伐に全く意味をなさないなぁ。そんな物を神が加護としてお渡しになるとは思えないけどねぇ」

 兄が茶化すように三代分を纏めて言うと、途端に父の笑顔はブリザードな笑顔になった。さっきまでまるで春の陽気を感じる風情だったのに、今はもう真冬のように寒い。

 兄よ、本当余計なことを言わないで欲しい。


「あー……、あともうひとつの可能性は、流石に動かないと、勇者チームがガチムチ既婚おっさん&お姉様勢に交代される可能性がでてきたからじゃね?」

 自分の迂闊さに気がついた兄は、話を元に戻すことにしたらしい。

「流石にチームの交代話、出てたんだ」

「そりゃ出るでしょ。国としては、聖女様の伴侶は見繕って差し上げたいが、それも魔王討伐をして貰うことが前提なわけじゃん?もう籠絡してるんだったらそいつらから選べば良いんだし、討伐にそいつらを連れて行く必要はどこにもないわけよ。まあ勇者は役割があるから残さないといけないけど、他の奴らはチェンジしてサクサク進めよ、って話が出てたらしくてね。経験値バッチリの壮年男女混合チーム作ろうぜって話になってたらしい」

「同行している騎士団や傭兵団も四十オーバーのおじさん連合にしよう、なんて話もあったらしいよ」

「……ええぇぇ……」

 何でも聖女様が食指を動かす男性は、基本イケメンの細身(細マッチョ含む)タイプ、三十歳手前までだったそうだ。騎士団や傭兵団でコナを掛けられた男性を並べてみるとそうなるらしい。そう言えば、イケメン王太子殿下も細身である。

 二十代半ばのゴリマッチョは、例え顔が整っていても声を掛けていなかったらしく、じゃあガチムチゴリマッチョ系で周り揃えればいいんじゃね?なんて話があがっていたらしい。

「流石にゴリマッチョで固める話は、停滞のせいで暇に飽かせた騎士団や傭兵団の戯言だけどね。ただ、国の方も聖女様が余計なことをしない相手で周囲を固めようと言う話があがってたらしいから」


 それで慌てて『時が来ました!』なんてまるで託宣を貰ったように演じて立ち上がったのだとしたら、呆れるしかないが。

 ……その可能性、低くなさそうなんだよなぁ。

ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

次回も来週木曜日18時と20時目指してアップ予定です。


ーーーー

今代……()

一代前……登山勢

二代前……ヲタク

三代前……委員長タイプ

四代前……剣道娘

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