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12.白星の弟


「この時見の力こそ、俺が時見の一族の者である確かな証拠! 白星も、俺も、玉依も、()が兄弟は皆、時見の力を継いでいル!! それ二……」

 急に元気をなくしたように、語気を弱めた。やっと聞き取れるかどうか、と言うほどに小さい声で言った言葉は、その場にいた全員にダメージを与えた。


「俺はもう、白星や玉依を、兄弟と呼ぶことはできなイ……」


 しんと静まる。咲耶と小松が、何を言っていいか分からないように、顔を少しうつむけた。

「もう一度問おウ。おまえは、何者ダ?」

「偽ったことは、すまない。反省している。でも、その方が一行に入れてもらいやすいと思って。あ、でも、名前は本当だ。みんなのことは、玉依から聞いてきた。その、リィ以外は」

「なるほど、みんなとの会話を聞いていた、と言う訳か。いつから後をつけていたのやら……」

 渚沙が言うと、それを肯定するように、明日葉がうなずく。

「……玉依に、何を聞いタ? その様子だと、白星や俺のことは、詳しくは聞いていなそうだが……」

「そうだ。白星の弟で、玉依の兄だと言うことは聞いたが、リィという名は聞かなかった。おまえの真名は……」

リィの顔が歪むのを見て、渚沙は、とっさに口に出していた。

「リィ!」

自分に視線が集まるのを感じ、慌てて取り繕う渚沙。

「そんなことより、なぜ共に行くきたいのかを知りたい。答えによっては……」


 ――消えてもらう。


 その一言は口に出す寸前で飲み、明日葉を見る。

「俺は、伊賀の国の者だ。国を抜けてきてな。個人的に、武公皇帝に恨みがあって……」

「……よし。リィ、この者は星か?」

「星は5人だからナ。そう考えてもいいいだろウ」

その時、咲耶が笑い声を上げた。

「クククッ」

 瞳は――深紅。

「星を教えてやろう。我、渚沙、小松、明日葉、鳴海。この5つの星が集えば、闇星と化す」

「っ!? じゃあ、リィは、星じゃないのか……?」

小松が言うが、渚沙には、選択肢の1つとしてあったものだ。さほど驚くこともない。

 リィが、跪いて、下を向く。きっと目は開いているのだろう。今のリィは――月弓だ。

「そうだ。しかし、その者は、我の時見だ。共に居てもらわなければならぬ。のう、――つ」

「咲耶ッ!!」

渚沙は、咲耶を見ながら叫ぶ。リィの名を明かすことは、きっと本人が望んでいない。だから、名前だと思われる単語の途中で、無理矢理切った。

 咲耶が、不思議そうに渚沙を見た。それによってできた隙間に、明日葉が、一言言った。

「魔族の、王……」

「ククッ。身の程知らずな忍びの者よ。我の時見を騙るとは、面白い奴。私の身分も知っているようだが、その知識、何処で手に入れた? 我の姿を知るものは、父上と、罪深き女と、武公と、時見だけのはず……」

「玉依さ」

「あやつ……。制裁が必要のようだな……?」

唖然とする小松を置いてけぼりに、渚沙・明日葉と、咲耶で話は進められていく。リィは、相変わらず跪いたまま。

 一瞬できた静寂の間に、乾いた風が吹いていった。



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